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この恋のために2  作者: ひなた真水


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文化祭

「─── 最後に目、開けて?」

「ん。終わったか?」

「まだまだっ。微調整入れるから待ってっ」


 ただ今、文化祭当日、女装コンテストの準備中。相沢にメイクの最後の仕上げをやってもらってるところ。

 上手く神聖で近寄りがたい雰囲気が出てくれればいいんだけど、心配だなぁ………


「うひょ! はるタソ何やら素晴ら美しきなったなりっ!!」

「「ほんと、去年に引き続きすごいよ遥くんっ!!」」

「「これは絶対優勝間違いなしだね、ウチのクラス!!」」

「いやすごいねー、遥。やっぱりおれ、今年も女装引き受けなくて良かったよ」


「遥、おまえのおとんとおかんが来たけど、そろそろ見せられるけ?」

「待ってくれ弥勒。今年はちょっと、仕上げてから写真は撮られてえし」


 ヅラ被って、相沢に髪整えてもらって、弥勒と父さん母さんを振り返ると、3人ともビックリした顔してる。

 どだ? 俺変じゃねえか? 変じゃねえと思うけど、どだ?


「うわー…… 去年のもすごかったけど、パワーアップしたなー」

「えへ。そうか? ちゃんと天使に見えるか?」


「母さん、大変だ。うちの子が天国に行くらしいよ?」

「あらあら、それは大変だわ。急いで引き留めないとね?」

「父さん母さんどだ? 俺、きれいになってるか?」


「きれい過ぎて父さん大慌てだよ。これじゃ神さまに連れてかれそうだ」

「ほんとにね。家族で写真撮って残さないとだわ」


「またかよもーっ!! なんでそういう方向ではしゃぐんだ、このジジイとババアはっ!」

「むー、今回は母さままで恥ずかしきなってしまったなり〜」


 ほら、見てみろっ! みんなちょっと呆れた顔して、俺らの撮影見てるじゃんか!!

 ったく、恥ずいジジイとババアだよ。


「しゃーないって、この出来やし。ほんまに天国行きそうなぐらいきれいやで?」

「む? きれいかおれ」


「おう。めっちゃきれいや。さすがやな」

「ほんと、今回のはあたしの傑作だって、あたしも思うしー?」

「「だよねだよね? ほんと、最高きれいだよ、遥くんっ」」

「「ほんとほんと! 世界一きれいって感じだよ、遥くん」」


「むひょー、これはかなタソも気合い入るなりー!!」

「彼方、少女の声役、頑張ってね?」


 今回のサポート役は彼方で、天使を呼びだす声の担当。

 声がクラスで一番幼いっつー事で決まった配役だ。


 騒ぐ父さんと母さんを会場に追い返して、なんとかやっとの思いで、実行委員の弥勒に付き添ってもらって会場に向かう。


 う〜、やっぱ緊張するなー、この時間は。


 て、敵上視察しねえとだ。

 む? あのガチの先輩、今年はアイドルみてえな格好してるな。

 向こうも気合い入れて勝ちにきてるっつー事か。今回も勝てるかなー、俺? 自信ねえなー………


「うー、弥勒。今年はあのガチの先輩、アイドルみてえな格好だぞ。勝てるかな?」

「間違いなく遥の勝ちや。まず、天使とアイドルじゃ天使の方が強いしな」


「うむり。はるタソかなタソ、練習いっぱいしたなりから、勝つは間違いなすっ」

「俺は自信がねえ………」


「大丈夫や。オレが応援したら、いっぱい頑張れるんやろ? いっぱい頑張ってきたやんけ」

「だな。頑張るぞ、俺。精一杯頑張るからな?」




「それでは2年13組、楠木遥。テーマは“奇跡を起こす天使さま降臨”です」


 きたっ! 俺の出番がきたっ! ま、まずは彼方の声の出番を待とう!! う〜………



「天使さま天使さま、病気の父さま母さまをお助けください。どうかどうか、お助けください」


 ペタペタペタペタ───…


 今回は奇跡を起こす、神聖で近寄りがたいほど美しい天使さまだから、裸足での登場なのだ。

 姿勢正して、去年やったウォーキング活かして、ゆっくり、テンポを守って、一定の間隔でペタペタ歩いて、舞台の中央へ向かう。


「天使さま天使さま、お願いですから、父さま母さまをお助けください」


 ペタペタペタペタ───…


「わたしはどうなってもかまわないので、どうか父さま母さまを───」


 ここで司会者からマイクを受け取って、舞台に向かってセリフを決めるぞ!!


「子らに、奇跡を ─── っ!」

「天使さま!!」


 一拍置いて、会場からデケえ歓声が沸いてくれた。良かった、今回もウケた……良かった。頑張った甲斐がある………


「いやー前年度最優先賞受賞者ですが、今年は見事にパワーアップして来ましたねー」

「えへ。パワーアップ出来てるなら、嬉しいぞ。今年は色んな縁での協力も得られたからな」


「相変わらず清々しいほど、女装と丸わかりですね、すごいですっ!」

「これじゃねえと、おれなんかじゃガチの人には勝てねえからな」


「今回の女装のポイントはどこでしょう?」

「わざわざ友だちに掛け合ってまで手に入れてもらって、さらにみんなで直したこの衣装だ。みんなでやったからこの形が出来たんだ」


「なるほど、まさに我が校の文化祭のための女装、ということですね?」

「うん。個人でやってるヤツなんか目じゃねえ。こっちの味方は、クラスだけなんかじゃねえからな?!」

「ありがとうございました! 2年13組、楠木遥くんでした!」


 会場からデケえ歓声と拍手をもらって、舞台袖に引っ込んだ。とにかく良かった、終わってホッとしたぞ。ふぅ〜………


「お疲れ、遥。言うた通り、めっちゃウケてたやろ?」

「うん。ウケて良かったよ。なんかすげえホッとしたぞ、俺」


「どうする? ここで休憩して、一応3年のライバルチェックするけ?」

「でも、模擬店のジュース手伝わねえでかまわねえかな?」


「あんだけ頑張ったんやし、ちょっとぐらい休憩しても平気やて思うで?」

「ならちょっと休憩してえ。最後は手伝うけど、ちょっとだけ…」

「おう。午前中は頑張って売り子もやったんやし、気にせんと休憩し?」


 緊張で汗かいて蒸れたヅラを外して、ホッとひと息入れた。ふぃ〜、着替えてえけど、もうちょっとだけ座っててえかも。




 しばらく座って休憩した後、急いで着替えて会場に戻ってくると、ちょうど去年と同じように、ガチな先輩が出場するとこだった。


「続いて3年5組、早川真純。テーマは“アイドルライブ会場”です! どうぞ!」


 うお、向こうは今回もカラオケ歌いながらの登場か…しかも、ライトまで凝った演出してるし、相当気合い入ってるんだなー。


 あそこのペンライトの一団はクラスメイトかファンだよな? 盛り上がってんな〜。

 声は時々男だけど、かわいいし振り付けも完璧だし、これはけっこう手強い相手だぞ?


「去年、惜しくも優勝を逃しましたが、今年の対抗馬はどうですか?」

「毎日やってる男の娘ガチ勢の身としては、負けたくないです! 今年こそ最優秀賞を狙っていきたいですねっ」


「なるほど、今年もやる気いっぱいですね。いや〜それにしても可愛いっ! ほとんどもう女の子、ザ・アイドルですね!」

「そうでしょ? これでも毎日、手間かけてやってますから!」


「今日のポイントはどこでしょうか?」

「全身から発散されるアイドル感に、みんながドキドキするように考えましたっ」


「なるほど、男子の考える憧れの体現、というわけですね?」

「そうなのっ! みんなーっ! 今日は3年5組のますみんを応援してねーっ!」

「「「L・O・V・E! まっすみーん!」」」


「ありがとうございました! 3年5組、早川真純くんでした!」


 人気者の先輩だな〜。あんな人と1番を競えて、おれけっこう幸せ者かもしんねえ。

 女装、乗り気じゃなかったけど、振り返るとけっこう楽しかったかもな。

 来年もしやる事になったら、今度はやだって言わねえで、最初から全開で楽しもうか?


「弥勒」

「ん?」

「来年もし、女装やる事になったらさ。今度は俺、グダグダ言わねえで、もっと頑張るよ」

「そうか。ほなオレも精一杯応援とサポート役頑張るから、いっしょに頑張ろ」




 そんなこんなで休憩して、教室に戻ってみたら、なんと、さっきジュースは売り切れたばっかで、みんな後片付け始めてた。


「悪いっ! 休憩してる間に売り切れたのか」

「遥くんおっそーい! みんなでバンザイしたくて、待ってたんだからね?」

「そうだよ遥くん! みんな、遥くん戻ってきたから、一旦中央に集まろ?」


 クラスメイトみんなで集まって、売り切れの喜びをバンザイする。

 良かったー! 売り切れた! やったー!! バンザーイっ!



 みんなでゴミ捨てたり、掃除済ませて、全員揃って男子女装コンテストの結果発表を、聞きに講堂へ行く。


『今年も我が校の文化祭は最高に盛り上がりましたねー!』

『ええほんとに! 特に男子女装コンテストは最高でした! さてそのコンテストの結果ですが!』


 舞台の上では生徒会の実行委員の司会者が、スムーズなやり取りでコンテストの結果発表会を進行させてる。

 まずは例年通り大爆賞の発表からだ。何回も言うけど、大爆笑じゃねえぞ?


『大爆賞、1年1組、安川清二くん、テーマは“ガリガリ魔女の慟哭”です! みなさん拍手ー!』


「あ、1年生が取ったのか。どんなヤツか見たかったな〜」

「遥は準備に追われてた時間やったからな」


「あたしたちは優勝狙いだもんね」

「大爆賞なんかいらないもんねー」


『続いて、あんたが大賞、3年5組、早川真純くん、テーマは“アイドルライブ会場”です! 拍手拍手ー!』


「あの3年のガチな先輩も賞取ったね。あそこはやっぱり本人がもらいに行くんだ?」

「しかし、優勝ははるタソなりっ! 最後1個の賞であるからのっ!」


『そして、映えある最優秀男子女装賞には、2年13組、楠木遥くん、テーマは“奇跡を起こす天使さま降臨”です! みなさん大きな拍手を!』


「やたーっ! わーいっ! 行こうぜみんな!」


 俺らのクラスは全員揃って舞台へ上がると、担任もいっしょになって、みんなで客席に向かって手を振って、拍手と声援に応える。

 誰かだけが頑張ったわけじゃねえし、誰か一人が代表じゃ寂しいだろ、盛り上がっていこうっつー事で、全員揃って舞台挨拶だ。


 残念ながら伊東や藤本、相沢なんかはクラスが違うから、ここには立てねえけど、感謝の気持ちを込めて、精一杯客席に手を振る。

 おめえら見てるか? ほんとさんきゅだったぞ!!


「やったね、彼方。最優秀だよ、頑張った甲斐があったね!」

「うータキ。かなタソも勝利貢献出来て嬉しす〜」


「おめでとう、あたしたちっ!」

「あたしたちおめでとうだね!」


「おまえが1番頑張ったしやで。よう頑張った、おめでとうさんや」

「おめえらのおかげだってー、賞もらえてよかったなー!」


 去年とはまた違った形の、美術部製作の変てこトロフィーをもらって、みんなでバンザイしながら舞台を下りた。楽しかった〜!!

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