新学期
また書き始めました。
毎日更新、全38話です。今日だけ5話一気に更新します。
前作『この恋のために』の続きです。どうかよろしくお願いしますm(_ _)m
桜舞い散る春4月、昨日までの冷え込みを忘れたような、ポカポカあったけえ今日、晴れて俺らは高校2年になった。
俺は楠木遥。
遥と彼方の双子の片割れで、遥なのに弟っつーちょっと奇妙なヤツだ。
「うー今日は少々眩しき日なりの〜」
隣をちょろちょろ歩くちっせえ不思議な生き物が俺の姉の彼方。
俺同様真っ白な髪色に赤い目のアルビノで、2人揃うとかなり目立つが、ただ今俺らは登校中なのでしょーがねえ。
アルビノっつーのは視力が悪いし、裸眼だと0.01ねえぐれえで、プラスで俺らは眩しいのも辛い羞明っつー特性もあるのだ。
もちろんコンタクトして、その上メガネもかけてるけど、それでも視力は0.3に届かねえのが俺と彼方だ。
ちっせえ頃からそれを心配した親が、学校着くまでは必ず2人で行動しろっつー厳命を出してるから、しょーがなく2人で登校する。
「彼方、クラス分けどうなったか、気になんねえ?」
「さほど気にならなす。おそらくかなタソ、タキと同じクラスであるからの」
「そうは言ったってさ、俺らがほんとに同じクラスになれるのかは気になるぞ?」
「大丈夫なり。理系特進クラス、例年1クラスだけなりから、間違いなす」
双子故、通常のクラス分けなら、俺と彼方は絶対ややこしいとかなんとかの理由で、別々のクラスになるはずだけど、今年は別だ。
我が校のクラス分けは2年から、理系特進、文系特進、理系、文系、一般の5つのコースに分かれて、毎年理系特進と文系特進はひとクラスだけだ。
上手くいけば俺と彼方、そんで彼方の彼氏の滝と、俺の恋人の弥勒は同じクラスのはず…なんだけど、俺はまだちょっと不安だ。
まあ、成績が上位の俺らが、あぶれて別のクラスに行く事はねえだろうけど、それでも俺はちょびっとドキドキでそわそわするぞ。
「よお、遥。おはようさん、クラス分けもう見たけ?」
「弥勒おはよー。いっしょクラスなってたか?」
こいつは高嶺弥勒。
去年の5月に親が海外の僻地に行くっつー事情により、日本の親戚頼ってアメリカから転校してきたヤツで、…見ての通り男だ。
身長195以上の上に軍隊格闘技経験者っつーどこからどう見たって間違いようのねえ男で、実は俺の恋人だ。
別に俺は男が好きっつーわけじゃねえけど、なぜか弥勒が好きで、弥勒も別に男がいいっつーわけじゃねえけど、俺が好き。
去年俺は相沢っつー女子に告られた。
相沢と付き合うかどうしようか考えてたら、俺のこと好きだった弥勒が焦って告ってきて、俺はあまりにも嬉しくって、告ってきた相沢は速攻で断ってしまった。
でも、いくら嬉しくても、さすがにいきなり男の弥勒と付き合うのはムリだった。
だってそれまで、俺は弥勒と付き合うなんて、考えたことなかったしな。
でも、告られて嬉しかったのは間違いねえから、すげえ悩んだ。
弥勒の事はかなり待たせたし、俺もいっぱい悩んで考えたけど、親友の琢磨とも衝突してまで、結局俺は弥勒と付き合う事を選んだ。
去年のクリスマスから付き合いだして、あっという間に4ヶ月目突入で、まだキスとかはしてねえけど、けっこう順調な感じ。
「彼方おはよう。クラス、予定通りいっしょだったよ」
「むひょ。なれば今年1年すばら楽しきなりのタキ」
こいつは彼方の彼氏の滝慶太。
金持ち見た目良し成績優秀料理上手っつー少々ボッチ属性は持ってるけど、なんか出来のいいヤツだ。
弥勒のばあさんと滝のばあさんは従姉妹っつー遠縁であり、その縁で弥勒の幼馴染でもあるヤツ。
「今年のクラス担任、誰になるんだろうなー?」
「よろし先生なれば最高1年なるなりね」
「とにかく講堂行かなきゃね」
「始業式もあるし、新任教師の紹介もされるやろしな」
長ったらしい校長の話をあくび噛み殺して聞きながら、隣でうとうとする彼方を時々つついて起こしながらの始業式を終えて、教室へ行くと今年1年いっしょに過ごす同じクラスのヤツらが勢ぞろいしてる。
思った通り女子が少ねえな、7対19じゃ当然だけどさ、花の少ねえ教室だぜ。
俺が顔の分かる女子は…っと
「あ、武藤。去年に引き続きよろしくなー」
「やや、麻生ではなすか。そなたもここだったなりか」
「狙い通りゆかちゃんといっしょのクラスになれて、ほっとしてるとこなのー!」
「思った通りに行って、ほんとよかったよねー。彼方ちゃんも狙い通りだった?」
こいつらは麻生と武藤。
団子頭とくせ毛ヘアのコンビで、麻生は去年別のクラスだったけど、よくクラスに遊びに来てたし知ってる。
去年同じクラスだった伊東と藤本ってコンビに、似てるっつーかなんっつーか、とにかく俺にとっては女子っぽくないコンビだ。
彼方がいて、麻生武藤がいるっつー事は、残りはたった4人かー…ほんと華やかさに欠けるクラスだよ。
「はーい。席に着いてくださーい。出欠を取りますよー」
初っ端だから出欠番号順に並んで、全員で席に座ると…残念、俺の後ろの席も男子じゃん。
ふむ。名前は佐々木っつーのか。
「よう。しばらく隣でおれるな、遥」
「ん! ほんとちょうど隣だな。しばらくよろしく弥勒」
「おれも彼方と席が近くて嬉しいよ」
「うひょ。タキと席近すはよろし事なりね」
「はいそこの4人。お喋りしてないで、こっちを聞きなさい」
担任は理系特進クラスだっつーのに、なぜか担当教科が英語の杉崎ちゃん。
こっちも去年に引き続きよろしくだな。
彼方よりさらに身長低くて、すげえ童顔の杉崎ちゃんは、見た目コンプレックスのせいか、ちゃん付けると必ず注意してくる。
ちょっと真面目過ぎでお堅い性格してるけど、わりといい先生だと思うし、今年の担任は当たりで嬉しいぞ、ラッキー。
適当に学期始めのプリントもらったり、行事予定聞いて解散の今日は、すげえ楽ちんだな。
「遥、この後ヒマなら、ちょっと家寄らへんけ?」
「ん? 弥勒んちにか? ふむ…昼メシ食ってから行ってもいいか?」
「メシもいっしょがよかったんやけど、まあええで」
「んじゃ、1時ぐれえに弥勒んち行く。今日は母さんが家で食えってうるせえしな」
去年の5月から、俺が料理を弥勒に習いだしてからというもの、平日晩メシ食うのは弥勒んちって決まってるから、母さんが寂しがってしょーがねえ。
父さんも母さんも、いつまでたっても子離れしたがらねえ困った親たちで、わりと放任主義な弥勒の親とは大違いだ。
「む。母さま、かなタソ冷やし中華食いたす言ったなりが…」
「むー。俺も冷やし中華食うと思ってたのに…」
「今日は母さん、おうどんの方が食べたかったんだから、しょうがないでしょ?」
いっしょにメシ食いてえっつークセにこれだから、母さんっつーのはほんとワガママな生き物だよ。
俺の胃袋は冷やし中華モードだっつーのに、どうしてくれるつもりだ?
むー練りがらし効いた冷やし中華が食いてえぞ〜っ!
「そんなわけで、俺は断固抗議するぞ。母さん、材料よこせ。弥勒んちで食うっ」
「あらあら、弥勒くんお家で作っていいって言ってくれるかしら?」
「かなタソもしょうがなすから、ファミレスでタキといっしょ食べるなり〜」
キュウリとオクラと焼き豚と冷やし中華麺持って、弥勒んちへレッツゴーだ。
冷やし中華なら、そんな難しくねえし俺でも楽勝だろ。
弥勒はただいまパタゴニアの親から離れて、おじさん所有のマンションに一人暮らし中だから、台所は頼めば使わせてくれるんだ。
「っつーわけで弥勒、俺といっしょに冷やし中華作って食わねえ?」
「かまへんけど。材料持ってくるほど食いたかったんや?」
「胃袋が冷やし中華モードなんだよ。途中で割れたら大惨事だから、卵だけは置いてきたけどな」
「卵やったら家にあるし、いっしょに作って食おか。ついでに紅しょうがとトマトも乗せよ」
俺と弥勒でさっそく冷やし中華の準備してくぞ。
俺がキュウリ、オクラ、トマト、焼き豚を切ってる間に、弥勒が錦糸卵を焼いてく。
ふふふ。役割分担っつーやつのおかげで、さくさく作業が捗るな。
それが分かるようになったっつーのが俺の成長ってやつだ。
俺、弥勒に料理習いだしてから、ずいぶん上達したもんな。
母さんに頼んで毎月材料費出してもらって、ちゃんと習ってるおかげっつーヤツだ。
「ほい、焼けたの切ってくれ。こっちは麺茹でるで」
「任せろ。あ、練りがらしってどこある? いっぱい使いてえんだけど」
「あー家にからしはないけど、どうする?」
「む。からしがねえのはダメだろ。ちょっと買いに行ってくるっ」
弥勒に残りの工程は任せて、俺は急遽近所のスーパーへダッシュだ。
うわ、からしって種類がいっぱいありやがるぞ。
ど、どれだ? どれだ? どれがいい?
「分かんねえから、本生本からし、これにしとこうっ」
和からしとか、名匠からしとか、ねりからしとか、からしのクセに4種類もあったら、どれがうめえのか、迷うじゃんかもー…
「弥勒ただいまー。からしいっぱいあってすげえ迷った〜」
「おう。こっちはもう食えるから、早よ座れや」
「最後、任せちゃってすまねえな。本生本からしだぞ」
「別にええって。それより他にどんなからしがあってん?」
弥勒と冷やし中華に、練りがらしをたっぷり効かせて、うめえって食いながら、スーパーで見た4種類のからしについて話す。
「オレは名匠からしっちゅうのが気になるなー。名匠やで?」
「和からしも気になんねえ? なんかそれで食うと、おでんがうまそうじゃん」
「たしかに、これが切れた時は違うの買うてみよ。これもうまいけど、他のも気になるし」
「だな。だったら、いっぱいからし食うの作らねえとだ。何作る?」
「せやな。からし和え、からしマヨ、からし酢味噌…アレンジしたら色々食えるしな」
「そんないっぱいアレンジがあるのか。俺おでんぐれえしか思い浮かばなかったぞ。弥勒すげえ」
「すごないって。普段は料理する時に使うから、気づかんで食うてるんやろ」
弥勒のこういうとこ、いいと思う。
料理人でも主婦でもねえのに、色々知ってる事を当たり前だっつー感じでいるとこっつーの?
俺はこういう弥勒のいいとこ知るたびに、弥勒が好きだーって、いっぱい思うの、弥勒は知らねえでやってるんだろうな。
晩メシも弥勒といっしょに作っていっしょに食って、また明日なって家帰る時、いつも俺はちょっとだけ迷う。
弥勒と、キス、してえけど、どうしようかなー?って、迷うけど、何もしねえまま、いつも家に帰っちまう。
むー。タイミングが…
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