表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

第二章 共鳴する銀河

「こんばんは。今夜も、手の届かない場所にある『不思議』について話をしましょう」

深夜。

カイは別の顔を持つ。

防音材が貼られた狭い部屋でマイクを前に座り、世界中に向けて声を放つ「伝達者」だ。

最初は、砂漠で独り言を呟くような孤独な試みだった。

専門知識を持たない「素人」としての出発。

だが、彼には武器があった。

難解な特異点を「誰にも言えない秘密を隠す場所」に例え、宇宙開発の現状を「暗闇の中で手を伸ばす子供」と呼ぶ。

その比喩は、専門知の象牙の塔に閉じ込められていた光を、大衆という広場へと連れ出した。

配信を始めて一年。

カイの周囲の景色は、劇的に色を変え始めた。

深夜の独り言だったはずのポッドキャストが、巨大な磁石のように、本来なら交わるはずのない人々を引き寄せたのだ。

ある時、地方の小さな町から一通の連絡があった。

過疎化に悩むその町は、カイの放送をきっかけに、町の廃校を「星空保護区」の拠点として再生させるプロジェクトを立ち上げたという。

カイは、ただのマイクの前の男から、地域とビジネス、そして大学の研究室を繋ぐ「星座の結び目」へと変貌していった。

かつて「36」と笑われた男の言葉が、今や数億円規模の予算を動かし、人々の故郷を守るための論理となっていた。

カイのデスクには、二通の対照的なメッセージが届いている。

一通は、汚れた封筒に入った小学生からの手紙だ。

『カイさん、ぼくは学校のテストが苦手だけど、カイさんの話を聞くと、数字が星を数えるための魔法に見えます』

もう一通は、シリコンバレーの宇宙ベンチャーを率いる経営者からのメール。

『君が提唱した「宇宙天気」の解析手法は、我が社の衛星コンステレーションの防衛に不可欠だ。至急、アドバイザーとして契約したい』

小学生の純粋な憧憬と、ビジネスの最前線にある冷徹な計算。

その両極端な視点が、カイという媒介を通して混ざり合い、未知の角度から未来を照らし出していく。

彼は気づき始めていた。

専門家たちが忘れかけていた「驚き」と、素人たちが抱く「畏怖」の間にこそ、真実の宇宙が横たわっていることに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ