表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

夏の前に

「ふむ……む。こんな感じでいいか?」

「お? これもしかして、あれけ? ファーザーズディ」

「あ、弥勒。正解〜、年に2回のゴマすりデイだぞ」


 俺はただいま、父さんのための父の日カードのデザイン中だ。

 毎年誕生日と父の日の2回は、何はなくともカードが必要だからな。

 俺も彼方もこの2回だけは絶対、父さん頑張ってて偉いっつー事にしねえと、色々おねだりしにくくなるから、頑張るんだ。


 ちなみに母さんはもう終わった。

 母さん誕生日が5月だから、誕生日と母の日合わせて、1回だけで済むし、誕生日が2月の父さんより楽ちんだったりする。


「ほんとマメだよねー。彼方も遥も偉いよ。おれは父の日なんて、授業以外でやった事がない」

「これせぬ場合、我が家の靴下臭すは、言うこと聞かなすなってしまうなり」

「っつっても、そんな気合い入れてねえけど。ペンとかあんま買い足さねえ事多いし」


「そんでも偉いで。オレ父の日も母の日もやった事あらへんわ」

「そういう習慣がねえ家は楽そうだよな。俺は何回か遅れた事があって、すげえ拗ねて大変だったぞ」

「父の日には何かプレゼントとかするんけ?」

「しねえぞ。父さんも母さんも、カードだけで十分なんだ」


 大人になって稼げるようなれば変わるんだろうけど、今俺の持ってる金は父さんが稼いだ金だし、気持ちの方が大事らしいからな。


「ま、遥と彼方の心のこもったカードは、ほんまに価値あるしな」


 そう言って弥勒は嬉しそうに携帯の待ち受け画面を撫でる。

 俺があげたアニバーサリーのカードが待ち受けにしてあるから。

 俺もこんな喜んでもらえるなら、贈る価値あるしな。


 ちなみに滝の画面は、彼方のバレンタインのカードが待ち受けになってる。

 彼方の方がマメにカードを書くヤツだけど、その分気まぐれなヤツでもあって、書きたくねえ友だちのカード買って済ませる事あるから、好きかどうかのバロメータっぽくて滝は大変だ。


 俺は贈る人数が少ねえから、カード書くの苦になんねえけど、彼方はそこそこ人数いるから、仲良し以外にあげるのやなんだろう。

 小学校低学年ぐれえの時はもらってた琢磨も、いつのまにか、彼方からはカードもらえねえようになったみてえだしな。


「彼方も遥の幼馴染にカードあげてたの?」

「うむり。小さき頃、お誕生日会お呼ばれの時は2回あげたなり」

「そんなちょっとだったっけ? それ幼稚園の年長さんとかぐれえじゃん」

「かなタソ小学生なってからはあげてなすよ? 琢磨別に仲良すなす」


「うわ、話に聞いてはいたけど、彼方ほんま仲良ないとカードやらんのや?」

「彼方は他に女の子の友だちがいるから、その子たちの方が大切だもんね」

「そなりよ。ただいまあげるが3人も居るなり。仲良すなすにあげる物でなす」


「俺も幼稚園の時からずっとあげてんのは琢磨ぐれえだし、仲良くねえのにやらねえっつーのは普通だな」

「琢磨以外にもカードあげた事あるんや?」

「幼稚園だと授業で作ったから、お友だちにカードを作ってあげましょうっつーの」


 折り紙貼ったりとかして、作ったことはあったけど、小学校あがってからもずっとあげてるのは、琢磨だけだな。


 どうせ他のヤツらは、カードもらった事も覚えてねえようなヤツらだろうし、俺も授業で作ったヤツまでは覚えてねえ。


 だいたい、誕生日のお祝いなんてもんは、女子と違って、ほんとに仲良くねえヤツの以外は、男子にやる習慣はねえのが普通だし。

 この学校だと滝とか仲良くしてるけど、お祝いするかどうか以前に、俺は滝の誕生日がいつかすら知らねえぞ。


「おれは8月だから、知ってても遥からカードもらう事はないだろうね」

「タキお誕生日、かなタソ今から楽しみなりよ〜」

「彼方にお祝いしてもらえるなら、今年も最高の誕生日になりそうだ」


「慶太、去年はどんな誕生日やったんや?」

「去年は8月って、おれが仕事で忙しかったからね。彼方ともあんまり遊べなかったし、ほんとささやかだったよね」


「自分の父さんとこで修行してたんだっけ? すげえよな、もう仕事してるとか」

「手伝う程度だけど、跡継ぐつもりなら普通じゃない? 店やってる家の子どもとかはみんなやってるよ」


 そうなんだろうけど、滝がスーツ着てホテル業務に参加してるっつーのは、やっぱすげえ。なんか半分社会人みてえじゃん。


「ふむり………タキ、未来の奥さまお家お手伝いダメなりか?」

「ええっ? 彼方が滝んちの仕事手伝うのか? 夏だけバイトするっつー事?」

「彼方が仕事手伝ってくれるの? 大歓迎だよっ! おれのお父さんも喜ぶに決まってる」


「手伝うて彼方、何する仕事か分かってんのけ?」

「分からなすがお手伝いしたす。タキ、ホテルお手伝い難しき?」

「色々だね。実際にお客様に対応するのは、やっぱりそれなりに難しいし、打ち込みなんかの簡単な仕事もあるよ」


 彼方が仕事の手伝いをしてくれるなら、夏の間すげえ頑張れそうだって、滝は大喜びしてる。

 ま、親も嫁入り修行なら反対しねえか。彼方、バイトしたがってたしな。


「弥勒、俺らは今年も民宿手伝い出来そうか?」

「おう。すでに夏は絶対来てくれって頼まれてるし、行って手伝うたらんとや」

「楽しみだよな。また海が見られるって思うだけで、わくわくするぞ」


「ババアが来るならついでに納屋の整理も頼みたいっちゅうてるけど、かまへんけ?」

「納屋って、あのほったて小屋みてえなとこ入れるのか? やろうやろうっ」


 去年のバイト代は貯金してあるし、今年も頑張ってバイトして、いっぱい貯金して、今年はちょっとデケえ使い方してみてえ。




 弥勒といっしょに作る晩メシ、今日のメニューは弥勒のばあさん仕込みっつーほうれん草のキッシュとさっぱりなラタトュユだ。


「な、弥勒。俺、3年なったら受験勉強でちょっと忙しくなるだろ?」

「せやな。遥の事やし失敗するとは思えんけど、勉強けっこう頑張らんとあかんな」


「だからな、今年はどっか遊び行きてえって思ってるんだ。いっしょ旅行とか、行かね?」

「マジ? 行きたいけど、言うても、資金はどうすんねん?」


「貯金ならちょっとはしてるぞ。夏にするバイトも入れたら行ける」

「行きたい。旅行行きたいで。泊まりがけで遊びに行きたいっちゅうか、どこ行く?」

「弥勒とだったらどこ行っても楽しそうだけど、いつ行くかも重要じゃね?」


 冬に行くなら雪のあるとこが行きてえけど、弥勒は冬ってフランスだし、夏なら涼しいとことか、うめえ物いっぱいのとこもいいな。


 老舗旅館とか高級ホテルはムリでも、控えめな値段のとこだったら何泊か出来ると思うし、2人でじっくり行くとこ選ぼうぜ。


「夏の間に行くなら急がんとな。チケット取ったり宿の予約も必要やし」

「楽しいとこ、きれいなとこ、うめえ物いっぱいんとこ、色々比較して決めてえけど、迷うよな」


「オレんとこはええけど、旅行行くっちゅうの、親の説得は任せといて大丈夫け?」

「俺は男だし、日程計画表出して、夜遅くは出歩かねえっつー約束すりゃ大丈夫だよ」

「ほなまずは計画しっかり立てんとや。うわー、楽しみやなー」


 俺も弥勒も日本を離れる予定だし、行ける時に行っておきてえとこはいっぱいあるな、俺はちょっと日本らしいとこも行きてえぞ。


「日本らしいとこかー、ええな。……………その前に、…その」

「?」

「旅行行くなら、遥の親にオレらの事、言わへんけ…?」

「ぁ………」


 そっか、そうだよな。

 アルバイトで親戚の家にやっかいになるのとは違うんだから、言っておかなきゃだよな………


「ぁいや、おまえが嫌なら、嫌っちゅうか、まだ早いて思うなら、かまへんで? 旅行中も何もせんって誓うしっ!」

「……そうじゃなくてさ、…………反対されねえかなぁって、弥勒との事」


「……………反対されたら、付き合うのやめるけ…?」

「そんなのあり得ねえよ。そうじゃなくて、晩メシいっしょ食う援助とかストップされたり、そゆのが怖えなって………」


 今の俺が弥勒といっしょに晩メシ食えるのは、親が食費出して料理教えてもらえってしてくれてるからだ。

 それが無くなったら、たぶん弥勒といっしょに毎日晩メシは食えなくなる。


 もちろん、そんなぐらいでめげたりするような気持ちじゃねえって胸張って言えるけど、今から卒業して留学するまで、いっしょの晩メシがなくなるのはやだなー…って。


「あー…それはキッツいなー。食費ってデカいもんなー」


 への字の眉毛でしょぼんと俯きかけた俺の肩を、弥勒のデケえ手がぽんと叩いた。


「一旦ちょっとその話は待っててくれへんけ? なんとか方法考えてみるし」

「方法って…?」


「ええ答えを期待させるだけさせるっちゅうわけにはいかんから、今はただそれしか言えんけど」

「………む。ナイショなのか?」


「オレを信じてしばらく待ってくれ。頼む」

「むー。極秘なんだな?」


「おう。極秘やけど、悪ならんように何か方法探すから」

「気になるけど、分かった。弥勒が俺たちのために頑張ってくれるって信じて待つ」


「オレらやったら大丈夫やとか、オレに任せれば間違いないとか、カッコええ事言えんですまんな。でも精一杯方法探すし」

「うん。弥勒は今まで、俺といっしょにいるために、いっぱい頑張ってきてくれたからな。今回も頑張ってくれるって信じて待つ。それと、親の事は俺も、それとなく探り入れてみるよ」

「おう。そっちは頼んだ」




 こうして、俺たちはただの恋人同士から、親公認の恋人同士への道のりを手探りで進む、第一歩を踏み出した。

もしよければ、ブックマークや⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎を付けてくださると作者は泣いて喜びます(๑>◡<๑)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ