表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

誕プレ

本日3話目です

「うーん…朝か。えへ。17歳の俺、誕生だな」


 本日、俺は彼方といっしょに一つ年を取った。

 17歳の俺、いい事がいっぱいありますように!そう願ってカーテンを開ける。


「はよー、母さん。あれ、父さんは?」

「今日は早く帰るから、父さん出るの早いって言ったでしょ」

「あの靴下臭すはテンション上げ過ぎなりよ。母さま、かなタソ大盛りなり」


 俺の朝メシはわりと母さんの趣味で米が多いけど、コーヒーは欠かせないっつー謎仕様だ。

 ま、トースト1枚だと足りねえけど。

 朝から味噌汁、焼き魚、おひたし、だし巻き玉子をどんぶりメシで食わねえと、男子高校生は4限目終了まで腹が保たねえしな。


「あ、母さんが漬けたらっきょ、まだあったっけ?」

「酢漬けはこの前のカレーで品切れよ。塩漬けならちょこっと残ってるけど、今食べるの?」

「むー彼方が食ったんだろー。弥勒んち持ってこうと思ったのにー」

「ぷい。あれは我が家のらっきょなり。他所持ってくなす」


 去年母さんが漬けたらっきょは、チャレンジメニューの中でも好評で、すげえうめえから弥勒にも食わせたかったのに…


「来月になったらまた漬けるから、2人ともケンカしないのっ。それよりこっち食べない?」

「だから、そのピクルスはいらねえってば! 父さん担当だ!」

「かなタソ髪の毛かわゆすせねばっ! さささっ」


 しょーがねえから、心優しい俺は、妙に甘辛いピクルスを、1個だけ食ってやるけど、彼方はその間にさっさと洗面所に逃げてる。

 この手の出来上がりが想像しにくい物は、ほんと失敗しやすいみてえで、母さんはこれで5回目の敗退中だ。

 もう懲りろよ…


「うー…母さん、不味い……酸っぺえ上に砂糖甘えピリ辛っつーのは酷えからっ」

「文句ばっかり言わないの。これもだんだん美味しくなってきたでしょ?」

「ならねえって。せめて唐辛子か砂糖のどっちかがマシならともかく、両方はムリだ。不味いっ」

「母さん、だんだんコツが分かってきたから、次こそ絶対美味しく出来るわ。楽しみねー」


 ほんと失敗に懲りねえ母さんだ。

 俺もらっきょうみてえにうめえのなら文句言わねえのに、1回漬けると何日もあるから、もー…


 俺が文句言いながらメシかっこんでたら、髪ちゃんとした彼方が、洗面所から出てくるから、さっさと洗面所使ってヒゲ剃る。


 白いから目立たねえけど、俺も男だから、ちゃんとヒゲとかすね毛は生えてるんだぞ。

 俺、胸毛はねえけど………むー、もうちょっと筋肉欲しいかも?


「はるタソ、お時間なりが、ご用意すんだなりか?」

「彼方もうちょい待て。ここ直んねえっ」


 今日は2人だから、わりと余裕あるけど、これに父さんの出る時間が重なると、いつも洗面所争奪戦で戦争みてえな状態になる。

 たいてい敗戦国は父さんだけど、時々は父さんが優先の時もある。

 そういう時はたいてい、母さんからのおふれが出るけど。

 歯磨きしてヒゲ剃って顔洗って寝癖直したら、上着着てカバン持って彼方といっしょに玄関へ向かう。


「遥、これ持って行きなさい。塩漬けの方、弥勒くんにどうぞって」

「さんきゅ、母さん。弥勒、絶対喜ぶよ」

「むー母さま分けるなす。ミロクは市販品で十分なりっ」


 母さんからもらった、瓶詰めの塩漬けらっきょもカバンに入れて、靴履いたら、学校向かって出発だ。17歳の俺、出動するぞ!




「はよー弥勒。今日はいい物やろう。母さん成功のらっきょだぞっ」

「お? らっきょうか、ほなカレーせんとな」


「彼方のお母さんって、らっきょう漬けたりもするんだ?」

「うむり。美味すだったのに、取られたなり〜」


「彼方は家でピクルスでも食っとけばいいじゃんっ」

「嫌なり〜。あのような不味し物、かなタソ食いたくなすっ」


「遥のおかん、ピクルスは失敗やったんや?」

「ヤベえ味だぞ。酸っぱくて砂糖甘え上に、唐辛子の辛さがケンカすんだからな」


「しかも瓶いっぱいあるなり。かなタソにあれは始末出来なす」

「彼方、挑戦には失敗も付き物なんじゃないかな?」


 4人で喋りながら、校舎内を巡っていく。

 今日は全校上げての健康診断? 身体測定? ついでに体力測定もか、そんな行事だ。

 ジャージに着替えて、俺らはまずは身長と体重から測っていこうかっつー事にする。

 各生徒が空いてるとこを回るっつー仕組みだし。


「む。178か、2センチ伸びたなっ」

「むむ。かなタソ153センチなり。少々の成長ね」

「慶太188か。もっとチビやと思ってたわ」

「さすがにもうあんまり伸びないけどね。弥勒もでしょ?」

「オレまた伸びた196やったしな」


「えー、弥勒はもう伸びんなよー。俺との差を縮めてこうぜっ」

「体重ならともかく、身長に向かってそんな事言うなや」


 体重の方は、俺68kg、弥勒85kg、滝77kgで、彼方は極秘情報故、秘匿するらしい。

 やっぱ部活やめたし体重増えてねえ。

 もうちょっと筋肉が欲しいとこだし、まだ身長も欲しいから、ちょっと運動しねえとな。

 身体も鈍ってるだろうし、ちょっと朝走ってみよ。


「お? 遥も朝走るんけ?」

「もっつー事は、弥勒は朝走ってんのか?」

「まあちょっとだけな。やっぱ鈍るん嫌やし、ちょっとはやらんとや」

「おれはジム通ってるよ。そんなにいっぱいじゃないけどね」


 垂直跳び、懸垂、握力、上体起こし、前屈、遠投、肺活量、聴力、視力…相変わらず俺と彼方の視力はあんま良くねえけど他はOK。

 内科的疾患も特になんもねえ、いたって健康的な状態だ。

 つか、これで病気とか見つかる事って、やっぱほんとにあるのか?


「そりゃあ、やっぱりいると思うよ。問題ないって思ってるけど病気だったって子も」

「視力なんかは、意識してんと落ちたん気づかん事ありそうやな」

「なるほど。俺、視力は意識してるから、落ちたらすぐに気づくけど、普通はそうか」

「かなタソ達、元々お目々よろしなすからの。タキお目々よろし羨ましす」


「おれは1.0だし普通にいいけど、弥勒は視力1.2ってよすぎじゃない?」

「1.2…すげえ。俺には想像出来ねえ視界だろうなー」


「うむり。かなタソにそのような視力あれば、もはや白い死神シモ・ヘイヘなりよ」

「シモ・ヘイヘて…おまえはどこを目指してんねん?」

「ヤツはムーミン谷のゴルゴ妖精だし、彼方が目指すにはピッタリじゃん?」

「彼方の狙いは正確だけど、シモ・ヘイヘがこんなにかわいくはないと、おれは思うね」


 彼方の好きなゲームはFPSだから、シモ・ヘイヘに憧れるのもムリねえな。

 さすがにロシア兵4000人撃破っつーのはムリっぽいけど、普通に腕のいいスナイパーだし、彼方と組むと勝率が上がるんだよ。

 ちなみに滝はアサルトライフル持って、スナイパー彼方を守ったり援護する立場でやってるけど、俺ならショットガンがいいぞ。


「へえ、FPSな。それオモロいんけ?」

「チーム戦とかはそれなりにな。俺はそんなだけど、彼方は滝としょっちゅうやってるぞ」

「遥は弥勒と家で遊ぶけど、おれと彼方が夜遊ぶなら、こういう風になるよね」

「うむり。タキ紳士なりから、夜かなタソ通信遊ぶするなり」




 ひと通り測定が終わったから、一旦弥勒んちに遊びに行くぞ。

 今日は平日だけど家で晩メシ食わねえと、誕プレもらえねえからな。


 前日でもいいだろっつー俺と彼方の抗議を無視して、父さんと母さんが当日に渡すって聞かねえから…むー、姑息な手段取りやがって…


 普段は俺、平日の夕方は弥勒に料理習ってるから、弥勒といっしょに晩メシ食うのが通常なのに、今日は家帰って晩メシ食わねえと。


「お邪魔しまーす」

「おう。コーヒー飲むけ?」

「飲む飲む。いっしょ淹れようぜ」

「いや、遥は部屋行って先座っとけや。オレが淹れるから」

「ん? そか? だったら先部屋行ってるな」


 弥勒んちの二間続きの奥の部屋は、弥勒の寝室で、平日晩メシ食うだけの時はあんまここ入んねえけど、今日はこっちで遊ぶのか?


「お待たせー、ケーキも持ってきたで」

「おぉう。ケーキか! そか。誕生日だしな」

「警戒せんでええ。そんな甘ないはずやし、食うてみ?」

「うん。すげえいちごいっぱいだなー…んっ! うめえっ!」


 ひと口食ってみてビックリ。全然甘過ぎねえ、これは…ヨーグルトのムースが下に敷いてあるのか?

 すげえさっぱりして、うま!

 これなら家でケーキが待ってても、心配しねえで食えるぞ!

 うめえ! すげえっ!

 え? この辺にこんなうめえケーキって売ってたっけ?


「オレが作ったんや」

「マジ? すっげえうめえぞ弥勒 マジうめえ」

「せやろ? 果物たっぷりで砂糖かなり控えてあるからな」

「俺、甘えのそんな得意じゃねえけど、これはうめえっ! 弥勒すげえ、これ超絶好みの味だっ」

「そうみたいやな。おまえ砂糖系の甘さは得意やないみたいやし、これにしてん」

「すげえ嬉しいぞ、弥勒。よくこんなうめえの作れたよな。うまっ!」


 俺がクリスマスに作った甘々ケーキと全然違え、すげえさっぱりなちょうどいい甘さの、いちごたっぷりな手作り誕生日ケーキっ!


「今までいっしょに食うてきた物を参考にしてみたんや。それとこれ、やる」

「ん! 誕プレか!? わーいっ。開けるぞ、弥勒」


 まずは弥勒らしい力強い文字で書かれた“17歳 誕生日おめでとう 遥”のバースデーカードっ!

 ヤベえ! 手書きのカードだ、嬉しいぞ! これも絶対大事に取っておこう。


 クリスマスカードのデザインのカッコ良さとは違う、弥勒らしい手書きのカード。


 俺、これ宝物にしようっと。

 弥勒が頑張って書いてくれた、俺だけのための誕生日カードだ。

 すげえ嬉しい。嬉しいぞ弥勒。


「おまえみたいに、めっちゃきれいっちゅうカードには出来んかったけど、精一杯頑張って書いたし受け取ってくれ」

「うん。ありがとな弥勒。弥勒の気持ちがいっぱいのカードだこれ。ノートの字よりすげえ上手じゃんっ」

「ちょっとずつ練習して、来年も再来年もずっと贈るから、上手になってくでオレ」

「うは。そりゃ楽しみだな! 俺も負けねえように、絶対カッコいいカード考えてやんよ」


 プレゼントの包装紙を剥がしてみたら、ちっせえ箱の中身は、なんと男物のネックレスだ。

 カッコいい、これ。シブい。イケてる。


「すげえ…カッコいい。超カッコいいぞ、これ! 今着けてもいいか?」

「おう。着けてみてくれ。それ絶対おまえに似合うから」


 シンプルなプレートのデザインがカッコいいネックレスを着けてみると、なんか一気に自分がオシャレになった気がするな。むふっ。


「えへ。弥勒、これ似合うか?」

「めっちゃ似合う。思た通りめちゃくちゃカッコええで」

「さんきゅな、弥勒。すげえカッコいいぞ、これ。うわ…ずっと着けててえ」

「そんぐらいなら、着けてても怒られんと思うで。目立たんし」

「かな? ピアスとかじゃねえし、没収されたりしねえか」

「てか、出来るだけ着けててくれ。身に着ける物でそれ選んだんやし…実はお揃いや」


 弥勒がシャツのボタン外すと、なんか似てるけど、ちょっと違えデザインの、こっちのもすげえカッコいいネックレスが光ってる。


「えぁ? ……でもちょっと違えぞ? 似てるけど?」

「全く同じっちゅうのやと、オレと遥、両方に似合うデザインがなくてな。同じメーカーので探してん」

「そっか〜…2個も買ったら、すげえ高かったんじゃねえのか?」

「そこはやりくりしたで。予算決めて、その中から探したから、高い物やないけど」

「高えのじゃねえっつーのが嬉しいぞ、弥勒。俺が似合うの、弥勒も似合うの、そん中から探してくれた。そんでカッコいい」


 その気持ちが嬉しい。

 色々見て探さねえと、こんなカッコいいネックレス、見つからなかっただろうし、弥勒の頑張りが嬉しいぞ。

 嬉しいな、すげえ嬉しい、弥勒の気持ち着けてるっつー感じすんのが、なんつっても一番嬉しい。


 これがもし、カッコよくなくても、嬉しいのに、こんなカッコいい…ヤベえ嬉しい。


 嬉しくて、俺の頭、なんか茹だりそうに嬉しい。

 誕生日のカード1枚だけでも全然満足なのに、こんなに頑張ってくれた……

 嬉しい、弥勒、大好きだ。大好きでいっぱい好きだ!


「これ出来るだけいっぱい着けるな。んで、いっぱい大事にする」

「そうしてくれると嬉しい。めっちゃ似合うしそれ」

「弥勒、この気持ちは表現してえ。ぎゅってしていいか?」

「おう。オレも抱きしめたい。誕生日おめでとうさん、17歳の遥」


 弥勒とぎゅって抱きしめ合うと、やっぱすげえドキドキして、嬉しいと好きでいっぱいになる。

 弥勒が大好きだ。弥勒、さんきゅな。


「やっぱデケえなー弥勒は。俺の腕からはみ出る」

「遥もちっさい事はないやんけ。わりと身体はしっかり筋肉ついてるし」

「まあな、卓球部の元部長さんだから。明日から朝走り込みして、俺もっとマッチョになる予定だし」


「部長やったのに、なんで部活やめたんや?」

「まず卓球部じゃモテねえって思ったのがデケえな。高校生なったら彼女欲しかったから、モテそうなのやろうって」


「モテそうなやつ? バスケとかやるつもりやったとかけ?」

「バスケは俺ムリ。コートの中わちゃわちゃするし、見分けつかねえで敵にパスするやつはダメだろ?」


 あの時はまだ高校生なったばっかで、新しくなんかやろうって、部活とかバイトとか、色々探してた時期だったんだよな。

 弥勒がもし、転校してくるのがもうちょっと遅かったら、俺はきっと何か別のことやってて、弥勒に料理は習わなかっただろうな。


「そうやったんや。遥がなんか選ぶ前にオレが間に合ってよかったわ」

「ほんと、弥勒ナイスタイミングだったぞ。おかげで弥勒をこんな好きになれた」

「オレはあん時からもう好きやったけどな。ほんま上手い事口説けたで」


「な、なんだってー! 弥勒もう好きだったのか? 俺見てそっこーじゃん!」

「ぷくく。遥は全然気づいてへんかったみたいやな。ま、最初はオレも自分の気持ちに戸惑ってたけど」

「転校初日から全て弥勒の策略だったのか。やられたー」

もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者が泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ