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この恋のために2  作者: ひなた真水


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ひな祭り

本日3話目です

 春の足音が聞こえてきそうなうららかな今日は、3月3日桃の節句に向けて、お雛さまを飾る日だ。


 我が家では毎年、直前の日曜日にはお雛さまを飾って、俺と彼方が着物着て、ちらし寿司食う日と決まってる。

 成長期が終わるまで、新しいのあつらえるのは待とうって事で、俺の着物は父さんの、彼方の着物は母さんのお古だ。


「むひょー。今年もお雛さま、かわゆすの〜」

「端午の節句と違って、当日が祝日じゃねえのが残念だよな」


 ピンポーン───…


 俺と彼方の着物姿が見てえっつー事で、弥勒と滝がやってきた。


「いらっしゃいましタキ! かなタソお着物いかがなり?」

「かわいいっ! すっごくかわいいよ! お雛さまより彼方の方がずっとかわいいよ!!」

「うひょー。嬉しすの〜」


 正月はばあさんちに行くのが恒例だったから、滝が彼方の振り袖を見るのは初めてで、その分有頂天っつーぐれえ褒めまくりだ。


「弥勒、俺の着物姿どだ?」

「めっちゃ似合ってる。これも自分で着付けしたんけ?」


「うん。女の着物と違って、男物は浴衣と帯の結び方がいっしょだからな」

「ええ色の着物やな。めちゃくちゃカッコええ…着物やし男前やな?」

「ふふ。そだぞ〜、着物はやっぱ、ハンサムじゃねえだろ?」


 居間に飾ってある7段の雛飾りは、彼方激甘な父さんが買った…物ではなくて、今は亡き母方のじいさんが、買ってくれた物らしい。


 端午の節句の飾りは父方のじいさんばあさんに譲るから、桃の節句はこっちから贈りてえっつー事だったそうだ。


 男雛女雛、三人官女、五人囃子、右大臣左大臣、三人上戸、雛道具、最後が御所車と重箱と御駕篭を並べる、計7段だ。


 彼方はこの雛飾りがすげえお気に入りで、毎年飾ると1日中お雛さまの横で遊ぶのが恒例になってる。


「すごいな〜… めっちゃ細かい細工やなっ! なにこれ! ちゃんと写る鏡や!!」

「そであろ? このように小さきでも本物のよに出来てる素晴らお道具であろ?」

「おれ、お店以外で7段の雛飾りなんて、初めて見たかもしれない」

「こういうの見ると、やっぱ桃の節句は端午の節句より華やかだよなって思うぞ」


「遥、マジヤバいな。職人頑張りすぎやろっちゅうぐらい、めっちゃすごい細工やで」

「じいさんの知り合いに雛飾り作ってる人がいたらしいんだ。だからうちのはちょっとすげえだろ」


 外国育ちの弥勒にとっても、雛飾りは珍しいらしくて、箪笥の引き出し開けたり閉めたり、御所車の御簾をめくったりして、目を輝かせて喜んでる。




「さぁさ、みなさん。貝覆(かいおおい)して遊ぶするなりよ〜」

「わ。もしかしてこれ、貝桶? 実物見るのは初めてだよ」


「遥、貝覆てなんや?」

「はまぐりって2枚貝だろ? 2枚貝ってピッタリくっつくのはひと組だけなんだ」


「片方と片方の相方探しが貝覆なり。いっぱいピタリした者が勝者なりね」

「これ、おもちゃなんや…? 漆塗りに金の絵付けって、えらいゴージャスなおもちゃやな〜…」

「着物の柄になってるのは見たことあるけど、中身はこうなってるんだ〜」


 貝桶に入ってる絵付けのはまぐりの貝殻で、ピッタリくっつく1組を探す遊び、貝覆をやるのも我が家の恒例。

 貝殻の内側には源氏絵巻の一場面が描かれていて、貝殻と貝殻を合わせるのがなかなかに面白え。


 遊びに慣れてる分、俺と彼方はかなり有利。


「うわー… どれとどれがくっつくとか、貝殻伏せてたら全然分からんわ」

「内側の絵が見られれば、まだ覚える事も出来そうだけどねー」

「絵柄が見えねえとことかが、神経衰弱に似てるだろ?」


「うひょひょ。かなタソこれとこれでピタリなり〜」

「俺はこっちとこっちでピッタリだ!」

「これとこれでどや? あかん、全然くっつかへんわ。ムズっ」

「ピッタリくっつくのは1つだけって事から、夫婦円満の縁起物だって聞いてたけど、難しい〜っ」


「滝くんに弥勒くんも、こっち向いて〜。記念写真撮るよ〜」


 4人で遊んでると、父さんがカメラ持ってきて、いつものように記念撮影しだすけど、今日は節句だし大目に見てやる優しい俺。

 今年は俺、正月はパタゴニアだったから、初着物だし、そこは許してやろう。


「タキ、この貝殻、美しき絵付けであろ?」

「ほんとにきれいな絵だねー。これ、源氏絵巻の一場面でしょ?」


「うむり。母さまのばあさまから受け継いだ、由緒正しき貝桶なりよ」

「マジか。これ祖母母彼方の3代に受け継いだヤツなんけ?」


「うん。今じゃ廃れてるらしいけど、昔は嫁入り道具にするのが一般的だったみてえなんだ」

「へえ〜、オレがジジイからもらった物っちゅうと、靴ぐらいやわ」


「それもなかなか羨ましいぞ? 弥勒のじいさんって、靴職人だったよな?」

「おう。フランスのジジイは靴職人やし、靴はもらうけど、こんなすごい物はもらった事ないわ」


「母さんの方は女が母さん以外いなかったから、必然的に母さんが譲ってもらったんだって」

「代々夫婦円満の嫁入り道具を受け継ぐなんて、素敵だよね。彼方、結婚する時は絶対持ってきてね?」


「うむり。嫁入り道具、これなすかなタソ、嫌なりからの」




「みんな、甘酒がいい感じに出来てるわよ? いっしょに飲みましょ」


 母さんがすすめるのも、いつもみてえにビールじゃなくて甘酒だし、今日はなんか平和だなー。


「うわー、ありがとうございます。お母さん、甘酒作ったんですか?」

「母さま、かなタソも甘酒いただくなりっ」


「甘酒て家で作れる酒なんけ? 法律で大丈夫なんけ?」

「酒っつーけど、甘酒にアルコールは入ってねえから、家で作っても大丈夫なんだ」

「ウチのは米麹で作ったヤツだから、ほんのり甘くて美味しいよ?」


 ウチの甘酒は砂糖使ってねえから、甘いのが得意じゃねえ俺でも、するする飲めるから、俺にとっても嬉しい飲み物なんだ。


「ん! うまい。なんか優しい味すんな、これ」

「だろ? 甘酒は栄養もいっぱいだとかで、飲む点滴とか言われる事もあるんだぞ」

「お母さん、これとっても美味しいです!」

「出来たて甘酒、ほかほかあったか美味すであるのー」 


「千鶴子さんの甘酒は、ほんと最高だね。僕は毎年これが楽しみなんだ」

「うふふ。時間は少しかかるけど、作り方はとっても簡単なのよ?」


 晩メシがいつもより豪華なのも、節句だと思うとまあまあ許せる。

 まあまあであって、やっぱちょっと豪華すぎだって思うけど、弥勒も節句の食い物には興味津々みてえだし、今日は許してやろう。


「きれいやな〜。おかんのメシはいつもきれいやけど、今日のはごっつ華やかやわ」

「ちらし寿司だから、目にも楽しいでしょ?」

「いつもありがとうございます、お母さん。これすごく美味しいっ」


「かなタソお刺身食うなり〜」

「父さん、カメラ置いてそろそろ食わねえと、なくなるぞ?」

「いや〜、今年のひな祭りは賑やかで楽しいね〜」


 ちらし寿司や天ぷら、お刺身、はまぐりのお吸い物、茶碗蒸し、和風サラダ、煮物、和え物…やっぱいつもより品数が多い。

 そんで、当然のようにビールをすすめてやがるし…だから、ビール飲んでるとこを写真に残すんじゃねえって、ジジイっ!


「よろしではなすか、はるタソよ。靴下臭すのお写真はいつもの事なり」

「アルバムに犯行現場の写真が載るのはやだよ」


「大丈夫や。それもいつかはええ思い出になるって」

「高校生は家でビールくらい飲んでるものなんだから、気にしなくていいって」


「大学生になって、外で飲むようになった時に、飲み方知らない方が恥ずかしいと僕は思うよ?」

「むー。飲むのはいいとしても、写真はやだ」


「遥の着物姿の写真は今年すごく少ないから、いっぱい撮らないとだしねぇ」

「その代わりパタゴニアで撮った写真がいっぱいあるだろっ」


「遥が撮った写真だから、遥の写ってるのは少ないじゃないか」

「あー、ほなオレが撮った写真も分けよか?」

「それはぜひお願いしたいよ、弥勒くん。頼めるかい?」


 相変わらず、子どもに懐きすぎな父さん母さんをあしらうのは大変だけど、弥勒と父さん母さんが仲いいのは嬉しい。

 弥勒が男だからって反対するような、頭の固え親でなくて良かった。




 メシ食ったら恒例の片付けだけど、俺と彼方は着物だから、洗い物は弥勒と滝に任せて、食器運んだりお膳拭いて俺も手伝う。

 彼方もちょっとは手伝って、ちょろちょろしながらお手伝いする。


「後片付けが楽なのが、母さんにとっては1番の贅沢だわ〜」

「ご馳走になったんだから、これくらい当然ですよ」

「主婦の知恵はオレらにとって色々勉強になる事もいっぱいやしな」

「彼方、寿司桶は俺が片付けるから、こっちのコップ片付けてくんね?」

「了解ね。今日もご馳走いっぱいだったなりから、洗い物どっさりね」


 みんなでしっかり台所をきれいにしたら、弥勒を見送りに玄関までいく。




「今日は色々珍しい物も見られたし、遥の着物姿も見れて楽しかったで」

「そっか。女の子の節句だけど、弥勒呼べて良かったぞ」


 弥勒の『ごちそうさま』に『気を付けてな』って返して、手を振って見送る時は、やっぱちょっと寂しい。

 でも、この家にいる間しか、ひな祭りは出来ねえから、弥勒と祝えて良かった。


 春はもうすぐだな〜。

もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

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