文化祭準備
9月に入って1回目のLHR前の昼休みに、俺は前年度の反省を活かし、最後の抵抗を頑張っていた。
ここでしくじるとまた、俺が女装をやるハメになりそうだからだ。
「えぇー? 俺やだー、今年こそ女装は滝がやれよー」
「女装はやっぱり似合う人の方がいいって。3年のあの人に勝てるのは遥だけだよ」
「うむり。去年の実力を逃すは惜しす。はるタソがやるよろし」
「むー。俺、頑張って滝に似合うって思う女装、色々考えてたのに〜?」
「へえ? 遥が思う、おれに似合いそうな女装っていうのは、どんな感じになるのかな?」
「俺は滝だったら、その長え髪と浅黒い肌を活かしてさ、踊り子とかさせたらいいと思ってたんだよ」
エキゾチックな長身美女の踊り子なら、タキだって絶対似合うはずだし、このプレゼンならみんなの心も動くはずだって、俺超絶必死。
彼方、滝の妖艶な踊り子美女の女装だぞ? サロメみてえで見てみたくねえか? 見てえだろ? 女装は滝がいいだろ?
「むむ? よろしアイデアなり。それ、はるタソでも似合うでなすか?」
「いいね、遥くんに絶対似合うよそれっ」
「間違いないよ、遥くんに似合うって!」
「だよね? アイデア自体はいいと思うよ、遥。それで遥がやってみてくれない?」
「えぇっ!?」
「おー、今年はエキゾチックな踊り子なんか。楽しみやな〜」
「いやいや待て待て、弥勒。まだ俺がやるって決まってねえだろ?」
「すでにクラスの大半が遥に期待してるから、諦めてやるって言うた方がええて思うけどなー」
「待て。まだLHRまで時間はあるだろ? もうちょい抵抗させろっ」
「おれは遥にやらせるなら、真っ白だし、色を活かして、天使とかが似合うって思ってたけどね?」
「む。天使って性別がねえんじゃなかったっけ?」
「だからだよ。あえて中世的にして女装すれば、スラっと美しいのが出来そうでしょ?」
「む〜……中世的にするのか? スラっとで?」
「スラっと美しい中世的なんやれば、遥の心の負担も少ないし、ええんとちゃうけ?」
「む〜…………」
スラっと中世的な美しい天使か…………それなら俺でも? いやいや、また俺が女装するっつーのは………
けっきょく、俺がその意見に押されて、去年に引き続き、またまた男子女装ミスコンに出場することが決まってしまった。
「今年はオレも出店やなくて、女装ミスコン手伝うから、気合い入れろって」
「…………むー。むーだけど、頑張るよ」
「あたしたちも超頑張るから」
「メイクとか超頑張るからね」
「かなタソ、さっそく強力助っ人交渉人するなりっ!!」
「彼方、助っ人って誰だ?」
「当然プロに近す者、相沢にメイクの仕方聞かねばならなすであろ?」
「アイツなら去年の実績もあるし、遥への恩もあるヤツや。頼んでみる価値はあるな」
「そであろ? かなタソ、行って聞くしてみてやるなりねっ!!」
「えー? 相沢はもう、俺とクラス違うんだから、あんま無理言ってやんなよ?」
そんなわけで、LHRの後に相沢と交渉してみた結果、なんと快く引き受けてくれた。
相沢のクラスは、どうせ俺に負けるからと、盛り上がりに欠けてるから、俺のメイクをやれるなら、ぜひやりてえんだそうだ。
「相沢、ほんとにいいのか? みんなにクラスの裏切り者って言われねえ?」
「平気だよー。うちのクラス、全然盛り上がってないから、面白くなかったとこなのっ。どうせ貢献するなら、優勝に貢献したいし」
「頑張れよ? 相沢。今回は遥、奇跡を起こす天使さまやしな?」
「任せといてっ! 遥ならメイクすればいくらでもきれいになるっしょっ!」
「遥くんに着せるなら、こっちがいいかな?」
「羽はやっぱこっちでしょ、遥くんだしね?」
「むひょひょ。今年はいっしょ優勝狙えるが嬉しなりねー、タキ」
「そうだね、彼方。出店もいっしょに頑張ろうね?」
「今回も練習が大変そうやな、遥」
夕暮れ時、メシ作りながら上がる話題も、やっぱり文化祭の事になる。
「ほんと、毎年大変だよ〜。俺が奇跡を起こす天使さまとか、なれるかなー?って感じだしさ」
「遥なら絶対やれるってみんな思ったから推したんや。絶対大丈夫やって」
「そうか? ならいっぱい頑張るけど、去年とはまた違う雰囲気だしさ、ちゃんとやれるか、自信ねえよ」
「間違いないって。おまえのその魅力やし、絶対優勝や」
「ま、弥勒も他のヤツらも頑張るっつってんのに、俺が頑張らねえとかは絶対ねえしな?」
今日は秋だからっつー事で、きのこたっぷりのホイル焼きと、さつまいものサラダに秋なすの味噌汁で、いただきますだ。
さつまいもって実は、ジャパニーズスイートポテトとかでアメリカではあんま売ってねえらしくて、弥勒はうめえって大絶賛してる。
野菜とか魚は日本とアメリカじゃ売ってる物がずいぶん違うらしいけど、まさかさつまいもが売ってねえとは、俺びっくりだ。
「うまっ。秋だなー、弥勒っ」
「せやな。昼間はまだ暑いけど、だんだん秋めいてきたわ」
「でも、来週からは1日いっしょに食える時間が減るの、寂しいな?」
「寂しいけど、しゃーない。遥の英会話が始まるんやし」
そうなんだよな。
来週からは水曜日と土曜日に英会話教室が入るから、今までみてえに平日毎日一緒に晩メシ食えなくなる。
受験の準備だからしょーがねえけど、1日でも弥勒と一緒に晩メシ食う時間が減るのは、俺はやっぱ寂しい。
「うん… 弥勒と英語で喋って慣れたつもりだけど、本格的に通わねえわけいかねえからな」
「分かってる。応援してるから、そっちも頑張れよ?」
「超絶頑張る。弥勒が応援してくれるから、百人力で頑張れるからなっ」
「楽しみやわ、遥といっしょに留学すんの」
「俺もすげえ楽しみだ。弥勒は勉強の方、大丈夫か?」
「着々とやってるで。オレもニューヨークからボストンやし、やらんのは不安やしな」
「そか。俺もそれ、応援してるから、頑張れよ?」
弥勒とずっといっしょに生きる約束したとはいえ、いっしょにメシ食えねえのはすげえ寂しいけど、弥勒が応援してくれるんだ。
俺もいっぱい頑張って、さっさと、これで大丈夫っつーぐれえ、英語の勉強やんねえとだ。
雨降りじゃねえ限り、帰る時はいつも弥勒がバイクで送ってってくれるから、弥勒はヘルメットを2個も持ってるのだ。
買ったんじゃなくて、クリスマスのプレゼントだったっつー事らしいけど、俺用のヘルメットがあるのは嬉しい限りだ。
「ちゃんと捕まっとけよ?」
「うん」
弥勒のバイクの後ろに乗って、後ろからぎゅっと抱きつくの、すげえドキドキすんな〜。
このバイク、元は弥勒のおじさんのだけど、クルーザータイプ、アメリカンで趣味が良くて弥勒にすげえ似合ってるし、すげえカッコいい。
弥勒、好きだぞ。大好きだって思いながら、今日も俺は後ろに乗っけてもらって、家に帰る。
帰ったらまた、弥勒に励まされた分、いっぱい勉強頑張ろう。ついでに文化祭の準備もいっぱい頑張るぞ!!
もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ




