霊鋼の針
ふぅ〜……。
一先ずは、ってとこだなぁ。
俺は城の屋根の上で、ゆっくりと中庭を見下ろしていた。
刺客の遺体は、既に運ばれている。
騒ぎも、徐々に収まりつつあった。
……俺が感じた密偵は、二人。
最初に窓を破ろうとしていた奴。
そして、さっきの弩持ち。
これで、しまいだ。
少なくとも、この城内には。
となると。後は、直接って感じか?
ルーク自身が動くか。
それとも、王都へ逃げ帰るか。
どちらにせよ。刺客が二人とも失敗した。
それは事実だ。……次は、正面から来る可能性が高い。
俺は、手元の指差し板を見る。
ヒビが入っている。
さっきの衝撃のせいだ。
何度も叩きつけた。
結界を破り、弩を弾き、喉を打った。
よく持った方だ。
「この板じゃ、目立ちすぎなんだよなぁ」
空中に浮かぶ木の板。
どう見ても異常だし刺客も、気付いた。
次は、対策されるかもしれない。
ならば。
武器が必要だ。
目立たない。軽く。意味を持つもの。
魔女が言っていた。
“概念が宿る物には干渉出来る”。
なら――魔力伝導素材的な?
俺は、意識を移動させる。
魔女の部屋へ。
扉を抜ける。
「……来ると思ったわ」
魔女は振り返らない。
机に向かったまま。
俺は、板を持ち上げ、ヒビを見せる。
魔女がちらりと視線を向ける。
「酷使しすぎね」
俺は、指差す。
『ぶ』
『き』
魔女の口元が、僅かに歪む。
「武器?」
俺は頷く。
「……なるほど」
椅子から立ち上がる。
「確かに、その板じゃ目立つわね」
だろ?
魔女は棚を開ける。
中から、小さな布包みを取り出した。
机の上に置く。
広げる。
中にあったのは――細い、針状の金属。
長さは、十五センチほど。
銀でも鉄でもない、淡く青白い光沢。
表面には、極細の刻印が走っている。
「霊鋼よ」
霊鋼?
「魔法使いの杖の芯にも使われる素材」
軽く言うな。
「魂に反応する金属」
……それは。
「生者より、死者との相性が良い。」
俺向きって事か。
魔女はそれを持ち上げる。
「本来は、魔力の流れを整える為の物だけど。もしかしたら、ポチなら形状の変化もつけられるかも」
こちらへ差し出す。
「触ってみなさい」
俺は、恐る恐る手を伸ばす。
指先が――止まった。
触れた。
しかも、板よりもはっきりと。
「やっぱり」
魔女が頷く。
「霊鋼は魂の揺らぎに共鳴する」
共鳴。
俺は、その針を見つめる。
細い。鋭い。
これなら――目立たないか?
「扱いには気をつけなさい」
俺は、霊鋼の針を握り締めた。
次は――これで守る。




