文化祭
「─── 最後に目、開けて?」
「ん。終わったか?」
「まだまだっ。微調整入れるから待ってっ」
ただ今、文化祭当日、女装コンテストの準備中。相沢にメイクの最後の仕上げをやってもらってるところ。
上手く神聖で近寄りがたい雰囲気が出てくれればいいんだけど、心配だなぁ………
「うひょ! はるタソ何やら素晴ら美しきなったなりっ!!」
「「ほんと、去年に引き続きすごいよ遥くんっ!!」」
「「これは絶対優勝間違いなしだね、ウチのクラス!!」」
「いやすごいねー、遥。やっぱりおれ、今年も女装引き受けなくて良かったよ」
「遥、おまえのおとんとおかんが来たけど、そろそろ見せられるけ?」
「待ってくれ弥勒。今年はちょっと、仕上げてから写真は撮られてえし」
ヅラ被って、相沢に髪整えてもらって、弥勒と父さん母さんを振り返ると、3人ともビックリした顔してる。
どだ? 俺変じゃねえか? 変じゃねえと思うけど、どだ?
「うわー…… 去年のもすごかったけど、パワーアップしたなー」
「えへ。そうか? ちゃんと天使に見えるか?」
「母さん、大変だ。うちの子が天国に行くらしいよ?」
「あらあら、それは大変だわ。急いで引き留めないとね?」
「父さん母さんどだ? 俺、きれいになってるか?」
「きれい過ぎて父さん大慌てだよ。これじゃ神さまに連れてかれそうだ」
「ほんとにね。家族で写真撮って残さないとだわ」
「またかよもーっ!! なんでそういう方向ではしゃぐんだ、このジジイとババアはっ!」
「むー、今回は母さままで恥ずかしきなってしまったなり〜」
ほら、見てみろっ! みんなちょっと呆れた顔して、俺らの撮影見てるじゃんか!!
ったく、恥ずいジジイとババアだよ。
「しゃーないって、この出来やし。ほんまに天国行きそうなぐらいきれいやで?」
「む? きれいかおれ」
「おう。めっちゃきれいや。さすがやな」
「ほんと、今回のはあたしの傑作だって、あたしも思うしー?」
「「だよねだよね? ほんと、最高きれいだよ、遥くんっ」」
「「ほんとほんと! 世界一きれいって感じだよ、遥くん」」
「むひょー、これはかなタソも気合い入るなりー!!」
「彼方、少女の声役、頑張ってね?」
今回のサポート役は彼方で、天使を呼びだす声の担当。
声がクラスで一番幼いっつー事で決まった配役だ。
騒ぐ父さんと母さんを会場に追い返して、なんとかやっとの思いで、実行委員の弥勒に付き添ってもらって会場に向かう。
う〜、やっぱ緊張するなー、この時間は。
て、敵上視察しねえとだ。
む? あのガチの先輩、今年はアイドルみてえな格好してるな。
向こうも気合い入れて勝ちにきてるっつー事か。今回も勝てるかなー、俺? 自信ねえなー………
「うー、弥勒。今年はあのガチの先輩、アイドルみてえな格好だぞ。勝てるかな?」
「間違いなく遥の勝ちや。まず、天使とアイドルじゃ天使の方が強いしな」
「うむり。はるタソかなタソ、練習いっぱいしたなりから、勝つは間違いなすっ」
「俺は自信がねえ………」
「大丈夫や。オレが応援したら、いっぱい頑張れるんやろ? いっぱい頑張ってきたやんけ」
「だな。頑張るぞ、俺。精一杯頑張るからな?」
「それでは2年13組、楠木遥。テーマは“奇跡を起こす天使さま降臨”です」
きたっ! 俺の出番がきたっ! ま、まずは彼方の声の出番を待とう!! う〜………
「天使さま天使さま、病気の父さま母さまをお助けください。どうかどうか、お助けください」
ペタペタペタペタ───…
今回は奇跡を起こす、神聖で近寄りがたいほど美しい天使さまだから、裸足での登場なのだ。
姿勢正して、去年やったウォーキング活かして、ゆっくり、テンポを守って、一定の間隔でペタペタ歩いて、舞台の中央へ向かう。
「天使さま天使さま、お願いですから、父さま母さまをお助けください」
ペタペタペタペタ───…
「わたしはどうなってもかまわないので、どうか父さま母さまを───」
ここで司会者からマイクを受け取って、舞台に向かってセリフを決めるぞ!!
「子らに、奇跡を ─── っ!」
「天使さま!!」
一拍置いて、会場からデケえ歓声が沸いてくれた。良かった、今回もウケた……良かった。頑張った甲斐がある………
「いやー前年度最優先賞受賞者ですが、今年は見事にパワーアップして来ましたねー」
「えへ。パワーアップ出来てるなら、嬉しいぞ。今年は色んな縁での協力も得られたからな」
「相変わらず清々しいほど、女装と丸わかりですね、すごいですっ!」
「これじゃねえと、おれなんかじゃガチの人には勝てねえからな」
「今回の女装のポイントはどこでしょう?」
「わざわざ友だちに掛け合ってまで手に入れてもらって、さらにみんなで直したこの衣装だ。みんなでやったからこの形が出来たんだ」
「なるほど、まさに我が校の文化祭のための女装、ということですね?」
「うん。個人でやってるヤツなんか目じゃねえ。こっちの味方は、クラスだけなんかじゃねえからな?!」
「ありがとうございました! 2年13組、楠木遥くんでした!」
会場からデケえ歓声と拍手をもらって、舞台袖に引っ込んだ。とにかく良かった、終わってホッとしたぞ。ふぅ〜………
「お疲れ、遥。言うた通り、めっちゃウケてたやろ?」
「うん。ウケて良かったよ。なんかすげえホッとしたぞ、俺」
「どうする? ここで休憩して、一応3年のライバルチェックするけ?」
「でも、模擬店のジュース手伝わねえでかまわねえかな?」
「あんだけ頑張ったんやし、ちょっとぐらい休憩しても平気やて思うで?」
「ならちょっと休憩してえ。最後は手伝うけど、ちょっとだけ…」
「おう。午前中は頑張って売り子もやったんやし、気にせんと休憩し?」
緊張で汗かいて蒸れたヅラを外して、ホッとひと息入れた。ふぃ〜、着替えてえけど、もうちょっとだけ座っててえかも。
しばらく座って休憩した後、急いで着替えて会場に戻ってくると、ちょうど去年と同じように、ガチな先輩が出場するとこだった。
「続いて3年5組、早川真純。テーマは“アイドルライブ会場”です! どうぞ!」
うお、向こうは今回もカラオケ歌いながらの登場か…しかも、ライトまで凝った演出してるし、相当気合い入ってるんだなー。
あそこのペンライトの一団はクラスメイトかファンだよな? 盛り上がってんな〜。
声は時々男だけど、かわいいし振り付けも完璧だし、これはけっこう手強い相手だぞ?
「去年、惜しくも優勝を逃しましたが、今年の対抗馬はどうですか?」
「毎日やってる男の娘ガチ勢の身としては、負けたくないです! 今年こそ最優秀賞を狙っていきたいですねっ」
「なるほど、今年もやる気いっぱいですね。いや〜それにしても可愛いっ! ほとんどもう女の子、ザ・アイドルですね!」
「そうでしょ? これでも毎日、手間かけてやってますから!」
「今日のポイントはどこでしょうか?」
「全身から発散されるアイドル感に、みんながドキドキするように考えましたっ」
「なるほど、男子の考える憧れの体現、というわけですね?」
「そうなのっ! みんなーっ! 今日は3年5組のますみんを応援してねーっ!」
「「「L・O・V・E! まっすみーん!」」」
「ありがとうございました! 3年5組、早川真純くんでした!」
人気者の先輩だな〜。あんな人と1番を競えて、おれけっこう幸せ者かもしんねえ。
女装、乗り気じゃなかったけど、振り返るとけっこう楽しかったかもな。
来年もしやる事になったら、今度はやだって言わねえで、最初から全開で楽しもうか?
「弥勒」
「ん?」
「来年もし、女装やる事になったらさ。今度は俺、グダグダ言わねえで、もっと頑張るよ」
「そうか。ほなオレも精一杯応援とサポート役頑張るから、いっしょに頑張ろ」
そんなこんなで休憩して、教室に戻ってみたら、なんと、さっきジュースは売り切れたばっかで、みんな後片付け始めてた。
「悪いっ! 休憩してる間に売り切れたのか」
「遥くんおっそーい! みんなでバンザイしたくて、待ってたんだからね?」
「そうだよ遥くん! みんな、遥くん戻ってきたから、一旦中央に集まろ?」
クラスメイトみんなで集まって、売り切れの喜びをバンザイする。
良かったー! 売り切れた! やったー!! バンザーイっ!
みんなでゴミ捨てたり、掃除済ませて、全員揃って男子女装コンテストの結果発表を、聞きに講堂へ行く。
『今年も我が校の文化祭は最高に盛り上がりましたねー!』
『ええほんとに! 特に男子女装コンテストは最高でした! さてそのコンテストの結果ですが!』
舞台の上では生徒会の実行委員の司会者が、スムーズなやり取りでコンテストの結果発表会を進行させてる。
まずは例年通り大爆賞の発表からだ。何回も言うけど、大爆笑じゃねえぞ?
『大爆賞、1年1組、安川清二くん、テーマは“ガリガリ魔女の慟哭”です! みなさん拍手ー!』
「あ、1年生が取ったのか。どんなヤツか見たかったな〜」
「遥は準備に追われてた時間やったからな」
「あたしたちは優勝狙いだもんね」
「大爆賞なんかいらないもんねー」
『続いて、あんたが大賞、3年5組、早川真純くん、テーマは“アイドルライブ会場”です! 拍手拍手ー!』
「あの3年のガチな先輩も賞取ったね。あそこはやっぱり本人がもらいに行くんだ?」
「しかし、優勝ははるタソなりっ! 最後1個の賞であるからのっ!」
『そして、映えある最優秀男子女装賞には、2年13組、楠木遥くん、テーマは“奇跡を起こす天使さま降臨”です! みなさん大きな拍手を!』
「やたーっ! わーいっ! 行こうぜみんな!」
俺らのクラスは全員揃って舞台へ上がると、担任もいっしょになって、みんなで客席に向かって手を振って、拍手と声援に応える。
誰かだけが頑張ったわけじゃねえし、誰か一人が代表じゃ寂しいだろ、盛り上がっていこうっつー事で、全員揃って舞台挨拶だ。
残念ながら伊東や藤本、相沢なんかはクラスが違うから、ここには立てねえけど、感謝の気持ちを込めて、精一杯客席に手を振る。
おめえら見てるか? ほんとさんきゅだったぞ!!
「やったね、彼方。最優秀だよ、頑張った甲斐があったね!」
「うータキ。かなタソも勝利貢献出来て嬉しす〜」
「おめでとう、あたしたちっ!」
「あたしたちおめでとうだね!」
「おまえが1番頑張ったしやで。よう頑張った、おめでとうさんや」
「おめえらのおかげだってー、賞もらえてよかったなー!」
去年とはまた違った形の、美術部製作の変てこトロフィーをもらって、みんなでバンザイしながら舞台を下りた。楽しかった〜!!
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