協力者
「みんな〜、クラスTシャツが届いたよーっ!」
「やった! 弥勒、どんな出来のか見てみようぜっ」
「せやな。カッコええヤツなら、準備期間にも着たいし、早よ見よ」
ダンボール箱に入って届いた文化祭用のクラスTシャツを、さっそく箱開いて見てみると、なかなかの出来栄えじゃん。
黒い生地の背中にクラスのスローガンがカッコよく配置してあって、センスいい。
さすが美術部岡田のデザイン、すげえカッコいいぞ。
「おー、これやったら準備期間にじゃんじゃん着たいわ」
「だなっ。これは模擬店準備とかにも気合いが入りそうな出来だ」
「カッコかわゆす出来栄えに、かなタソ満足なり〜」
「さすが岡田だよね。いい記念になりそうだよ」
「それより遥くん、衣装の事なんだけどさ」
「聞いてよ遥くん。すごいいい話があるの」
「む? 麻生武藤、俺にいい話ってなんだ?」
「「あたしたちのレイヤーの友だちが、最近天使やったから、その衣装を格安で譲ってくれるって言ってるんだっ」」
「なんと、それはよろし話ではなすか。お衣装クオリティアップなりね」
「それって女物なんじゃねえのか? 俺に入るかなー?」
「大丈夫だよっ! サイズ直す時間はあるしっ!」
「もしダメでも、羽とか使える部分はあるって!」
「それもそっか。天使の羽ならおれが男でも、全然再利用出来るもんな?」
「いいなー、13組は盛り上がってて羨ましいっ」
「だよねー、やっぱり盛り上がりが欲しいよね」
「なんや? おまえらのクラスも、相沢んとこといっしょで、イマイチなんけ?」
「「だって、参加するのが吉田くんなんだもん〜。あれじゃ賞は狙えないし〜? ねー?」」
吉田かぁ………オモシロに振り切るのも難しそうな、中肉中背な地味男じゃん。
それはまた、中途半端な人選だな。
もっとこう…体育会系のヤツとか、ヒョロガリなヤツ選べば、きっとみんなにウケて、こいつらのヤル気も出ただろうにさ。
いや、実は化粧したらすげえ化けるタイプっつー事もあるかもだけどな?
「なれば伊東藤本、クラス飛び越えて協力しなすか?」
「どんな協力すればいいの?」
「あたしたちに出来る協力?」
「お衣装クオリティアップの協力なれば、そなたたちは即戦力ね」
いいな、それ。
去年のチャイナ衣装はほぼこいつら2人がやってくれたから、手伝ってくれるなら強力な味方になりそうだよな?
「でも衣装は譲ってもらえるんでしょ?」
「そこから、さらに手を加えていくの?」
「うむり。はるタソぴったり衣装するは、きっとそなたたちの力必要ね」
「おめえらはテスト勉強で面倒見てやっただろ? クラス違っても協力しろよ」
「そういう事なら協力するっ」
「遥くんなら優勝出来るしね」
「「その代わり次の中間でも数学の面倒見てくれる?」」
「いいぞ。おめえらの勉強の面倒は見てやるから、おれらに協力しやがれ」
こんな事言ったら、きっとこの2人の事だから、数学の授業中は一切勉強しねえようになるだろうけど、今回はしょーがねえ。
なんせクラスの優勝がかかってるんだから、俺だって協力しねえとだ。
「良かったな、遥。去年の優勝スタッフに去年の優勝者やし、こら優勝間違いなしやで」
「だな。おれもなんか、今年も優勝出来そうな気がしてきた」
次の日、麻生武藤が持ってきてくれたのは、真っ白なロングヘアのヅラと、小さくてかわいい羽と、ふわふわのきれいな衣装だった。
「うわー…すげえきれいな衣装だな〜。でもやっぱおれには、ちょっとちっさくねえか?」
「これならヅラと羽だけ使うって言うのも出来るし平気だよ」
「そうだね。ヅラと羽は絶対使えるから、全然お得だよね?」
そう言ってさっそく衣装のデザイン画を伊東藤本が起こしだすから、その周りに集まって、みんなであれこれ相談してく。
ふむふむ。今回は神聖で近寄りがたい雰囲気を目指すのか? 俺にそんなの出来るかな〜?
なんか不安だけど、とにかく頑張ろう。
「今回はあんま嫌とか言わんな?」
「クラスじゃねえヤツまでいっしょに、あんな一生懸命考えてくれてるのに、我が儘ばっかは言えねえだろ」
「せやな。順調に進んでて、何よりや」
「でもやっぱ、不安だけどなー、神聖で近寄りがたい雰囲気とか言われても、出来るのか?ってさ」
「大丈夫やって。去年といっしょで、表情やら身振り手振りを工夫したらイケる」
「そうか? ………ふふふ。やっぱ弥勒が出来るって言ってくれるのが、俺は1番力になるな」
「楽しみやわ。遥の天使の姿とか、オレ、おとんとおかんに自慢してまいそうやし」
「えへ。弥勒の自慢になれるって思ったら、いくらでも頑張れそうな気がしてきたぞ?」
「そら嬉しい。オレも応援のしがいがある。当日はいっぱい写真撮らせてくれな?」
「いいぞ。写りがいいのあったら、俺にも分けて欲しいしな?」
メシ作りながら、弥勒と2人で文化祭の模擬店の話もしていく。
今年はカラフルなゼリー入りのオリジナルドリンクだし、いっぱい売れたらいいな、とかも喋ってく。
タピオカドリンクよりも、色んな色がカラフルでかわいいから、絶対女子にウケるだろうし、準備するのが楽しみだ。
「それにしてもさ、男子だけ女装っつーのは、なんか勿体なくねえか?」
「ああ、女子の男装もあってもええ気がするな。投票の集計が大変かもやけど」
「やっぱ投票の集計がネックか〜。俺は女子にも、ぜひこの大変さを知って欲しいけどなー」
「女子が男装して参加OKになったら、彼方とか相沢とか、かわいいヤツで率先して参加しそうなんがおるもんな」
「だろ? いっそのこと、あべこべコンテストっつー事にすればさ、もっと盛り上がりそうだって思うけどな」
「今回はオレ、実行委員やし、そういう意見があったっちゅうのは伝えとくわ」
「うんうん。弥勒が言ってくれたら、来年は実現してもっと盛り上がるかもしんねえからな?」
そんなわけで今日は鶏の照り焼きを焼いてくぞーっ。
弥勒にはナイショだけど、いまだにこの、フライパンに初めて何か投入する時の瞬間は、ちょっとだけドキドキ緊張なおれ。
ドキドキ。
上手く投入出来るかな? ドキドキ………うりゃっ、成功〜っ!
「ちょっと抑えながら焼くときれいな焼き色がつきやすいからな?」
「こうか? こんな感じか?」
「そうそう、そんな感じで。上手やで」
「ふっふっふー。おれもすっかりフライパンマイスターだなっ」
「油断してたらヤケドしたりして」
「む。怖え事言うなよ。そうならねえように、ちゃんと気を引き締めておくからなっ」
タレを煮詰めながら、何回も肉にかけて、しっかり味付けしてくと、照り照りうまそうな鶏の照り焼きの完成だ。うまっ。
「ほんま、最初に比べたらすごい上達したなー」
「えっへっへー。おれも頑張ったけど、先生も良かったからな?」
「くす。泣きそうになりながら、ハンバーグ焼いてたとは、思えんぐらいに頑張ったし?」
「むーっ! 恥ずい思い出をほじくり返すんじゃねえっ」
「いやいや、おれはかわいいて思ってたけどな? 炒める時はトイレ行くなとか言う遥は」
「しょーがねえだろ? 初心者だったんだし、ヤケドは怖えじゃん」
「そのクセ、代わったるっちゅうても、嫌やっちゅうて自分でやりたがるし」
「出来ねえのはダメだろ? 出来るようになるためやってるんだから」
「いや、慣れるまでは盛り付けにしとけやって、オレ何回も言うたし、説得大変やったで」
「うー、そんな大変だったか?」
「おう。大変で嬉しくてかわいい毎日て思ってた」
「む。大変だったのが嬉しくてかわいいか? 今の方が嬉しくねえ?」
「今は大変やない分、大変やなくなったのが嬉しくてカッコええ」
「えへ。かわいいじゃなくて、カッコ良くなったのか? そりゃいいな。もっとカッコ良くなんねえとだ」
「そら困るなー。これ以上カッコええ彼氏になったら、ずっとクラクラしてまいそうやし」
「えへへ。弥勒の事はずっとクラクラさせときてえから、もっとカッコ良くなるぞ」
「その分ヤキモチが増えてもええけ?」
「ええ? そこ増やすのかー?」
「そら当然、カッコ良なったらヤキモチも増えるで」
「むー。ヤキモチいっぱいで、ヤキモチばっか妬く弥勒はやだぞ?」
「あんま増やさん努力はしてるけど、やっぱカッコ良なると増えてまうなー」
「困った弥勒だなー、ほんと。でもクラクラはやっぱさせときてえ。弥勒にいっぱい好かれる方が、おれは嬉しいんだから、カッコいいは目指さねえと」
「オレからしたら、遥が困ったヤツや。オレをこんなに好きにさせて、どうするつもりやって思うし」
「ふふ。いっぱい好かれたら、いっぱい仲良く出来るだろ? 実はそれが目的なのだよ」
「お? そらええ。仲良くはオレも、いっぱいしたいで?」
「ならやっぱ、もっとカッコいいおれになんねえと、だ」
くだらねえこんな事喋っても、弥勒とだし楽しいな。
なんかバカップルみてえで、ちょっとくすぐってえ気分だけど、こういう言い合いは、楽しくてやめられそうにねえからな。
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