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この恋のために2  作者: ひなた真水


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19/38

琢磨の応援

「遅れてごめーんっ。2人とも!」

「むー、相沢。誘っておいて遅れるとか、むーだぞ?」

「遥、時間ないからとにかく行こや」


 今日はスタジアムが近いっちゅうことで、琢磨の応援にオレと遥と…相沢もいっしょに行くとこや。

 成城高校の雨宮推しな相沢が誘ってきたんやけど、琢磨を応援するっちゅうのを遥が無下にするわけもなく、3人いっしょの応援っちゅうことや。


「ほんとごめんっ。爪成城のユニカラーにしてたらさ〜」

「爪やってて遅れたのか? いくら琢磨の視力が良くても爪は見えねえと思うぞ?」


「それでも手は抜きたくないじゃん? 一瞬でも目に留まる可能性考えたら」

「琢磨は遥のこと絶対見つけるらしいし、それもしゃーないか。あ、そこが空いてるで」


 スタジアムの席の空きを見つけて、とにかく座って落ち着いてみる。

 良かった、試合開始にはなんとか間に合ったな。

 遅れでもしたら、琢磨にあとで何言われるか分かったもんやないし、とにかく間に合って良かった。


「あ〜、ドキドキする〜っ! 今日も勝てますようにっ!!」

「俺はわくわくだ。琢磨、すげえ気合い入れてたから、絶対いいプレイ見られるだろうし」

「楽しみやな、期待が止まらんわ」


 試合開始から8分、さっそく成城のMFが1点先取しての激しい攻防に、3人で声張り上げて応援する。

 前半終了間際に琢磨が気持ち良くゴールを止めた。


「うわー!! やったぞ、琢磨っ! 今のはすげえって俺でも分かるぞ!!」

「超気持ちいい止め方だったよね!? あーもー!! 雨宮くんやっぱ最高っ!」

「ええ決め方や、さすがやな〜っ! カッコええで琢磨!!」


 いくらまだ恋敵やいうても、遥の親友で幼馴染の活躍は応援せずにはおれんから、オレもこの時だけは普段を忘れて精一杯応援する。


 もちろん、熱中症で倒れでもしたら大変やし、遥に水分が不足してへんかは、気遣いながらやけどな。


「弥勒、やっぱすげえな、琢磨って! こういう時は俺の視力がもっと良かったらって思うぞ」

「それでも遥の応援は伝わってるって!! 画面で見るんとは感じる気迫がちゃうし!」

「頑張れ成城!! 雨宮くん頑張れ〜〜っ! このまま引き離せ〜〜っ!!」


 実際琢磨のプレイは輝きまくりで、仲間への指示も的確で、いつもより気合い入れてるって伝わってくるから、オレも遥も相沢も、後半も夢中になって応援した。



 試合の結果は1―0の無失点で成城の勝利に終わって、琢磨はまた一つ優勝に向かって駒を進めた。



「遥、弥勒くん、今日はほんと最高だった! いっしょに行ってくれて、ありがとね!!」

「俺も楽しかったぞ、相沢。琢磨いっぱい応援してくれて、さんきゅな」

「ええ試合やったわ〜。やっぱ生やと感じる気迫がちゃうってオレも感じたし」



 オレらは口々に試合の感想を言い合いして、駅で相沢と別れた。

 さて、オレらは今日も買い物して、うまい晩メシ作って食うで、遥。


「あ、俺今日はサッカーだったから、なんかパスタ食いてえけどかまわねえ?」

「サッカーの応援でイタリアのパスタか。ほな魚のムニエルとパスタとかにして、作ってみるけ?」

「ムニエルいいな。俺はパスタは初挑戦だし、頑張るぞっ」


 パスタはクリームソースに決めて、さっそく材料を準備していく。


「遥、パスタは茹で加減が命やし、素早くソースと絡めるんやで?」

「む。俺の責任重大だな? ささっとやるぞ! さささっとな」


 たっぷりの湯でパスタ茹でてる間に、玉ねぎと鶏肉炒めて、作り置きのベシャメルソースで、遥にパスタソースを作らせて、オレはムニエルの準備して、ついでにサラダも作る。


「弥勒、麺の茹ではこんなものか?」

「お、ちょうどええ感じや。ソース絡めて仕上げしてくれっけ?」

「がってんだ!」


 遥のちょっと荒い麺の絡め方のせいで、コンロにソースが飛び散ったけど、後で片付ける事にして気にせず食うで〜。


「うまっ! うめえっ! たまにはパスタもいいなっ」

「おう。パスタはおかずの兼用なるから、品数少なくても満足出来るし」


「それにしても、今日の琢磨は気合い入ってたよな? すげえいい試合だったぞ」

「そら、遥が観にくるて分かってるのに、気合い入れんわけないやんけ」


「俺が観に行くだけであんな気合い入れるなら、決勝も生で観てえけどなー……」

「さすがにちょっと遠いし無理やろ〜。あのスタジアムは遠すぎや」


「だよな。はー、残念だー」

「せめて遥んちの大画面でいっしょに応援しよや」


「俺んちで応援でいいか?」

「マンションはやっぱサッカー観戦に向かんやろ? 声とかあんま出せへんし」


「だったら弥勒は俺んちでメシ食ってけよ。母さんに言っとくからさ」

「おう。遥のおかんのメシ食えるんはめっちゃ嬉しいし、頼むわ」


「俺んちでなら、ちょっとぐれえ声出しても許されるし、俺んちで琢磨の決戦は観戦な」


 ◆


 今日は遥がおれの試合を観に来てくれてたから、メッセを見返すと頬が緩む。


『琢磨、今日は最高の試合だったぞ』


 極悪関西の反対側にいた、ゴーゴン女子が遥といっしょに応援のヤツだったのかな?

 彼方の情報によると、ファッション誌Schönの読モで、前に遥に告ったヤツらしいけど、そっちのが遥には断然お似合いじゃんっ。


 なんであんなかわいい女子フって、熊五郎にいくかな〜………まだおれん中じゃそれは納得出来ない。

 せめて相手が女子なら、まだもうちょっと素直に応援する気になるけど、あいつじゃな〜……


 それにしても今日の試合の時も、調子は鬼良かったな。

 遥が来る時はいつもそうだけど、メンタルのせいでか、テクやフィジカルまで調子が上がるんだよな。


 やってきたことを出し切るって感じで出来る。

 あのステッピングが出来たから、今日はゴールが止められたって思うからさ。


 次もまた同じようにっていうのが、なかなか出来ねえけど、あの時はおれ、自分で最高だったって思うし。

 もっといつでもあの状態が引き出せるように、普段のポテンシャルを上げないと。


「先輩、今日はなんかほんと、神がかって最高っしたね」

「まあな。今日はなんかほんとおれ、勝利の神がついてたって感じだよ」

「あはは。いいっすねー、今日の先輩が言うとほんとに聞こえるっすよ、それ」


「おーいおまえら、寝る前のミーティング、始めんぞー?」

「ウィーっす」


 遥がまた観に来ようって思ってくれるように、もっと自分を磨こう。

 テクニックもフィジカルもメンタルも強くなって、遥が良かったって思う試合が出来るようにならねえと。

 

 ◆

 

「やっぱデケえと見やすいな!」

「おう。ババアにねだった甲斐があるわ」


 遥のために去年のクリスマス、フランスのババアに外部モニタのデカいのをねだったんやけど、これがめっちゃ便利。


 普段でも2画面あると、動画流しながら作業したり出来るし、琢磨の応援もずいぶん楽になった。

 ま、あいつはキーパーやし、どこにいるか一目瞭然なんやけどな。


「うわー、選手たち出てきたぞ、弥勒」

「あれが琢磨やな。気張れよ!」


 キーパーは1人だけ違うユニフォーム着てるから、視力の悪い遥でも間違えたりはせん。

 そのためにポジションを、MFからキーパーに転向したっちゅうねんから、琢磨も気合い入ったヤツや。

 試合の応援する度に、負けてられへん、そうオレも気合いが入る。


「ボール止めたぞ! 弥勒、カッコいいな、琢磨!」

「やな。やっぱ準決勝だけあって、相手チームもレベル高いわ。頑張れよ〜!」


 喋って感じたように、琢磨は頭がかなり切れるらしく、とにかく指示が的確や。

 オレに適当なあだ名を付けるみたいに、相手が嫌がるような作戦を、きっちり回していきよる。


「いいぞ琢磨! 思いっきり投げろっ!」


 しかも遥が練習の鬼て言う通り、フィジカルは頭一つ飛び抜けて高いし、テクも安定してて上手い。

 全く、エライヤツが恋敵になってしもた。


 最初それを彼方に聞いた時はものすご焦ったもんな〜…




「うひょ。相沢程度であたふたしておったら、タクマ勝つはむつかしきよ?」


 オレがまだ相沢の事に頭悩ませてた時、彼方が面白げに笑いながら、ある日そんな事を教えてくれた。


「たくま? 誰やねんそれ」

「はるタソ幼馴染で、はるタソ激ラブくんなり。12年越しの気持ちに勝てるなりか?」


「12年!? マジか…どうやったら勝てるて思う?」

「それは知らなすよ。さすがにかなタソ、タキ幼馴染ミロクとはるタソ幼馴染タクマでは中立なりからの」


 どうやら彼方の彼氏が慶太やっちゅうおかげで、オレは有利になる情報をもらえてるらしいけど、それもここまでっちゅう事か。


「ほな、せめてどういうヤツか教えてくれ。オレだけで上手くいくように考えるし」

「まず、タクマお家は我が家の3軒右隣なり」

「なるほど、物理的にかなり近くに住んどるっちゅう事やな?」


 物理的に近いっちゅうのは、そこそこデカいファクターやな。

 遥に琢磨が会いやすいっちゅうファクターや。

 オレでは会うことが邪魔がしにくいっちゅうわけか。


「次に琢磨はサッカー小僧で、サッカー上手すなりね」

「おまえが上手いっちゅう事は、相当なんやな?」


「中学の時は無名の我が校で、部長さんなってから、全国のベスト4取ったなり」

「ほんま相当やな……しかもリーダーシップまであると。ポジションは?」


「はるタソが見つけられるよにと、当然キーパーなりね」

「あー、他のポジションやと、試合中どこいるか分からんなるもんな」


「うむり。将来有望のMFやめてキーパーなりからの」

「学校の成績はどやってん?」


「そこそこだったなりね。推薦なすだったら我が高校来ていたであろうし、上位10位にはおったであろう」

「勉強も結構出来るんや?」


「はるタソ親友なりよ? はるタソに恥ずかしき思われる、タクマ最悪ではなすか」

「それもせやな。そんなヤツが恋敵か〜……」


「ま、ミロクと違って女子人気は低しだったなりがの」

「そうなんけ? サッカー出来る頭ええヤツいうたら、普通モテるやろ」


「はるタソに女子近づくなすして、嫌われるいっぱいしてたなり。かなタソも鼻たれ言われたなり。ぷんす」

「あー、わざと嫌われて、遥に近づく女子を減らしてく作戦やったんや?」

「うむり。学校では鉄壁の守りを敷いてたなりからの。あれでは女子誰も近づけぬ」


 鉄壁のキーパーか。通りでアイドルかっちゅうぐらい人気あったくせに、誰からも告られた事がないわけや。


 ま、水面下で女子同士の足の引っ張り合いもあったらしいけど……酷い話やけど、見つかったラブレターは女子同士で破棄しあったりとかや。


 そんだけ鉄壁に守られてたからまぁ、後で知った上履き盗むヤツが出たり、イタ電祭りにあったり、自転車で轢かれたりと、遥も色々されたんやろうしな。


「オレ、勝てるやろか? いや、気持ちで負けてるとは思わんけど」

「頑張るよろし。将来のJリーガーなりから、手強すであるがの」


 あの話を聞いた後、オレ必死こいて勉強したけど、慶太に学年1位取られたし、めっちゃ悔しかったっけ。


 あいつも彼方がいるから、そう簡単に負けるわけいかんっちゅうのは分かるけど、そこはちょっとぐらい譲ってくれやって思ったしな。

 今でも慶太とは学年1位の座を、取ったり取られたりしてるけど。


 慶太は受験日に彼方に一目惚れして、彼方と同じ高校がええっちゅうて、親に大学はええとこ行く交換条件でこの公立校に来たらしいし、成績落とすわけにいかんからな。


 今じゃすっかり慶太の両親は彼方を気に入って、彼方は慶太といっしょにホテル業手伝うぐらいやけど、彼方のおとんには挨拶は仕事始めてからってストップかけられたから、まだまだ気も抜けんのやろ。

 それはオレも同じやけど。



「うはーっ! 弥勒、止めた! 琢磨が止めたぞ!!」

「琢磨はフェイントの読みがほんますごいなっ」


「む? そなのか?」

「せやで。フェイントに引っかからへんから、正確にボールの来る方向が分かるんやし」

「なるほど! やっぱ琢磨すげえな!!」


 相変わらず、サッカーの事があんま分かってへん遥に解説を入れながら、2人して一生懸命応援する。


 でもやっぱマンションは、サッカーの試合観戦に向かんなー。スタジアムと違って騒げんし。

 アメリカ行く時に借りる物件は、ちゃんとそのあたりも考慮して借りんとや。

 多少周りが騒がしい環境でええから、もうちょっと声とか出して応援出来る方がええしな。



 危なげなく勝ち抜いた成城は、明日が決勝戦か。

 明日勝てば去年逃した優勝やし、オレらもいっぱい食うてスタミナ付けて、いっぱい応援せんとな。


「弥勒、今日メシは何作って食う?」

「ガッツリいきたい気分やし、豚キムチとかどや?」


「いいな。ピリ辛豚キムチでガッツリ食おう。あでも、味噌汁も飲みてえけどかまわねえ?」

「かまへんで。味噌汁やったら豆腐と玉ねぎとかどうや?」

「合いそうだから、それでいこう。んじゃ買い物行くか」


 最近すっかり手際良くなった遥といっしょに買い物へ行く。


「やった。ちょうど豚コマが安いやんけ」

「ほんとだ。100g98円でお得だなっ。俺、だんだん買い物も分かってきてるだろ?」


「ほんま色々成長してるわ。オレ台所用洗剤の特売は気がつかんかったし」

「えへ〜。2人で工夫して、やりくり上手にもなんねえとだ」


「せやな。結婚したらこの先ずっといっしょに暮らすんやから、やりくり上手は必須技能やもんな」

「でも良かったのか? 明日のメシ、1品持って来るなんてさ」


「おう。ちょうどええ機会やし、オレ、遥がいつもどんな料理食うてるか見せたかったからな」

「なるほど、弥勒の実力を見せる、いい機会なんだな? だったら気にしねえでおく」


「言うても、そのまま冷やして食える簡単な蒸し鶏やけど」

「弥勒の蒸し鶏はマジうめえから、俺大好きだし、みんな絶対喜ぶ事間違いナシだ」


「遥がそう言うてくれるんは自信になるわ。楽しみやな〜」

「滝も母さんにコツを教えてもらった、ラタトュ作って来るっつーから、俺も楽しみだ」


「ラタトュも冷やしてもあったかくしても食えるから、持ち込むのにちょうどええメニューやしな」

「ウチは外食少ねえ家だからさ、母さんてば他所の味に興味津々なんだよ」


「オレんちはたぶん、そこそこ外食も行く家やな。おかんもおとんも飲みに行くん好きやし」

「仕事が忙しいと、どうしてもそうなるんだろうな」


「飲みはええんやけど、メシ用意してるのに帰れんて連絡が来る時は参るで?」

「むー。メシ用意してる時ぐれえはちゃんと帰って欲しいよな。そういう時は文句だ」


「でも、おかんは文句言うと手が出るヤツやしなー」

「そこはウィルジニーたちが反省しねえとだろ。せっかく息子が作って待ってるのに。むー」


「ま、でも、そのおかげでメシのアレンジはいっぱい覚えたけど」

「? なんでアレンジ覚えるんだ?」


「次の日も全くおんなじ味食うとか嫌やろ?」

「たしかに。次の日余ってるヤツ食うならアレンジも必要だ」


 おかずにチーズ乗せたりソース変えたりして、味とか目先変えたりはようやった。

 まあ、そういう事やるから、調子乗ったクソ親どもが、ますます付け上がるんかもやけどな。


「弥勒、俺もアレンジ覚えてえ」

「そんな身構えるようなもんやないし、簡単やで? カレーをカレードリアにするとかやし」


「カレードリアな、最初の頃に食ったよな? カレー作った次の日に。あれがアレンジか」

「おう。今までもそういうのは、意識してへんだけで、けっこうやってきてるやろ?」


「そんな事話すとカレーもまた作りたくなるな」

「ほな今度また夏野菜のカレーでもやるけ? 次の日はカレーうどんにチェンジするし」

「カレーうどんも食いてえっ! やろうぜ、いっしょ作ろう」


 遥といっしょに、作ってみたいメシのアレンジを話しながら家に向かう。

 ワザと3日目までカレーを残して、カツ揚げてカツカレーにしてもええとか。


 こいつと食うメシはほんま楽しくてうまいから、どんどんアイデアも湧いてくるしなっ。


 

 次の日、琢磨は勝って当然とばかりに優勝を決めて、遥は大喜びでメッセージ入れてたから、オレはさらに負けてられへんって気合いを入れ直した。

もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

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