表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

夜デート

本日5話目です

明日からは通常の毎日更新です。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

「ねえねえ遥くん、これおススメだからさ」

「ほんとおススメ、絶対一回観てみようよ」

「だから、あっち行けって言ってるだろ? おめえらのおススメなんか観るわけねえし」


 せっかく伊東藤本とクラスが離れたっつーのに、麻生武藤の団子頭とくせ毛ヘアのコンビの猛攻にあってるっつーかわいそうな俺。

 こいつら理系の成績で迷惑かけてこねえけど、趣味がオカルトとホラーっつー俺の嫌いなジャンルで、しかもおススメしてくる。

 これはこれで、迷惑極まりねえコンビだよ。

 彼方が聞き付けたら絶対やな事なるから、おめえら頼むからあっち行っててくれって。

 ったく、他のジャンルの映画なら、こいつらのおすすめもけっこう趣味がいいんだけど………ホラーはやだ。


「むむむ? 麻生武藤、そのおススメ、かなタソに教えるよろし?」

「彼方ちゃん観てくれる? 呪餐 悪魔の宴。ホラーとサスペンスだよ」

「遥くんにも観させてよ! 呪餐 悪魔の宴。スリルとミステリーだね」

「うひょ。何やらよろしタイトルではなすか。はるタソ、いっしょ観るなりっ」


「だから、俺はその手のやつはやだっつってるだろ? 観ねえって」

「あ、それけっこうオモロいって評判の映画やんけ」

「彼方が観るなら、おれもいっしょにその映画は観たいな」

「そいでは4名様、かなタソ映画鑑賞会にご案内なり〜」

「待て彼方、4名様ってなんだ! なんで俺と弥勒が入ってんだよ!」


 俺が必死で抵抗してるにも関わらず、弥勒のバカが助けてくれる事はなく、むしろちょっと乗り気で映画鑑賞会する事にしやがる。

 開催日時は土曜の夜、場所が俺んちでメシ食ったあとじゃ、どうあっても逃げらんねえっつー状態だ。

 くそ、麻生武藤を恨んでやる。




「たまには彼方に付き合ったれって、遥。な?」

「むー弥勒のバカ。おめえは敵だ。俺をホラーで攻撃するようなヤツとはケンカだっ」

「そう言うなって。こんな理由でもないと、彼方と慶太は夜遊べへんやろ?」

「むー…そうだけど。むー」


「たまには夜もいっしょ遊びたいっちゅうのは分かるやろ? 彼方と慶太と遥の3人がよかったけ?」

「……4人がいい。でも、むー…しょーがねえ、付き合ってやる。むー」


 むーだけど、しょーがねえから付き合ってやんよ。

 彼方だってたまには滝と、夜いっしょ遊びてえっつーのは理解するしな。むー…


「ケンカはナシでやで? な?」

「うん。むーだけど今回はオマケしといてやる」


 彼方と滝だけで、弥勒がいねえのはもっとやだから、今回はケンカしねえでいる。

 彼方は弥勒がいねえでも、ホラー観るヤツだしな。




 土曜の夕方、弥勒が家くるまでは俺も彼方といっしょ出かけて、時間になったら帰ってくる。

 いつものパターンだ。


「かなタソ帰ったなり、ただいま3なり〜」

「俺も帰った、たっだいまー」

「おかえり、彼方、遥。お喋り会はどうだった?」

「花水木の絵が美しきだったなり」

「たんぽぽと水仙の写真も見せてくれたぞ。きれいだったな」


「また母さまも遊びくるよろし言ってたなり」

「バザーするから手伝って欲しいってさ」

「あらそう? だったら今度は母さんも行こうかしら?」

「俺ちょっと掃除機だけかけとくから、部屋に掃除機持ってくぞ」


 弥勒がくるまでにざっと部屋ん中を掃除機だけかけとく。

 特別片付けるわけじゃねえけど、これは気分の問題っつーやつだな。


 窓を開けて空気の入れ替えもしとくついでに、琢磨んちの方を眺めて見るけど、むー…やっぱ琢磨の部屋がどこか分かんねえな。

 向こうから見ると分かりやすいって言ってたけど、こっちからだと分かりにくいらしいし、琢磨が俺の部屋見えるっつってから、もう何年もたつのにまだ見つけらんねえ。


 ピンポーン───


 見つからねえ琢磨んち諦めて、掃除機しまってると玄関のチャイムが鳴ったから、急いで玄関に向かう、弥勒と滝が並んで待ってた。


「タキいらっしゃいましっ。かなタソお部屋へどぞどぞなりっ」

「弥勒もいらっしゃいだ。お茶持ってくから、先に俺の部屋行ってて」


 弥勒を先に俺の部屋へ行かせて、俺は冷蔵庫のお茶をコップに入れて持って2階に上がる。

 ちょっとだけ弥勒をおもてなしだ。


「お待たせー。晩メシまでちょっとあるけど、何する?」

「せやな。もしよかったらやけど、こないだ言うてたFPSがやってみたいで」

「FPSか、いいぞ。PCゲーだし、ハマるとけっこう楽しいからな」


 机の上のデケえPC起動して、ファンの回る音とともにお馴染みの液晶画面が点灯するなり、弥勒がビックリしたように言う。


「思てたより早いな。ついでにラップトップはやっぱ音がきれいや」

「スピーカー外付けだしな。早さは父さんの趣味だ」

「ふ。伊東藤本のためのフォルダがあるやんけ」

「む。作った問題捨てるの悔しいから、取ってあるんだよ」


 手早くゲームを立ち上げて、弥勒に基本的な操作を教えてく。

 ゲームパッド使っての操作だし、慣れればすぐに弥勒も楽しめるだろ。



 ピコン─── K.anata『うひょ。初心者狩りしたす〜』


「K.anataてもしかしてこれ、彼方け?」

「その通りだ。あのヤロ、意地悪するつもりだな。無視だ無視」

「ええ? 返事はキーボードけ? ちょっと返したい」


 HAL.Ca『初心者狩りはお断りやで。協力プレイやったらしたろ』

 K.anata『むー少々揉んでやりたすだったなりが、仕方なすの〜』


「あ、向こうから招待きたじゃん。チーム戦だし試しにいっしょやってみるか?」

「おう。せっかくやし、一戦やってみるわ」


 俺のアカウントは武器全種解放してあるから、弥勒に説明しながら好きな物選んでもらってみると、ふむ。サブマシンガンか。


「弥勒、その中だったら、これが初心者向けだな」

「これやな? オレ最前線やりたいし、あるなら近接武器も1個欲しいで」

「だったらこれとかどうだ? これはコンバットナイフだ。けっこう扱いやすいはずだぞ」


 弥勒のメイン武器サブ武器、近接武器消耗品を選んで、彼方&滝と組んでいざ戦闘開始だ。

 さぁ、向こうはどんな構成でくるかな?

 滝と彼方の操作するキャラがいる部屋へ入ると……

 あのヤロ火縄銃とか持ってやがる!っつー事は碌でもねえ事やるつもりだな?


「ちょっと待て! 弥勒、こりゃ罠だ!」

「は? 罠? なんの罠? どっかの強敵に当たったんけ?」

「違えよ。よく見ろ、味方の持ってる武器を! あいつら火縄銃選びやがった!」

「ちょ、なんで火縄銃? なんか聞くだけで弱そうやんけ!」


 俺は慌ててヘッドセットを設定し直して、弥勒に聞こえる設定で味方…彼方と滝に通信を始める。



 ピコン───『うひょひょ〜殺陣カーニバルするなりね〜』

『彼方てめえ、弥勒を勝たせねえつもりだな?』

『ええー? 人聞き悪いな、遥。これでも十分勝算がある装備だけど?』

『ちょ、分からん分からん。おまえらの会話が分からんて』

『大丈夫だよ、弥勒。勝算ある装備ではあるから、ただちょっとピーキーだけどね。さ、チーム勝利目指すよ』



 騒いでる間にマッチングが終わって、攻略開始されてしまった。

 しょーがねえから、出来るだけのアドバイスするしかねえな。


「弥勒、とにかくこの場からの離脱が最優先だ。出来るだけ彼方たちから離れるぞ!」

「お? おう。どっち向かえばええ?」

「ここからだと11時の方角だ。デケえ貯水タンクがそっちにあるから、走って向かうぞ」

「了解や。11時方向、目的地、貯水タンクやな?」


 弥勒にまずは目的地を教えて、そこへ移動を開始してもらいながら、この戦闘を勝ち残るために気を付ける事を教えていく。


「弥勒そのまま移動しながら聞いてくれよ。今回のルールはチームの生き残り戦だ」

「おう。つまり、全滅した方が負けっちゅう事やな?」


「そういう事。んで、あいつらの選んだ武器っつーのが、火縄銃なんだが、ありゃ見てくれだけでな」

「火縄銃やし、やっぱ名前の通り、前時代的に弱いんけ?」


「逆だ。敵味方関係なくぶっ殺すジェノサイド武器なんだよあれは。使い方次第だけど強えのは確かだ」

「はぁ? つまり今は巻き込まれる地点からの脱出中っちゅうわけか?」


「そういう事だ。このフィールドだと、目的地の貯水タンクぐれえデケえ物の影じゃねえとダメだ」

「め、迷惑な武器選びくさってからに…ええやろ。頑張って生き残ったろやんけ」


『はるタソ〜まだなりか〜? そろそろ発射したす〜』

『こら、彼方。おまえらオレ初心者やのに無茶苦茶やで。あとで覚えとけよ?』

『よし、そこの建物の壁の下の方にあるトタン板引っぺがして隠れるぞ』

『了解や、ここ隠れたら…』

『むむ? おとと、手が滑ったなり〜』

『彼方てめ! 弥勒バカ、通信で彼方に動きがバレ…っ』


 ちゅどーーーんっ!


 まだこっちが隠れ終わってねえっつーのに、あのヤロ、ぶっ放しやがったな!

 うわわわ。 爆風で紙クズみてえに吹っ飛んだぞ。


「あかんあかん! この赤いのライフゲージやろ!? 死ぬ死ぬ死ぬっ!!」

「まだ間に合う。トタン板がいっしょだし、それ捕まえて被ればなんとか!」


 ちゅどちゅどーーーんっ‼︎


「あのヤロー連発しやがった! それてめえも自爆じゃんっ! チキショー!!」

「ええ? 敵味方区別なくて、そういう意味?」


 俺と弥勒のキャラがくたばった後、すぐ画面中央にLOSEの文字が出て、今回の負けが確定した。

 やっぱ勝たせる気ゼロじゃん!



『むひょー。残念無念、敗者なってしまったなり〜』

『敗因は迂闊な通信入れた弥勒のせいだねー』

『おまえらムカつくっ! ちょも一回や! も一回すんで‼︎』

 そこからしばらく、俺と弥勒が奮闘するも、悉くやつらに邪魔されて、結局メシの時間まで、俺らのチームは1勝も出来なかった。




「ゲーム楽しかったねー彼方っ」

「うむり。面白すだったなりのータキっ」

「おまえらのせいでオレら全然勝てへんかったやんけ」

「そうだそうだ。なんで味方を全滅させる作戦立てるんだよっ」


「ふふふ。4人でずいぶんと楽しい事してたのね」

「いいなー、もうちょっと早く帰れれば父さんも入ったのに」

「ジジイが入ったら余計負けるじゃん。いつもすげえ下手くそなのに」

「靴下臭すも犠牲者なりたすだったなりか? かなタソにヘッドショットされたす?」


「滝くん弥勒くん! うちの子たちが酷いよっ! なんとか言ってくれないか?」

「彼方、ちゃんとお父さんって呼んであげようよ。ね?」

「遥も、おとんにもうちょい優しいしたれや」


 6人でメシ食うのは何回かしてるけど、父さんは相変わらず、何かっつーとヘナチョコに懐いてきて、ほんとみっともねえよ。

 母さんは母さんで、隙みちゃ滝と弥勒にビール勧めるしさ…

 いや、2人とも今日は歩きだけど、大人としてそれはどうなんだよ?


「滝くんも弥勒くんも、せっかくだからビール飲みましょ」

「だから高校生にビール勧めんじゃねえっての! ババアっ!」

「わぁ、お母さんいいんですか? ありがとうございます」

「いつもありがとうな、遥のおかん。いただきます」

「むひょ。かなタソもおビールいただくなり〜」


「いやあ、家族が増えたみたいで、ほんと楽しいねー。そうだ、みんなで写真撮ろうか」

「もーまた写真かよー。ビール飲んでる証拠写真とか、ほんとに撮る気か? むー」

「はるタソ、お写真はいつもの事なりよ、気にするなす」



 母さんの作ったメシを6人でいっぱい食ったら、キッチリ後片付けをやってから、リビングで集まっての映画鑑賞会開催だ…


「む。何故(なにゆえ)ここに靴下臭すがおるなりか?」

「こらこら、彼方。お父さんだけ仲間ハズレはよくないって。ね?」

「そうだそうだ。彼方これはみんなで観るもんだろ? 父さんもいっしょ観せるんだっ」


「遥のおかんはこういうの全然平気なん? 意外と強いな」

「うふふ。我が家で苦手なのは、うちの人と遥の方なのよ。女って強いものよ」

「遥、頑張るんだぞ。父さんも頑張って観るからな?」


 始まった映画はもう、初っ端から映像が怖え…音楽もヤベえ…うー我慢だ俺…ここで一人だけ逃げるっつーわけには…うー…


 パチン───


「わぁっ! な、何すんだ⁈ 誰だ電気消したのはっ⁈」

「やあねえ、驚きすぎよ、遥。母さんこっちの方がいいんだもの」


 母さんのバカ…急に電気消したら、誰だってビックリするに決まってるっつーのに!

 むー余計怖え…何か出そうな雰囲気が余計…

 み、弥勒どこだ…? 横いるな? ちゃんと横いろよ? 絶対どっか行くなよ?

 うー怖え… だ、大丈夫、画面から出てこねえし。


 ぎゅぎゃぎゅぎゃぎゅいぃいいぃーーーっ!


「ぎゃあぁああっ! び、ビックリした…ビックリし、した……」

「遥、大丈夫け? まだ前半やで?」


 も、もう、何かあるたび怖え…登場人物が笑うのすら怖え…

 こっち見んなもー怖えから、この女優の顔怖え…もゃだ…怖え…う〜…


「わっ!」

「「わぁああああーーっ‼︎」」

「か、彼方てめ…っ、急にデケえ声出すんじゃねえっ! バカやろ!」

「ビックリしたー、ビックリしたよー。か、彼方は父さんの心臓壊す気かい?」

「くすくすくすくす。あなたってばもう、驚き過ぎなのよ。彼方のやりそうな事じゃない」


「大丈夫け? 遥もしっかりせえよ?」

「う〜…弥勒。もゃだ…俺ゃだ〜…う〜…」


「うひょ。タキ、かなタソ大成功だったなり〜」

「すごいね彼方。今のはタイミングバッチリだったよ」


 半泣きの俺と父さんをおちょくりながら、彼方はホラー映画を観て楽しんでやがる…

 くそぅ…彼方のデートのために頑張ってるのに。


 と、こっそり弥勒が、俺が余りにも怖がるせいか、手を繋いでくれた。

 …よかった、弥勒の手で、ちょっと怖えのマシんなった。

 えへ…弥勒と手ぇ繋ぐの、嬉しいぞ。

 なんか、ちょっと勇気が湧いてきそう…な、気が、する…だけかも…う〜やっぱ怖え…う〜

 ラストシーンで主人公が呪い殺されて、むしろちょっと安心したぞ、俺。

 …これでもう誰も死ぬことねえ…よかった…やっと終わる…


 そして呪餐は、あなたのもとへ ─── 届く…



「ちょちょっと待て。最後なんだ? 最後すげえ怖えっ! ダメだ俺、今日絶対寝れねえこれっ!」

「大丈夫や。おまえの部屋に何も来たりせんから、どうもないって」

「うひょー。よろし最後だったなりのータキ」

「ホラー映画と言えば、このあと味の悪さが醍醐味だよね」


「かかか母さん、窓の鍵はかかってるかな? なななんだか急に心配に…」

「あら、心配なら、ちょっと見に行ってきてくださいな、あなた」


 へっぴり腰で窓の鍵の確認させられてる父さんと、涙目の俺に、楽しげな彼方と母さんと滝と、平気な顔の弥勒…くそぅ…う〜

 ほんと酷え目に遭った…ホラー映画とか大嫌いだよ…むーっ。

 もう当分、滝と彼方の夜デートの協力なんかやってやんねえからなっ。

もしよければブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者が泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ