ご対面
12月26日。
日本からまる1日以上かけてやってきたのは、南米、アルゼンチン南部、パタゴニア地方、チュブト州の町サルミエルト。
オレのおとんとおかんが化石掘りに精出して暮らしてる町や。
真夏っちゅう日差しの中で、オレのやった帽子被ってる遥…カッコかわいい…
「おまえが遥かー!! ようきたなー! ようこそやで」
「初めまして、弥勒の父さん。楠木遥だ。しばらくお世話になります」
駅まで迎えに来てるはずやって探してたら、先に遥を見つけたおとんは、速攻寄ってきて遥の目の前っちゅう距離まで近づいた。
怪しいから、怪しいからその近づき方はやめろ、おとん!!
「おとん、おまえもか! 夫婦揃って似たような事すなーっ!!」
「なんやねん弥勒。うっさいなー、目ぇ悪い子なんやから、顔はよう見せな」
「近いのはともかく、名乗れやアホっ!! 先に名乗れっ!」
「高嶺明彦や。よろしゅうな? それにしても白いなー、真っ白やんか。おれのこと見えてるけ?」
「大丈夫、顔はちゃんと見えてるぞ。弥勒は父さん似なんだな」
「それ、よう言われるけど、おれはおれの方がええ男ちゃうかて、いつも思うんや。どう思う?」
「答えにくい事聞くなアホっ! どっちがええとか言いにくいやろ、ハゲっ!!」
「白髪はあるけど、ハゲてへんわボケっ!! ほんま、かわいない息子やわ。車はこっちやで〜」
「ムカつくクソ親やっ」
ゴロゴロ引いてた旅行カバンを車に乗せて、おかんが待ってる2人の自宅へゴーや。
おかんも遥と会うんは久しぶりやし、会うたらまたうるさいんやろなーとか、思うとウンザリなため息が出る。
「弥勒、せっかく仲良くしようとしてくれてるのに、怒ってばっかはダメだぞ?」
「言うたかて、ムカつくで、このクソ親〜」
「ジニがメシ作ってるから、家着いたら荷物下ろしてすぐメシやで」
「ウィルジニー、メシ作ってくれてるのか! 嬉しいぞ! 俺すげえ腹ぺこだったんだ」
「せやな。もう着くやろっちゅうて、一食食い損ねたし、オレもぺこぺこや」
遥を見た途端、ガバって感じでおかんは抱きつくし……もー、このクソ親ども嫌や。
「いらっしゃいやで! 遥!! ウェルカム!」
「わわっ。久しぶりだなー、ウィルジニー! お世話になるぞ!!」
「抱きつくなおかんっ! 来て早々抱きつくとかないやろっ!! 距離感おかしいわボケっ!」
「息子歓迎して何が悪いんや。遥もこっち式の挨拶されて喜んでるって。なあ?」
「う、うん。ちょっとビックリしたけど、歓迎してくれて嬉しいぞ」
「部屋はこっちの客間使うんやで。荷物下ろしたらメシやし、とりあえず荷物下ろしといで」
「ベッドは1個しかないけど、あんたら付き合うてるんやから、かまへんやんな?」
「ただし、エロい事はほどほどにや。発掘優先しいや?」
「親のいる家でエロい事とかするかボケっ!」
「弥勒、とにかく荷物下ろさせてもらおうぜ。俺も弥勒も腹ぺこなんだからさ」
おかんの出すメシも、明らかにいつもより品数が多いし………テンションおかしいって、このクソ親ども。
「うわー、ご馳走だな、弥勒」
「ご馳走すぎ、気合い入れすぎや、おかん」
「せっかく来たんやし、現地の料理食いたいやろ思てな。座り座り〜」
「メシは交代制やし、おまえらも気張らなあかんねんで?」
「俺、こんなご馳走、作れるかなー? いただきますっ!! うまっ。ウィルジニー、これうめえぞ!」
「それはエンパナーダっちゅうねん。こっちやと主食によう食べられるやつや」
「へえ、けっこううまいやんけ。中身の味もええし」
「だなっ。すきっ腹に効く味だ。うめえっ。あ、弥勒の父さん、俺な、お笑いの予習もしてきたぞ」
「マジか! ほなあれ見たけ? ゴッツがきハラ! 最近やと1番のおすすめなんやけど」
「あれだったら俺、呼び出し幽閉マンションのコーナーが好きだ。キワキワ攻めてるよな?」
「分かってるやんか。嬉しいなー、積極的に分かろうとするヤツ少ないし」
「あれはうちも気に入りやわ。呼び出し中にバレへんかのハラハラがええしなー」
「先週の大牧のヤツ見たけ? マジで雄叫びあげとったやろ。おれめっちゃウケた」
「オレはあれ見ると、マジか!て思うけどなー。ライブの予定ギリギリとか」
「次の人決まらねえと出られねえもんな。そこがわくわくするんだけどさ」
「弥勒、遥めっちゃええ子やんか。こんなええ子よう見つけたなー」
「ほんま、我が息子ながら、大手柄やで」
「せやろ? 遥はオレの自慢の彼氏やしな」
「えへ〜、大っぴらに彼氏扱いされるのって、なんかくすぐってえな」
「向こうではこんな感じやないんか?」
「反対はされへんかったんやろ?」
「反対はされてへんけど、婚約のための挨拶は大学出るまで待たなあかんねん」
「でも、そのぐれえがちょうどいいって俺は思ってるぞ。俺たちがダラけねえか見てるヤツがいるぞって思うし」
「ま、緊張感は多少あった方がええっちゅうのは、そうかもしれんな」
「まわりの評価を見ながらやったら、自分らのペースも掴みやすいやろうし」
「遥のおとんは愛情深くてええ人やで」
「いつもはヘナチョコだけどな」
おとんとおかんからオレのちっさい頃の話聞いて、遥はめっちゃ楽しそうに笑ってる。
良かった。おとんが遥の事気に入らんわけないて思てたけど、実際気に入られてるん見たら、なんかホッとしたわ。
オレが海で流されかけた時の話聞いて、遥がめっちゃびっくりしとる。
「ええっ! 海で流されかけたって、そういう事だったのか!!」
「そやねん。四国の島やし、すぐそこは鳴門の渦潮がある場所やで? 危険どころの騒ぎやない」
「あん時はジジイも海を舐めるなっちゅうて、激怒しとったもんなー」
普段ジジイはめっちゃ優しいし、怒鳴り声あげて怒られたんは、後にも先にもあの1回だけやった。
そのせいかオレは、めちゃくちゃ反省したもんや。
「親父は漁師やし、海の怖さをよう知ってるから、当然や」
「俺も川に落ちて怒られた事あったけど、危険度が桁違いに高えな」
「知らんかったんやし、しゃーないやんけ。まさかちょっと顔出しただけで、あんな速攻流されるとは思わんし」
入り江にあった舟付き場の先っちょから、ほんの10センチほど顔出しただけで、まさか流されるとか、考えへんかったんや。
オレは慌てて必死こいて泳いで戻ったけど、慶太はポカーンとした顔で浮き輪ごと、あっという間に流されてったからな。
今でもあの時の慶太の、呆気にとられてるって顔は忘れられん。
海水浴場みたいに遊泳場として整備されてへん海で、舟の出入りもあったから、安全対策のブイなんかも沖にない海やから、好奇心で顔覗かせて、めっちゃ早い潮流に攫われて、あん時はほんまビビった。
「遊ぶんは入り江の中だけって決まりはあったのに、守らんと五木梨の孫まで巻き込むし」
「滝も巻き添えくらったんだ?」
「っちゅうか、慶太の方がめっちゃ流されて、焦ったオレが助け呼びに行って、それで大騒ぎになったんや」
慶太は浮き輪持ってた分、泳ぎにくかったって後で言うてたけど、あん時はマジでどんどん沖に流されてくし、ガチで焦ったっけ。
あ、こらあかん、助け呼ばんとアイツ死ぬわって、マジで感じたからな。
すぐ目の前が五木梨っちゅう場所やったから、大慌てで民宿に駆け込んで、慶太が流されたっちゅうて、大人が舟出して…舟乗って大人に連れられて戻ってきた慶太は、泣く余裕すらなくて顔真っ青やったから、相当怖かったはずや。
「弥勒は自力で浜まで帰って来てたらしいしな。他人巻き込むんがあかんやろ?」
「五木梨の孫のために、舟出して追いかけたらしいからな」
「それ、ガチの海難事故っつーやつじゃん。何死にかけてんだよ、弥勒」
「いやだから、オレは浜まで泳いで帰りついたんやっちゅうてるやん」
「どっちかっちゅうと、五木梨の孫を殺しかけたっちゅうのが正しいわな」
「弥勒、イタズラもほどほどにな? シャレになんねえのはやっちゃダメだぞ?」
「遥も海とか縁少ないかもしれんけど、気ぃ付けや?」
「海って怖えって今日知ったから、気をつけるよ、ウィルジニー」
他にもたくさん、楽しそうに色々喋る遥見てると、おとんとおかんに、オレらの付き合いを報告して良かったって思えてくる。
………うちの場合は、勝手に遥をオレの付き合ってるヤツやって、先走って誤解しとったけど、どこ見てそんな誤解したんか未だにわからん。
夜、旅の汚れを落として部屋に戻ると、先に上がった遥は疲れのせいかすっかり寝入っとった。
かわいいからそっと頭を撫でて、ほっぺたにキスすると、くすぐったそうにむにゅむにゅ言う姿が愛しい。
「むゅ…? 弥勒?」
「悪い遥、起こしたけ?」
「む………むゅ……弥勒………むゅ………」
「疲れてるんやから、寝とけ」
「…ん…………むゅ………………すぴー……」
遥がオレの胸元に擦り寄ってきて、すやすやかわいい寝息立てて寝てるのは、めっちゃ幸せで嬉しなる。
日本に帰るまで、しばらくこれで過ごせるんやと思ったら、嬉しくてたまらんから、遥の嫌がることは絶対せんとこって自分に誓う。
ま、おとんもおかんもおる家で、エロい事する気はないけど、身体も絶対抑えて、健全なカップルとして過ごすで!
もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ




