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この恋のために2  作者: ひなた真水


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お喋り会

「遥、今回でお喋り会は最後なんやろ? オレ、いっしょに行ってみたいんやけど」

「へえ、弥勒もお喋り会に参加するんだ?」

「いいな。楽しいから行ってみるか?」


「おう。慶太は参加させてもらってるんやろ? どんな感じなんや?」

「ん〜、そんなに堅苦しくはないって感じで、普通にお喋りを楽しむ茶話会って感じだよ」

「うむり。和やか雰囲気でとっても楽しきなりよ」




 週一回の遥の予定、土曜日の昼からある『お喋り会』には、前から興味があったし、今を逃すと遥が英会話で通わんようになるからっちゅう事で、オレもいっしょに参加させてもらう事にした。


 上手い事喋れるか自信ないけど、話を聞く限り楽しげやし、ボランティアやて思わんと参加させてもらう。


『初めまして。えーと、高嶺、弥勒、で、す。よ、ろしく、お願い、します』


 遥に教えてもらった通りに、一生懸命自己紹介してみる。こ、これで通じるけ?


「上手だぞ、弥勒。無理に手話だけで話そうとしねえでいいからな?」

「お、おう。やっぱ何年もやってるヤツはちゃうなー」


 手話で話すお喋り会やけど、完全に聞こえん人っちゅうのはおらんらしいから、とりあえず声も出しながら喋ってみる。

 遥に分からん言葉を教えてもらいながら、辿々しくやけど手話使って、色々聞きたい事を聞いていく。


「むひょ。田島さん、またご旅行行ってきたなりか? よろしねー」

「だったら、また、お土産、見せて、くれませんか?」

「おれも田島さんの写真見てえ。また素敵なの撮ってきたんだろ?」

『どうぞ』

「へえ、こ、これ…が、お土産? しゃ、写真、なんや? す、素敵な、写真…? 写真やなっ」


 オレは緊張してるのもあって、遥が手話してくれるのに合わせて喋るんで、もう精一杯っちゅう感じやけど、遥と彼方はものすごい手慣れてるから、話しながら手話でもペラペラ喋るし、慶太も予習してきてるせいかそこそこ出来よる。


 これはちょっと悔しいかもしれん。オレも遥ほどとは言わんけど、もっとペラペラに喋りたい〜!


「弥勒、田島さんはな、聞こえるけど話せねえ人だから、色々気楽に教えてもらえるぞ?」

「え、そうなん?」

『そうですよ。気楽に話しかけてみてください』


 そこからオレは、田島さんとマンツーマンっちゅう感じで、手話教えてもらいながら色々喋っていく。


「へえ、遥のおかんが最初にここに2人を連れてきてから、そんなになるんや?」

『ええ。2人とも、わたしの写真をいいって言ってくれて、すごく仲良くなってねえ』


 元々、遥のおかんがママ友に誘われて来たのが最初で、遥やらが来だしたのは5年生頃やったんか。

 かわいかったやろなー、遥。


 ははっ。小さい友だちや思てたのに、いつのまにか大きなったってか? 彼方はまだ小さいやんけ。


 オレが緊張でカチカチやったんが徐々に慣れてくると、田島さんは今度はこんな大きな友だちを連れてきてくれたって笑ってくれる。


 オレ、こんな一生懸命話すんて、初めてかもしれんなー。

 ドイツからフランスに行った時は、元々ジジイとババアがいたからそこそこ喋れるヤツやったし。


 いや、そういえば、中国に最初渡ったばっかりの時は、こんな感じやったかもしれん。

 相手が言うてる事聞き取ろうとして、英語と北京語、混ぜこぜにしながら、必死こいてこうやって喋ってたな。


『弥勒くんは、お喋りが上手ですねぇ』

「そうけ? せやったら、それは、親が、オレを、外国、連れ、まわした、おかげ、かも、しれん」


「弥勒の親はな、なんと12ヶ国語も喋れるんだぞ? すげえだろー」

『12も言葉が? それはすごい。わたしは1つきりなのに、すごいねぇ』


「しかし、田島さんの言葉は、どこの国でも通じる言葉でなすか。素敵なり〜」

「ほんと、素敵な、言葉だ、と思い、ますよ、この手話、って、言葉は」


 5人中3人が手話で話す人で、残りが筆談で手話は勉強中って人、そんでスタッフは3人と、オレら参加者が4人。

 市が運営してるセンターの談話室借りて開催されるお喋り会は、こじんまりしててアットホームな雰囲気で、めっちゃ和やかや。


 慣れてくると、色々話せるのがものすご楽しなってきて、時間なんかあっという間に過ぎてしもた。


 最後に、借りた急須やら湯呑みを、みんなで洗って片付ける頃には、すっかり打ち解けられて、和やかな雰囲気のうちにお喋り会は終わった。




「今日はめっちゃ楽しかったわ」

「そっか? それなら良かった。おれも楽しかったぞ、弥勒」


「やっぱ緊張はめちゃくちゃしたけどな?」

「む。緊張してたのか? いい人ばっかだっつったのに」


「それでも緊張するって。上手く伝わるやろか?って思うからなー」

「でもみんな読み取るのには慣れてただろ?」


「おう。オレの拙い喋り方でも、なんとか伝わってたからな。遥といっしょに参加出来て良かったわ」

「だったら、これからも時間に余裕があったら、参加させてもらいなよ」


「そうする。ほんま、もっと早くに参加すりゃ良かった」

「ふふ。俺も弥勒をちゃんと誘えば良かったな?」


「ほんまやで。あんな楽しいの、なんで誘ってくれへんかってん?」

「いや、偽善者だって、バカにされた事があったからさ」


 友だちを誘おうとしてみたら、そんな事言われてケンカになった事があったから、誘いにくかったんやって遥は苦笑しながら言う。

 ったく誰やそんな酷いこと言うヤツは。………琢磨ではないやろうし、オレの知ってるヤツけ?


「ええっ! 酷いこと言うヤツもおるんやなー。誰やねんそれっ!」

「それは弥勒の知らねえヤツだけどさ」


 お喋り会に参加してるっちゅうのが、成績についたから、それ目当てって思われるのもしゃーないねんって、困ったような顔をする。


 たしかに、ボランティアっちゅう名目での集まりやし、参加したら学校では評価が着くけど、酷いこと言うヤツもおるもんや。


「あー… 参加したら、委員会活動とか、生徒会活動と、扱いはいっしょやしな」

「それで…おれ自身はそれでも参加してえって思ってたけど、弥勒がどうかは分かんねえって思って」


「オレはそんな事に囚われて、楽しい時間逃すん嫌やけどな」

「そんな考えしてくれる弥勒で良かったよ。おれ、弥勒を好きになれて良かった」


 遥の楽しいて思う事に参加出来て良かった。遥の楽しいがオレも楽しいで良かった。

 手話で喋るんは偽善やとか思うような、そんな嫌なヤツやない自分で良かったって心から思うわ。


「いやでもマジで手話は楽しいな。久々にオレ、あんな必死こいて喋ったで」

「弥勒、すげえ積極的だったもんな〜。メキメキ上達してくし、おれも田島さんもビックリだったぞ」


「オレ国が変わるとあんな感じやったし、あのクソ親どもに連れ回されたんも、無駄やなかったみたいやな?」

「言ってたな、中国の時だっけ?」


「おう。英語と北京語混ぜて、大人の中で必死こいてのコミュニケーションやったしな」

「そん時ってさ、英語ですらあんまだったんじゃなかったっけ?」


「せやねん。ドイツ、フランスで中国やったから、かなりあやふやな英語やった」

「たまんねえなー。大変だっただろ?」


「ほんま大変やったわ。今回と違ってあんま楽しいもなかったし」

「でも、その経験が生きたから、今日きっと楽しかったんだよ。禍福は糾える縄の如しってな?」

「せやったら、時間のある時はいっぱい参加させてもらわんとやな。きれいな写真、また見せてもらいたいし」


 田島さんの撮った一面のコスモス畑の写真とか彼岸花の写真とか、それはそれはきれいやったし、撮影秘話も面白かったからなー。


 彼岸花って、葉っぱのついてへん茎がニョキニョキ伸びてきて花を咲かせるとか、オレ初めて知ったし。

 遥は当分英会話があるから通えんし、オレでええなら代わりに参加させてもらお。

 お喋り会。土曜日の午後に楽しみが1個増えたわ。

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