第三話 初めての街
「先ほどはありがとうございます。そういえば自己紹介がまだでしたね私の名前はザリムス・テンタクレインと申します。呼び方はザリムスとでもお呼びください」
名前のカタカナ度高いな…
「あぁ…俺…自分の名前は谷野真琴です。」
ザリムスはすっと片手を出してきた。握手だろう。
ここでルート分岐とかあったら驚くなぁと思いつつ真琴は握り返した
「私は帝都を拠点に置いた商会で商人をやらせて頂いているのです。もし街に着いたらぜひご利用下さい。ちゃんとサービスしますので」
そういって名刺のような手のひらサイズのプレートを出してきた。
「ミラザ商会…どれくらいの規模の商会なんですか?」
「自慢にはなりますが巷では世界の二大商会とと言われたりするくらいには帝都では名が知れているんですよ。もしかしてあなたは王都の方から来た人ですか?」
ザリムスは少し自慢気に話した後、聞いてきた。
王都と帝都があるのか。どっちも分かんないけどそういうことにしておこう
「そうなんです。そろそろこっちの方にも来てみたいと思い転居する時期だと思ったのでこっちの方に、今日やっと着いたんですよ」
「なるほど、新しい生活ってことですね」
「そうなんですよ。因みに今向かっている街は何処なんですか?」
(恐らく森に入る前に遠目で見えた都市ではあると思うがなにより詳細が分からないからな。万が一治安がめっちゃ悪いとかだったら不味いし、今の内に情報が欲しいところ)
「あと一刻ほどで着くのは城塞都市アインズバルドですよ。帝国の中では港にある街の次に大きい都市です。」
城塞都市、いいねぇワクワクするわ
「街は今の時期はどのような状況なんですか?」
「今は特になんともないですかね。一番平和かもしれませんね」
その後もザリムスは少し微笑みながら街について色々教えて貰った
「そういえば家賃ってどれくらいですかね?なんも情報無いでこっち来てしもうて手持ちも全然無一文なんですよ」
「無一文!?それはそれはここまで大変だったでしょう。家賃、でしたね。宿でしたら一泊4000リリブ、賃貸だったら一月で50000~80000リリブくらいが妥当じゃないですかね」
(リリブ?凄い独特な通貨の名前だな)
「100リリブはどれくらいの価値ですか?」
「普通の果実が一つ200~300リリブくらいなのでそれくらいです」
(通貨の価値は恐らく日本円とあまり変わらないのかもしれないな)
「もうすぐ街に着きますよ。」
そんなこんなで話をしているうちに見えて来たのは門の前にできた長蛇の列だった
「今からあれ並ぶんですかザリムスさん」
「身分証を見せるだけですから少し待つだけですよ」
(身分証…?そんなもんねぇぞどうすんだこれ)
列に並び自分達の番に近づく度に動悸が速まり、呼吸が微かに乱れていった。
「次!そこの馬車、ここは城塞都市アインズバルドだ。その積み荷恐らく商人だろう。商業認可証は持っているか?」
街を囲む灰色の大きく高い城壁の前、門番が長槍を横に構えて立ちはだかった。無精髭に鋲付きの革鎧、鋭い目がこちらを値踏みするように動く。
「もちろんですよ。はい。これ」
ザリムスは顔を少しだし、手早く首にかけていた銀製のプレートを差し出した。
「あぁミラザ商会のザリムス殿でしたか。どうぞお通りください。次!」
門番の態度が一変した。このザリムスとかいうおっさんやっぱ凄い人なのか?
さっきまでの警戒が嘘のように和らぎ、にやりと笑いかけてきた。
木製の橋を渡り、石製の門をくぐる。
鼻先をくすぐるのは、焼きたてのパンと異国の香辛料が混ざった香り。雑踏の中には、毛並みの美しい獣人の商人が声を張り上げ、クレーマーの対応をしている。
すぐ隣では、小さなドラゴンの背に荷物を載せて歩く少女が、店の前で立ち止まってリンゴ飴を買っていた。
異形と人間が当たり前のように混じり合い、誰もそれを気にする様子もない。
──ここが、「異世界の街」なんだ。
思わず足を止めて見惚れてしまう。
目の前で繰り広げられる光景は、夢に見た“冒険のはじまり”そのものだった。
「いいねぇこの圧倒的な違和感の無い違和感!」