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死者の記憶を継ぐ者 〜巻き込まれ転生で幽霊になった俺は、王女に未来を託す〜  作者:


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16/41

口を割らせる方法

次の日の朝。

俺が城の廊下をふらふらと漂っていると、

何処からともなく、魔女が帰って来た。


窓からだ。相変わらず、普通に空を飛んで。


「ふぁ〜あ……」


大きな欠伸。目の下に、うっすらと隈。


「やっぱ徹夜はするもんじゃ無いわね」


幽霊にそれ言うか。

俺は指差し板を持ち上げる。


『ど』


『う』


『だ』


魔女は肩を回しながら答える。


「ポチ。如何やら密偵はあの一人だけみたいだから安心して」


そうか。あいつだけなのか。


俺は、小さく息を吐く。

……いや、吐けないけど。


「まあ」


魔女は椅子に腰掛ける。


「小娘相手に、一人で十分と思ったようね」


その言い方。だが、否定は出来ない。

十五の少女。


辺境の臨時責任者。


王都から見れば、排除も容易だと思ったのだろう。


『い』


『き』


『て』


『る』


魔女は頷く。


「ええ。生きてるわ」


机の上の薬瓶を手に取る。


「今は、地下よ」


地下。尋問、か。


「流石に、私一人じゃ無理だから」


魔女が立ち上がる。


「エリシア様にも立ち会ってもらうわ」


俺は板を指す。


『だ』


『い』


『じ』


『ょ』


『う』


『ぶ』


『か』


魔女は、少しだけ考えた。


「……見せるべきよ」


きっぱりと。


「現実を」


数分後に地下の一室。

石造りの壁の湿った空気。

椅子に縛られた男。


昨夜の密偵だ。


意識は戻っているらしい。口は固く結ばれている。


エリシアが、静かに部屋へ入る。


表情は硬い。


「これが……」


「ええ」


魔女が頷く。


「あなたを殺そうとした者よ」


空気が、凍る。

密偵の視線が、エリシアを射抜く。


敵意。隠そうともしない。


「名は?」


エリシアの声。

震えていない。

だが、密偵は何も答えない。


沈黙。


魔女が、溜息をつく。


「素直に話す気は無さそうね」


俺は、男の前に立つ。


じっと、見る。


……引かれる感覚は、無い。

まだ、生きているからか。


魔女が続ける。


「命令したのは、誰?」


沈黙。


「ルーク・ヴァレンシュタイン?」


その名に――僅かに、反応。

目が、揺れた。


エリシアは、それを見逃さない。


「やはり……」


密偵が、歯を食いしばる。


「……くっ」


魔女が、口元を歪める。


「ほら」


小さく囁く。


「口は、正直よ」


密偵の額に、汗が滲む。

俺は、指差し板を握る。


『つ』


『ぎ』


エリシアは、男を見つめたまま。

静かに言った。


「話しなさい」


その声は――命令だった。

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