弥勒シック
「こう? こんな感じか? コンコン」
年も明けてウィルジニーと明彦と、俺と弥勒の4人の新年のお祝いも終わったから、今日から本格的に化石掘りだ。
ただ今俺は、弥勒の父さんの明彦と、母さんのウィルジニーに教えてもらって、化石の発掘調査のお手伝い中。
ふむふむ。石をコンコン叩いて割って、中から化石が出てこねえか探すらしいな。
「ええで、なかなかええ手つきや。ほら、ここ見てみ? なんかあるやろ?」
「む? これが化石なのか? よく分かんねえけど………」
「たぶんシダ植物の化石の一部やろな。一発目で当たるとはラッキーやで」
「えへ。ラッキーなのか俺。頑張って探すぞ〜」
「遥、あんま気張りすぎると、化石沼に浸けられるから、適当しといた方がええで?」
「でも、コンコン叩いてなんか出たら嬉しいじゃん。なんか出ねえかなー?」
コンコン叩いて、パカって割れたら中身の確認。
コンコン叩いて、パカって割れたら中身の確認。
コンコン叩いて、パカって割れたら中身の確認。
むー、中身ってあんま入ってねえんだなー、コンコン。
パカ───…
「む? なんかエラくきれいに割れたな。ツルツルになってる」
「どや、割れたら確認したるから、教えてくれよ?」
「あ、明彦。化石じゃねえだろうけど、つるっと割れたぞ。気持ちいいな、これ」
「おい、これ卵や! ジニ、遥が卵当てたで!!」
「マジ?! ちょ、見せて明彦!」
「ウソやろ? 遥、マジで卵当てたんけ?」
「分かんねえ。つるっと割れたけど、卵なのかそれ?」
「うお、マジで卵や、遥。すごいなー、めっちゃラッキーやで、おまえ」
「弥勒、卵っつーのは、やっぱ植物より貴重なのか?」
「そら当然そやで。元々の存在割合が低いし、滅多に見られんもんなんや」
せっかく出た珍しい化石だし、壊しちゃなんねえっつー事で、素人の俺はどいて、明彦とウィルジニーに続きはやってもらう。
俺と弥勒は、ついでだからちょっと休憩だ。
「すごいなー、まさか発掘開始からたった3日で、卵見つけるとは」
「弥勒も卵当てた事あるか?」
「爪とか牙はあるけど、卵はないで。こらますます、おとんとおかんが手ぇつけられんようになりそうや」
「そうか? 爪とか牙の方が色々分かる事多そうだけどな」
「爪とか牙は、一体にいくつもある部位やし、数が多いからな。あんま珍しい物やないねん」
「そうなんだ。俺なら恐竜の牙は嬉しいだろうけどな。○○サウルスの牙ゲットーって」
そんな話をしながら休憩してたけど、明彦とウィルジニーはメシの時間になっても戻って来ねえし、なんか腹減ってきたな〜。
「弥勒、明彦たちなんて?」
「どうやら大掛かりな発掘になりそうやし、スタッフに送ってもらって先帰れやって」
「む。俺のせいで仕事増やしてしまったみてえだな?」
「喜んどるから気にせんでええって。腹減ったし、オレらは引き上げるで」
現地のスタッフさんに家まで送ってもらって、帰ったらさっそくメシ作りをしようか。
弥勒と今日作るのは、ウィルジニーが教えてくれた、ミラネサっつーアルゼンチンの料理で、とんかつに似たやつだ。
現地の料理の方が、材料が手に入れやすいっつー利点がある。
ふふふ。揚げの係が俺っつーとこに成長を感じるな。
「うまっ! ミラネサうめえっ! 肉たっぷりだなっ」
「冷めても味がしっかりしてるから、サンドイッチに出来るんがちょうどええ」
「だな。明彦とウィルジニーが帰ってきたら、もう一回揚げて、明日のお昼にはミラネササンドイッチだ」
って言ってたのに、明彦とウィルジニーは仕事に夢中で、帰らねえらしい。
なるほど、これが噂の突然仕事で外泊することになるっつーやつだな?
むむむ。このいっぱいの肉はどうしよう?
まだ揚げてねえけど、もう下味が付いてるし、これミラネサ以外になんか出来るか?
「チーズとトマトがあるし、明日はミラネサにトマトソースとチーズかけて、味変しとこか」
「さすが弥勒だ。こういう時は頼りになるなー」
「大したことないって、トマトとチーズいうたら、味変の定番やし」
「でも俺は思いつかなかったし、すごいぞ」
「そんな事より、片付けも済んだからこっち来いや。恋人座りしよ」
「恋人座りか、いいな。やろうやろう」
俺は弥勒の前、足の間に座って、ゆっくりくつろぐ。
やっぱこの体勢はすげえ落ち着く。俺も弥勒も、気に入りの体勢だ。
「2人になるんは久しぶりやなー」
「ええー? 昨日の夜も2人きりだっただろ?」
「昨日の夜は、おとんとおかんが隣の部屋におったやんけ」
「む。たしかに、そういう完全な2人きりっつーのは、日本以来だな」
「やろ? やっぱ2人きりでこの体勢は、ドキドキするな」
「うん。恋人座りはすげえ落ち着くけど、ドキドキもいっぱいだ」
「遥、ちゅってするんも、ええけ?」
「む。ちゅっとするのか。ちゅってするのはいいけど、ご無体はダメだぞ?」
「ご無体はせえへんから。ちゅってさせてくれ」
ちゅ
「早い。もっとゆっくりちゅってしたいで」
「むー。あんまゆっくりだと、ドキドキしすぎそうだぞ?」
「ドキドキもさせたいし、ゆっくりや。もう一回な?」
ちゅ……
「う〜、これ以上はドキドキしすぎて、ダメ」
「もっといっぱいドキドキがええのに、あかんけ?」
弥勒の低くてカッコいい声でそんな事言われたら、それだけでドキドキクラクラだ。
う〜、どうしよう? キスしてえけど…これ以上したら、ドキドキしすぎて、ダメになりそうだよ。
でも、も1回………
ちゅ………
弥勒のちょっと固い唇が俺に触れると、ドキドキクラクラして、もっといっぱい触れたくなる。
でも、ここは弥勒の父さんの明彦と母さんのウィルジニーの家だし、これ以上したらダメ。
でも、ちゅってしてえ。もっといっぱい、ちゅってしてえ。
「好きやで、遥。愛してる………」
「俺も好きだ、弥勒。ちょびっとじゃねえぞ、すげえ好きだぞ」
「早よ日本帰って、2人きりの旅行したいわ」
「だな。俺も楽しみだぞ。宿の予約もバッチリだし、早く行きてえ」
「春休みやし、人も多ないやろし、ほんま楽しみや」
「俺、白いから目立たねえけど、ヒゲもすね毛も生えてるぞ? かまわねえか?」
「全然かまへん。遥にはおっぱいついてたら嫌やし。オレこそヒゲもすね毛も見て分かるぐらい生えてるからな」
「ふふ。弥勒におっぱいは似合わなさすぎて、気持ち悪いし、俺もいらね」
俺、弥勒と付き合う前は、男同士で抱き合うことにあんま自信がなかったけど、今は早く抱き合える日が来て欲しいぞ。
まあ…やっぱまだ、逆流は怖えけど、その手前なら俺も平気だ。弥勒とならしてえって思う。
いつか、1つに繋がるのも、弥勒じゃねえとやだって思うから、俺らのペースでゆっくり好きを増やして、いつか繋がりてえ。
そんな事を考えながら、俺は弥勒と、2人きりの部屋で、いっぱいキスしてラブラブした。
「弥勒、味はこんな感じでいいか?」
「お? ええ感じやで。うまい」
次の日、昨日ミラネサを食い損ねた明彦とウィルジニーも帰ってくるから、味変したのをみんなで食うっつー事で、今はトマトソースを煮込んでるところだ。
昨日は揚げ担当だったけど、今日はソース担当の俺。色々出来るようになって、料理が楽しいぞ。
「ただーいまー」
「ただいまやで〜」
「あ、おかえり明彦、ウィルジニー」
「ええタイミングや。もう出来るから、座ってくれや」
「いやー、まいったわほんま。あそこから卵が5つも出たから、大騒ぎやし」
「む。大騒ぎっつーほど、すげえの見つけちゃったのか」
「卵から分かる生態っちゅうのも多いから、みんな大喜びやで」
「卵って大きさぐれえしか分かんねえんじゃねえのか?」
「そうでもないで? 5つっちゅう事から、1回の産卵数が分かるやろ? 他にもなー…」
「おとん、ええから座れ。座って話しせえや。メシ出来てんねんし」
みんなが揃ったから、さっそくいただきます。
うめえっ。自画自賛だけど、トマトソースのミラネサもうまっ。
それにしてもやっぱ、俺が揚げるより弥勒が揚げた方が、なんかサクサクしてるよな? 何が違うんだろ?? 腕の差か?
「は〜、やっぱ遥は古生物やった方がええって」
「そやな〜。向いてるで、遥。古生物やり」
「ええ〜? 化石1個見つけたぐれえで大袈裟だぞ?」
「せやで。だいたい遥は物理学やりたいねんから、邪魔したるなや」
「うっさいな。1個でもええのが出るっちゅうのは、この仕事において重要な、運持ってるっちゅう事なんやで?」
「そーやそーや。ええ運持ってるならやって欲しいやん」
「うーん。今は俺、MITでの生活が一番してえから、やっぱ無理だって」
「ほら、遥もそう言うてるやんけ。無理に誘おうとすなっ」
4人で楽しく食いながら思う。
こうやって、みんなでワイワイ食うのも楽しいけど、弥勒と2人で食うのがしたくなってきたなって。
これじゃまるで、ホームシックじゃなくて、弥勒シックだ。
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