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この恋のために2  作者: ひなた真水


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18/38

夏の過ごし方

 今年も夏がやってきて、夏祭りが迫ってきたから、いっちょ遥を誘って、祭りに繰り出してみよか。


「夏祭り近いし、オレ、去年言うてた甚平買いたいから、ちょっと付き合うてくれ」

「いいぞ。弥勒なら甚平もすごく似合うだろうしな」




 そんなわけで2人で甚平の買い物に向かってみる。


「おっ、コレ涼しそうじゃね? 麻混だし色もいいし弥勒に似合いそうだぞ」

「どれ? へーええ色やんけ。どや、似合うかな?」


「似合う似合うっ! これにしなよ弥勒。絶対これが1番いいって」

「そうか? ほなこれにするわ。甚平って袖短いねんな〜、ポケット付いてるんが便利やわ」


「だな。これなら信玄袋いらねえかもしんねえな」

「せやな。どうせ携帯と財布ぐらいしか持ち歩かんし、いらんかもや。楽しみやな〜、祭り」


 遥には悪いけど、去年の肝試しが相当楽しかったらしい彼方に、今年も肝試しの協力する約束はしてあるから、祭りが終わったら待ち合わせや。


 去年は簡単に釣られたけど、今年はそうもいかんっちゅうのは、2人とも分かってるはずやけど、どうするつもりなんかな?

 ま、とにかくオレは目一杯楽しんどこか。




「遥見ろ、風船釣りやってるで」

「ほんとだ。金魚と違ってヨーヨーなら持って帰れるからやってみようぜっ!」


 色とりどりの風船ヨーヨーの中から、オレがターゲットに決めたのは、ちょうど先っちょが隣の風船に乗っかってる赤いやつ。

 やっぱ遥の目の色っちゅうたら、ゲットせずにはおられんからな。


「ははっ。ラッキー、1個ゲット〜」

「あっ。ズリいぞ弥勒っ! くそぅ、他のは全部水の中に先っちょあるじゃん〜」


 四苦八苦して2回やり直したおかげで、遥がゲット出来たのは、紫の風船ヨーヨー。

 その色も遥によう似合てるで、オレと遥の目の色、混ぜた色や。


 その後も甘いの得意やないクセに、リンゴ飴に挑戦する遥。


「ヤベえ、マジ甘え。弥勒、助けてくれ」

「貸してみ? うわ、甘々やなっ。飴部分はオレが食うから、リンゴ部分だけにしとけや」


「そうしていいか? うは、弥勒の口真っ赤だ! 人喰いみてえになってるぞ!」

「ほんまけ? っちゅうか、遥の口も大概やで。ブラッディな感じや」


 2人して笑いながらリンゴ飴食うてると、遥の携帯が鳴った。


「彼方からだ。なんだろ? また肝試しじゃねえだろうな…」

『はるタソ〜、かなタソ、みなさんで花火したす。いっしょ花火せぬか?』


「む。花火か。オレ小遣いだいぶ使ったから、あんま余裕ねえんだけど」

『だいじょぶなり。花火はすでにご用意済みね。かなタソたちと合流して参加せぬか?』


「弥勒、かまわねえ?」

「ええで。奢りの花火やったら、参加せんのは勿体ないしな。行こや」


 作戦っちゅうのはこれかと思いつつ、彼方に誘われた花火の会に参加することにする。

 ま、遥が肝試しに参加するような協力は、慶太との約束でしてやる事になってるし、去年の肝試しもオレは楽しかったし、ええやろ。




「うひょ。お2人さん、やってきたなりね〜。早く乗るよろし、花火会場出発するなりよ」

「よっす滝、車まで出して気合い入れた花火だなー」

「まぁねー。駅前じゃ電気が明るくて花火綺麗に見えないしね」

「よっしゃ乗ったで。出してくれや、慶太」


 後部座席2列が向かい合う金持ち仕様な滝の車は、滑り出すように滑らかに発進して、夜の街を進んで行く。


「彼方、やっぱ花火がきれいに見える辺りっつーと、河川敷とかか?」

「むひょ。もっとよろしとこがあるなりよ」


「真っ暗でそれはそれは花火がきれいに見えるところがね」

「真っ暗って………まさか」


「ピポピポピポーンっ! レンタル廃屋のお庭で肝試しの後に楽しむなり〜っ」

「いやだーーーーっ!! 廃屋やだっ! 降ろせーっ!! 車止めろーっ」

「諦めろ、気づかんかった自分が悪いんやって」


「弥勒てめえっ! さては気づいてやがったな?! てめえまで敵だとは思わなかったぞ!?」

「いやオレかて、もしかしたらぐらいしか思わんかったんや。また廃屋に行く確信はなかったで?」


「それでも言えよばかーっ! 肝試しにはもう付き合わねえっつっただろ?!」

「のんのん。夏は納涼と決まっとるなり。肝試しは恒例の義務なりよ」

「そんなもん義務化すんじゃねーっ!! うぅうう〜くそぅ…くそぅ…いやだ〜」


「ほなオレだけ1人でまわろか?」

「それはダメだっ! なんかあったらどうする! 中は真っ暗なんだぞっ!?」




 こうして、結局去年に引き続き、4人でレンタルした廃屋で肝試しすることになった。


 今回は花火をするためか、前回の洋館とは違ってコンセプトは廃病院らしいな。

 曰く付きやないにしてもええ雰囲気しとるわ。


 しかも運転手さん、今年も脅かし役やるらしく、先に乗り込んで行ったし…


「そいでは今年はかなタソチームが先行なりね」

「滝、き、気をつけろよ?」

「任せてといて! それじゃ、裏の空き地で先に待ってるから、10分経ったら追いかけて来てね」


 意気揚々と廃病院へ旅立つ彼方と慶太を、めちゃくちゃ不安そうな顔で見送る遥。


 そう、今回は前回みたいに、出発地点とゴールがいっしょっちゅうわけやないのがミソなんや。

 だから先に行ったヤツの感想を聞く事なく出発せんならんし、ゴールまで行かな花火も出来ひん。


 ま、言うてもここは廃病院風なスタジオやし、ゴミやら瓦礫が危ないっちゅうわけちゃうから気楽なもんやけど。




「弥勒のばか… 俺がこういうのダメなの知ってるクセに…」

「すまん。花火に釣られてしもた。それにあれや。彼方はおまえと違って夜あんま外で遊べへんし、可哀想やったし」


「むー。そうだけど…だから俺だってホラー映画付き合ったりしたけど…これは酷えよ………」

「大丈夫や。横には絶対オレがおるし、ここは暗いだけで撮影スタジオや」


「むー…撮影スタジオ?」

「せやで。普段はコスプレしたヤツらが、キャッキャうふふて写真撮影する場所や。本物の廃病院やない」


「むー。でも運転手さん脅かし役しに行ったぞ?」

「どうせあの人がおるんはチェックポイントやろうし、そこの近く行ったら警戒しようや」


「コンニャクぺたんはどうすんだ?」

「それはオレが絶対先に見つけたるから、安心せえ」


「む。弥勒が見つけてくれるのか? ならちょっと元気出てきたぞ」

「よかった。彼方の数少ない夜遊びなんやし、2人で頑張って付き合ったろ。な?」


「うん。そろそろ時間だし、行かねえとな」

「おう。裏庭で花火目一杯楽しむで!」




 そうやって対策は立ててたつもりやったんやけど………




「わぁあああああっ! オバケが!! オバケがぁああああっ!」

「落ち着け遥! 大丈夫や。シーツ被った彼方や、それ」

「わぁあああぁああっ!! 食われるーーーーっ! オバケに食われるぅうううぅううっ!!」


 先に行ったはずの慶太と彼方が待ち伏せしてて脅かしてくるし、遥は大騒ぎでまたしてもパニックや。


「ふわさふわさ〜、うひょひょひょひょ」

「いやー、これだけ反応いいと脅かし甲斐もあるねー」

「バカヤローっ! し、心臓止まるかと思っただろっ!! ば、バカやろ………うっく…ひく………」


「これもはるタソを鍛えようという姉さんの心遣いなり。強すなるよろし、はるタソ」

「あー、ビックリしたなー、よう頑張った。偉かったで、遥。ほら、負ぶったろ」


 去年に引き続き立てんくなった遥を負ぶって、裏庭の花火会場まで連れてったる。




「ほら、機嫌直して花火やろ。これなら怖ないやろ?」

「………うん…マジで死ぬかと思ったけど…生き延びたしな。あ、ネズミ花火あるじゃん」


 遥がなんの気なしにネズミ花火の1つに火をつけて放ると、しゅるしゅる音を立てながら不規則な動きで回転したネズミ花火は、そのまま彼方の足元へ。


「うきょっ!! 何するなりか! はるタソよ!!」

「え〜? 別に狙ったわけじゃねえよー。でも面白えからもう1個」


「やややっ! またこちらへ向かってきたなりっ!! 退避退避っ! オノレはるタソめ〜」

「こらこら、危ないし彼方狙うな」

「え〜? 別に狙ってはいねえんだよ。なぜか彼方に向かって行くだけでさ」


「彼方、こっちの方においでよ。そっち側は行きやすいみたいだしさ」

「むーっ! かなタソ仕返しなりっ!! うきょっ! 何故(なにゆえ)こちらへ戻ってくるなりかー?!」


 なぜか彼方に向かって集まってくネズミ花火に、遥はすっかり溜飲を下げて楽しげに花火をやりだした。


「わー、見ろよ弥勒。光の柳みてえじゃねえ?」

「ほんまや。こっちのはキラキラの星やで」


 鮮やかな色と光と漂う火薬の匂いが、夏の盛りの夜を彩っていく。

 途中で遥と彼方が我慢出来ずに、線香花火に束で火をつけて遊んでもみた。


「なあ、やっぱこれって、こういう遊び方が正しいとは思えんねんけど…」

「正しくねえのがいいんだよ。まだ残ってるから、最後に正しい遊びもするから待てって」

「うひょー。線香花火とは思えぬ派手さなり〜」

「ほんと、元気でキラッキラだねぇ」


 そのあとは花火の光で字を書いて写真撮影したり、仕掛け花火の精巧さに驚いたり、楽しい時間が過ぎていく。




 最後に残った4束の線香花火を分け合って、チリチリパチパチ、ちっさい火の玉を眺める。


「きれいだねー、彼方」

「まるで小さきお星さまのようであるの」

「やっぱこれ、1本ずつ遊ぶんが正しいんや?」

「でもさっきのも面白かっただろ?」


「おもろかったけど、オレはこっちの方が好きやなぁ」

「俺は両方とも好きだな。線香花火の職人にケンカ売ってるみてえな遊び方も楽しいし」

「はは。そういう意味じゃ悪なかったわ」


 遥と過ごす2回目の夏、遥が恋人になってから初めての夏、日本での夏の過ごし方は、まだまだ知らん事いっぱいやな。

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