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聖戦士シャーロイル~名探偵になりたかったのに、何故かヒーローになってしまった~  作者: XX
第9章:憎悪の代償

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第98話 市子の提案

「……分かった。なら、俺が絶対に守る」


 俺は覚悟を決めた。

 もう一度、市子に危険な立ち位置に立ってもらう覚悟を。


 ……法王バイルを確実に地獄に送るためだ。


 この広間の中が静まり返った。

 市子の決意が、空気を重くしてるんだろうか。


「ご決断、感謝致します藍沢さん」


「一般の方のご協力は大変尊いですね」


 ガルザムとゼルノスの言葉。

 一応、笑顔で丁寧だ。


 そこで


「具体的にどうするんですか?」


 市子がふたりに訊ねる。


 危険度の高い決断をしたのに、市子は怯えていなかった。

 腹を括ったってことか。


 それにゼルノスが軽く頷いて、口を開いた。


 ……そして耳を疑うことを言った。


「マーシアハ教会に入信してください」


 ……は?


「藍沢さんが教会に近づけば、法王バイルは接触せざるを得ません。ヤツの洗脳能力を発動させるには、おそらく直接会う必要があるわけですよね?」


「ちょっと待てよ」


 俺は思わず声を上げた。

 頭がカッとなって、またテーブルを叩きそうになったのを我慢する。


「ただ入信するだけじゃ、いくらなんでも罠だってバレるだろ。何でいきなり入信なんだ。怪しすぎんだろ」


 冷静に考えれば分かる。敵だって狡猾だ。

 俺たちの動きを警戒してるはずなんだ。

 ゼルノスが俺を見て、少しだけ目を細めた。

 そして俺に


「確かに、その通りです。単純な入信では疑われます。だからこそ、藍沢さんにはそれらしい理由が必要になりますね」


 そう返す。

 さらにガルザムがそこに静かに補足した。


「ナラッカにとって、藍沢さんは天魔王シャイタン召喚の鍵。彼女が自ら教会に近づく理由が、奴らにとって納得できるものでないと、出てこないでしょうね」


 ですが逆に言えば、説得力があるなら出てくるはずです。

 1万年の悲願が叶う鍵が目の前にあるんですし。


 ガルザムの言葉に


 市子が手帳を閉じて、ペンをくるくる回しながら考え込んだ。


「……理由かぁ。私がナラッカ側に寝返る理由ね」


 寝返る。


 彼女の声が小さく響いて、俺は


 ……続いた言葉で驚愕した。


「私が詳しい事情を知って、マーシアハ教会で贅沢な暮らしをすることに目が眩んで、寝返ったように装うってどうかな?」


 市子が真剣な目でそう言っている。


「そういう人間、ざらにいるよね? お金とか地位とかに目が眩んで、正義とか仲間とか捨てる人。ナラッカなら、私がそういうクズだって信じてもおかしくないんじゃない?」


 ……ああそうだな。

 俺たちの仕事では、そういう人間をざらに見て来た。


 一時の欲望で妻や夫を裏切ったり。

 捨てたり。


 子供を金を得るための道具にしたり。

 あっけなく捨てたり。


 ざらにあったよ。

 珍しくないな。


 でも……


「……市子、お前」


 お前からそんな下種な発想が出るなんて。

 そう言いかけたが、俺はそれを飲み込んだ。


 ……言うべきじゃない。

 俺の勝手な感傷だ。


 そしてそんな俺を他所に


「それなら、バイルも出てくる可能性が高いですね」


 ゼルノスが頷いて、市子の提案を肯定した。


「お金の力は凄まじいですから。説得力はあります」


 それにガルザムが目を細めて、付け加えた。


 ……市子。


 俺は市子に下種を演じさせることと、敵地への潜入をさせることに対する心理的な抵抗を、どうしても消し去ることができなくて


「無理するな」


 ……そんなことを言ってしまう。

 だけど


「御幸君、大丈夫だよ」


 市子は元気な声で言ったんだ。


「私は御幸君の助手で、これまでその役割でトチったこと無かったと思うけどな」


 そう、笑顔で。

市子はこの作品のヒロインなので。

こういうときに働かないとな。


読んでいただき感謝です。

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