第11話 再会
「そろそろ行くか、フィリア」
「優しくよ。優しくだからね!」
「急いでるのに、優しくとか無理だって。注文多いな、たく」
洞窟の中でだいぶ休み、ニガリの実を我慢して食べ続けたお陰で、一気にウラヌスまで行けるぐらいには回復していた。
これもニガリの実様々。でも、やっぱり苦過ぎ。
「フィリア、水飲みたい」
「わかった、レイン……って神器を何だと思ってるのよ!」
「いいだろ。フィリアだってシャワー替わりに使って、痛たた、痛いって、暴れんなよ」
俺はフィリアを抱え、ポコポコ顔を殴られながら、ウラヌスまで一直線に突っ走る。
「私は水道か!」なんて言いながらも、フィリアは神器で水分補給してくれた。
天界力の練られて無いその水は、元気がみなぎると思えるほど、冷たくて美味しい。
神から与えられたと言われる神器だが、その神もこんな使われ方をするとは思って無いだろうな。
「何笑ってんのよ?」
「笑ってたか?ほれ、スピード上げるぞ!」
「だから上げるなって、ってうわぁぁ!」
天界力を一気に上げ、俺はウラヌスを目指すのであった。
◇◇◇◇◇
「はぁ、はぁ、はぁ、クソ。もうそんなに体力ねーぞ!」
ウラヌスに早く着くことだけを考え、フルで天界力を使って走っていた。
だから、途中で待ち伏せされてるなんてのは、頭から完全に抜けていた。
後3時間ぐらい走り切ればウラヌスに到着するというところで、俺とフィリアは誘拐犯組と再び遭遇してしまった。
「よぉ、アデル〜。待ってたぜ〜」
「生きてやがったのか、ピーツ!」
「ヒューイだ、バカ!」
顔をパンパンに腫らしたピーツ……じゃなくてヒューイが居た。
ボンゴ村で倒したと思っていたヒューイが、ここに居るとは思ってもいなかった。
クソ、大人の天界力を見誤ってたか。
殴るだけじゃなく、神器の能力も使っとくべきだった。それに
「お前も来たのかよ、ギムザ!」
「……」
何か覚悟を決めたような表情で立ち尽くす、ギムザの姿も確認した。
俺はかなり急いでここまで来た。
フィリアを抱えていたとはいえ、天界力全開でだぞ。
なのに先回りされてるってことは、やっぱり……。
「聞いたぜ。お前、空飛べないんだってな、笑える。大変だったな、ここまで走って来てよ」
ヒューイの言葉を聞いて確信した。
俺が全力で森の中で木を避けながら走ってたのに、コイツらは障害物の無い空を飛んで来たんだ。
そりゃ、空から来る方が早いに決まっている。
飛べる飛べないの差が、こんなところで足を引っ張るとは考えて無かったぞ。
「あとお前、現地人なんだって?」
「は? それがどうしたってんだ?」
「羽が片方しかないアースランドの現地人、こんなの珍し過ぎるだろ!だ・か・ら、お前も天国に連れて行くことにしたぜ〜。売り捌いて一生奴隷のような生活をさせてやるよ!」
フィリアを拉致するのが目的だったヒューイは、アデルの希少価値を知ると、殴られた恨みも相まって、今度はアデルも拉致すると言い出したのだ。
現地人とは、アースランドに住む、追放者以外の人の総称である。
アデルもその現地人ではあるが、実際には、純粋な現地人というわけでは無いのだ。
アデルはアースランドで生まれた純粋な現地人では無い。
天国で生まれてからすぐ、追放された母親に連れられて、アースランドに来たのであった。
だがそんなことをヒューイに言ったところで拉致を撤回するとは思えない。
そもそも見逃されたとしても、フィリアに手を出すなら同じこと。
かなり限界ではあるが、やるしかないだろ。
「ギムザ、お前もやるってことでいいんだよな?」
「ああ、そうだ。悪いがその嬢ちゃんは引き取らせてもらう」
「そうか……なら、やるか」
「やるさ。俺はもう決めたんだ。何が何でも天国に帰るって!」
ギムザはボンゴ村の時のように見逃すことは無いと宣言し、拳を腰の横で構える。
周りにいたヒューイやシラサギ村のヤツらも、戦う構えを取ってこちらを睨んでくる。
「フィリア。あとちょいでウラヌスだけど、逃げるのは無理そうだ。だから……って、おい。何やってんだ、お前?」
「え、何って。頭洗ってる」
この場にいるほとんどが戦闘態勢に入る。
そんな中、フィリアは俺の後ろでしれっと神器を発動。
小さな雨雲を発生させ、髪を濡らしていた。
この女は状況がわかって無いのか?
今からやり合うってカンジ出てたよな?
呑気に髪の毛洗ってやがるよ。
……空気読め、くらえ!
神器解放、『矛盾』を装備する。
ヒューイたちに向けて使うはずだった能力を、雨雲に向けて放つ。
『凍てつく風!』
フィリアの髪を濡らす雨粒は霰に変化。大量の霰がフィリアに降り注ぐ。
「イタタタタタタ、ちょ、何すんのよ!」
頭を抑えながら、霰の降る雨雲から脱出するフィリア。
涙目で俺を睨んでくる。
「何休憩してんだ!お前も神器使えるだろ。手伝え!」
「私が? 無理でしょ!」
「はぁ? 手伝えよ!」
フィリアは戦闘への参加を拒否。
拉致されそうになってる当の本人が何もせず、俺だけに戦わせようとしていたのだ。
体力の限界にきてるから、何人かはフィリアに任せようと思ってたのに。
俺はフィリアを助けてるのに、助けてくれとお願いする、なんか変なことになっていた。
しかし、フィリアは協力を頑なに拒否する。
「だって、天界力無いと効かないんでしょ、ふんだ!」
ファリアはさっき片手で神器を止められたことを根に持っていた。
「やばい、そうだったわ」
俺はフィリアに言われて、天界力の使い方を教え忘れていたのに気づいたのだった。
はじめましてゴシといいます。
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