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親公認のために

ピコン ─── ¥『珍しいやん。どないしたん? PCメッセなんか使て』

Mrock「あー悪い。出来たら通話がええねんけど」


¥『? ええよ …………あ、あー。これでええ?』


「仕事中やったけ?」

「いや、明彦とそろそろメシ行こかて喋ってたとこやけど。なんなん? 時間かかる話?」

「おとんもおるならちょうどええわ。混ざってちょっと相談乗ってくれや」


∀『おれもか?』


「だから、音声繋げろって」

「はいはい。で? 何の相談なんや。珍しい石でも出たんか?」

「化石の話やないって。オレの相談や言うてるやろが」


「バイクで事故したとかとちゃうやろな? あんたただでさえ遥乗せて走ったりするんやし……」

「話を聞けーっ! 事故でもないわボケっ」

「「じゃあなんやねん?」」


「……………恋人できた」

「は?」

「は?」


「だからぁ、オレに恋人できたっちゅう話やっ」

「恋人って………遥と別れたんか?」

「いつ別れたん?」


「はぁっ?! ちょっ待て!! 遥が恋人て…おかん〜っ!」

「おれはジニから、遥っちゅう恋人できたらしいて聞いてたけど、恋人と違ったんか?」

「あれ? もしかして、あん時はまだ付き合うてへんかったとか?」


「…………………………まぁ、おかんに紹介した時はまだやった。その後…付き合い始めたんや」

「ほな息子が増えるなー。孫は見られんみたいやけど、差し引いても逃したらあかんようなええ子なんやろ?」

「おう。それは間違いない。保証したるわ」

「で? 相談て遥の相談なんか? 息子なんやし、なんなと力になるで〜」



「あーそうか。日本は法整備もまだやしなー。偏見のある人はあるかもしれんな」

「うちは兄ちゃんが同性婚しとるから、今更やけどな」

「そんなわけでな、カミングアウトについて、おまえらの意見を聞いてみよと思たわけ」


「反対されたら駆け落ちでもしたら?」

「おい。あいつMIT行く予定あるんやけど?」

「そんぐらいの学費、あたしらが出したるやん。どうせ向こうじゃ同棲するつもりなんやろ?」


「まぁ、おれら貧困に喘いでるような稼ぎやないし、MIT出た後はいっしょに石掘るっちゅうのもええしな」

「そっちの道に進まん可能性も高いんやで?」

「「そん時はそん時やん」」


「だいたい弥勒とか、全く興味示さんかったし、話聞く姿勢がある分、遥の方がええ息子やん」

「せやで。あんなええ子、絶対あんたには勿体ないから、離したらあかんで?」

「……おまえらがウェルカムなんはよう分かった。ほな高校出るまであいつの晩メシ代、反対されたら持ってくれるけ?」


「せやな〜……五木梨(ごきり)ばっかり手伝ってんと、おれらんとこにも手伝いに来るんやったらええで」

「季節逆やし、冬休みフランスやめて2人であたしらんとこおいでぇや」

「旅費出るんやったら行ったってもええ」


「偉そうやな、おい。ま、ええわ。新しい息子と会えるんやし、チケット送るわ」

「あ、そうそう。フランス国籍取るつもりなんやったら覚悟しときや? フランスて結婚はめっちゃ大変な国やしな」

「マジか」

「書類1枚で婚姻が済む日本とは大違いなんや。何ヶ月もかかるから覚悟決めてかかるんやで」


「ジニ、腹減った。そろそろメシ行こや」

「せやな。冬休みに息子が増える前祝いしに行こっ♪」

「いくらなんでも気が早すぎるわ、ボケーっ!!」



 通話終えてちょっとグッタリしつつ、とりあえず上手くいきそうな方が上手いこといってホッとする。


 おかんの兄貴が同性婚しとるのは知ってたから、酷い反対はされんやろうと思ってたけど、あんなウェルカムやと思わんかった。


 これで『オレと別れんかったら進学の援助もせん』て言われても、遥は好きにMITで勉強出来るし、いっしょの晩メシも我慢せんで良さそうや。


 …………まぁ、冬休みに石掘りに行かなあかんみたいやけど、遥とやったら化石探しも悪ないやろうし、ええわ。




「な、なんだってーっ!! すでにバレてたってどういう事だよ、おい」

「いや、ほんまそのままの意味や。前におかんといっしょにメシ食うたやろ? あん時にオレらが付き合ってるて、何故か勘違いしてしもてたらしいわ」


 オレは昨日のクソ親どもとの会話を遥に聞かせてやりながら、とにかく反対されるどころかウェルカム状態で、息子が増える前祝いしに行くほどやったて教えた。


 ついでに、援助の条件に冬休みの石掘りが付いて来てるっちゅうことも忘れずに報告しとく。


「でもそっかー… 良かった。俺んちはさ、彼方が女だし滝もいるから孫は見られるだろうけど、弥勒は一人っ子だから気になってたんだよな」

「そこは気にせんでええで。おかんまだそこそこ若いし、産む気になればもう1人ぐらい産むやろうし。それよりええけ? パタゴニア行きは」


「全然OKだ。弥勒の父さんにも会ってみてえし、ウィルジニーも楽しくていい人だったしな」

「遥がええならええけど、多分テントで寝泊まりとかになるし、覚悟しとけよ?」

「ふふ。パスポート取らねえとだな。初海外が発掘現場か〜」


「何のお話してるなり?」

「ん? 弥勒の父さんが俺に会いてえから、発掘現場に来ないか?って言ってるんだって」

「うひょっ。はるタソついにご両親公認なったなりか!?」


「おう。なんか、こっちが言う前から向こうじゃ勝手に付き合ってることになっとったみたいやけどな」

「まぁ、あれだけラブい雰囲気だったら、誰でもそう思って当然じゃない?」

「む? 俺たちラブい雰囲気醸し出してるか?」


「………あれで出してないって思ってるの?」

「だいたい2人の世界であるなりが?」


 まぁ、オレは人前でも好きやとか愛してるとか、日本人やと照れて言わんようなことわりと言うてるから、そういうとこがそう見えるんかもしれんなー。


「…………彼方、ラブい雰囲気は減らした方がいいか?」

「こら、減らすな。減らそうとすな」


「いやでも、見てる人が不愉快だとしたら控えた方が………」

「今さら減らすしたら、周りのみなさん何あったなりか心配するなり。普通でよろし」

「それに見てても不快な雰囲気でもないから、気にする事はないと思うよ?」


「むしろ増やす方向でいこうや」

「意識して増やすのも変だろー。でもふふっ。親公認に大きく前進出来たな」


「次は我が家の靴下臭すなりの」

「お母さんはもう知ってるんでしょ?」


「な、なんだってーっ!! 母さん、俺と弥勒の事、もう知ってるのかー?」

「とっくのとんまなりよ。知らなすは靴下臭すだけなり」

「………初耳やで」

「女親は息子のそういう動向に目ざといものらしいからね。おれもすぐバレたし」


 慶太の彼方命っぷりは、分かりやすいから誰でもすぐ気づくやろうけど、まさかオレと遥の事を知られてるとは思わんかったわ。

 いつバレたんやろ?


「お正月ばあさまのおうちでも、はるタソしょぼり寂しすしてるなりし、映画大会ではこっそりお手々繋ぐしてるなりし、誰でも気づくなり。靴下臭すが鈍感なり」


「へえ〜、弥勒そんな事してたんだ?」

「あれは遥があまりにも怖がるしやっ。他意があったわけやないって」

「む。弥勒は怖がる女子がいたら誰でも手繋ぐのか?」

「いや、遥以外にはせんけど………」


 遥が最初に親に反対されたらって言い出した時は、けっこう深刻な感じやったけど、いつのまにか周りが先取りして認めてくれてたりして、残り1人の関門になってたのはすごいラッキーやな。

 後は遥の親父さんが認めてくれれば、晴れて親全員の公認になれるんや。


「遥、おまえのおとんに、ご挨拶に行きたいから、都合聞いてもらえへんけ?」

「うん。俺もなんか大丈夫そうな気がしてきたから、聞いてみるな」

「やっぱりご両親には祝福されたいものだしね。2人とも頑張んなよ」

「滝も応援さんきゅな。頑張るよ、俺たち」

もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

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