花火
民宿五木梨のバイトのために、今年も弥勒のばあさんちにお世話になりにやってきたぞ。
今回ちょっと早めの到着なのは、ばあさんちにある納屋の整理と掃除もするからだ。
ばあさんちついたら、さっそく納屋に向かって、さあさあ、掃除をおっ始めるぞ!!
「うは。弥勒、みかんの干からびたの発見したっ」
「すごいな。丸ごとのクセに干からびるとか、相当やでこれ」
納屋だから当然いらねえ物があるだろうと思ってたけど、出るわ出るわ。いらねえ物がてんこ盛りだっ!!
しかも見た事ねえぐれえ古くて、なんで取っておいたのか分かんねえ物もいっぱいだ!
「ババア、なんでこんなもん取っておいてん?」
「ごめんねぇ、それはいずれゴミにとは思てはいたんよ?」
「ばあさん、俺、火鉢なんか初めて見たぞ?」
「火鉢は置いてくれんね? 今はもう、売ってるとこもないし…」
どうやら弥勒のばあさんって、物をなんでも勿体ねえって取っておく習性があるらしいな。
戦後生まれのばあさんだから、物は簡単に捨てられねえっつー事らしいけど、納屋いっぱいはすげえよ。
「ババア、この時代遅れで壊れたテレビは捨てるからな?」
「壊れたのは捨てねえとだぞ、ばあさん」
「テレビは修理したら誰ぞ欲しがらんかねぇ?」
「誰も欲しがらんって。そもそもこんな古いテレビ、修理の部品がないやろ」
「ブラウン管テレビとかまで取ってあるとは、ほんとすげえな」
たしかにブラウン管テレビなら、レトロが好きなヤツは欲しがる可能性もあるけど、壊れてるからゴミだな。
羽の折れた扇風機も、ゴミ吸わなくなった掃除機も!
なんだこれ? なんの部品だ? よく分かんねえな? 古くて見たことねえやつだ。
これは? 自転車のサドル?? なんでこんな物が? 絶対いらねーだろ!!
壊れたレーザーディスク? デケえスピーカー? まだあるのか? ビデオデッキもあるぞ?
とにかく今はもういらねえだろっつー物を分けてって、大型ゴミのシールを貼ってく。
おかげで納屋の中の荷物がすげえ減って、ゴミでいっぱいだったのが、ピカピカの納屋になった。
「さっぱりしてぇ、2人ともご苦労さんご苦労さん」
「ばあさん、今度からゴミは納屋に突っ込んじゃダメだぞ?」
「まさかこんなゴミばっか溜め込んでるとはなー」
「こういう事には、おじいさんが頼りにならんから、ごめんねぇ?」
ばあさんにお駄賃の代わりの花火セットをもらったから、晩メシ食ったら浜行って弥勒と花火だな。
今日は弥勒のじいさんとお揃いの魚の煮付けでうまーっ!
「弥勒、バケツOKだぞ」
「ほな火ぃ付けていこか。今年2回目の花火やで〜」
シュワシュワパチパチ、暗い浜辺で弥勒と2人、花火を楽しむ。
海の波の音と花火の光と火薬の匂いが、すげえ夏を感じさせてくれるな。
これも弥勒のばあさんちを出たら、5分も行かねえとこに浜があるっつー立地のおかげだ。
「えへ〜、きれいだなー、弥勒。さすが夏っ」
「おう。めっちゃきれいや。頑張った甲斐あるきれいさや」
海辺だから真っ暗で、街中でやる花火より、ずっとずっときれいに見えるな。
なんて考えながら弥勒を見上げて笑って言う。
「俺さ、今年は肝試しとセットの花火が思い出だったけど、これで上書き出来るぞ」
「あれはあれで悪なかったけどな〜。彼方にネズミ花火が吸い寄せられて」
「悪くねえといいじゃ大違いじゃん。こっちのがいい花火だ」
たしかにあれも彼方がオモシロな花火だったけど、どっちが素敵かっつったら、絶対今日の花火の方が素敵だ。
「たしかに、ええ花火はこっちやな。なんせ遥と2人の花火やし」
「しかも海辺で波の音聞きながらだぞ? なかなか出来ねえ体験だろ?」
「せやな。来年は受験生でこっち来るん無理やし、その次からは留学やしなー」
「そう考えたら、もっとこの花火がきれいな物に思えてきたぞ」
「オレもや。高2の夏は1回きりやし、そうなるとやっぱ、線香花火には束で火ぃ付けるんもやろっ」
「それはやんねえとなっ! 線香花火職人に喧嘩売ってやろうぜっ」
そう言って弥勒と2人で、線香花火職人に喧嘩売るように、束で火をつけて遊ぶのもすげえ楽しい。
「これ、線香花火の火薬がくっついて、一塊りになるんがおもろいな」
「だろ? 他の花火じゃこうはいかねえから、線香花火はこれもやんねえとなんだよ」
「なるほど、ちゃんと他の花火と違う遊びなんや」
「当然だ。彼方とこれ発見した時はすげえって思ったしなっ」
「最初はなんて無駄遣いをって思ったけど、そういう発見があると、これも楽しいわ」
最後の1本まで花火やって、見上げるとすげえきれいな星空だ。
家のまわりじゃ、こんなきれいに星空なんか見られねえから、俺超感動。
ここなら夏の大三角もきれいに見えるだろうなー…なんてうっとり眺める。
どこがデネブで、アルタイルでベガなんだろう?
いつか聞いた歌みたいに、夏の大三角を探しながら弥勒と寄り添うのが嬉しい気分だ。
「星がきれいだな、弥勒」
「おう。今日は月がないから、余計にきれいやわ」
「弥勒、好きだぞ」
「オレも、めっちゃ愛してるで、遥」
ちゅ
えへ、えへ〜。キス、しちった。えへへ、弥勒とキス、ようやく出来た。
誰もいねえ夜の海辺で花火した後にキスとか、ロマンチックで乙女チックすぎかよってぐらいだし、いいよな?
あは、弥勒がビックリした顔でこっち見てる。
「えへ。ダメだったか?」
「全然。めっちゃ嬉しいで」
「ごめんな。俺、まだ全部は無理だけど……」
「かまへん。ゆっくりでええから、オレらのペースでやってこ」
「まだまだいっぱい待たせるだろうけど、いいか?」
「遥はちゃんと考えてくれるから、待つぐらい全然かまへんで。付き合う前もそうやったやろ?」
「うん。考えてはいるぞ。怖くてまだ上手く想像つかねえけど」
「どうしても無理やったら、無理にせんでもええねんしな」
「そゆわけいかねえだろ。結婚するんだからさ」
「結婚しても身体の事情でせんカップルもおるで?」
「身体の事情?」
「心臓が悪いとかやと、激しく動くから無理やんけ」
「む。なるほど…たしかにそりゃ無理だな」
走るのがダメなぐれえ心臓悪いヤツと結婚したら、そん時は諦めねえとだし、身体が抱き合うのに向いてねえ男同士は、無理にすることねえのか?
「だから無理にとは思ってへん。スッキリするだけやったら方法はあるし」
「方法ってどんなのがあるんだ?」
「擦り合いとか」
俺、弥勒の身体なら全然平気っつーか、むしろぎゅってしたりはしてえ方だし、それならOKだ。
そっか、抱き合うっつっても、そういう方法なら、お互いの負担にもならねえよな?
「それなら俺でも出来そうだ」
「そこまでなら出来そうか。そら嬉しい」
「これからも、ちゅってしたりぎゅってしたりはしてえけど、いいか?」
「してくれ。隙見てしてくれ。オレもするし」
「弥勒が隙見てするなら、俺まで隙見てしてたら、すげえいっぱいになるぞ?」
「いっぱいがええし、いっぱい隙見てしてくれや」
ちゅ
「あっ、隙見せてねえのにされたっ」
「今はせんとやろ。こんなきれいな星空なんやから」
「それもそっか。でもあんま遅いとばあさんが心配するから、そろそろ帰らねえとな」
「せやな。名残惜しいけど、そろそろ帰ろか」
2人で花火の燃えカスを片付けて、並んでばあさんちまでの短い距離を歩く。
えへ、キス出来た。キスしちゃったぞ。弥勒とキスだっ!!
まだ最後までは大丈夫じゃねえけど、なんとかキスまできたぞ。
俺のは相変わらず亀みてえにのろい気持ちだけど、弥勒が待ってくれて、いっしょに頑張ってくれるなら、きっと大丈夫だ。
一歩ずつ一歩ずつ、2人でゆっくり歩いてければいいよな?
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