第95話 ナラッカたちの狙いは
別荘の地下牢から市子を救い出し、俺が修行で使っていた場所。
あの、遺跡のような古びた館にやって来た。
外からの見た目は不安になるけど、中は普通。
中に入ると市子は少し驚く。
「中は綺麗じゃん」
「まぁな」
……声は潜めて。
同行しているガルザムやゼルノスに聞かれると気まずいし。
そして広間に通される。
大きなテーブルで、俺たち4人は席に着き。
向き合い、話し合う。
「改めて……助けてくれてありがとう、御幸君」
「いいよもう、そのことは。……それより悪いな。休みたいだろうに」
市子が連チャンで、この打ち合わせに出てくれたことを感謝した。
あまり時間は置けないんだ。
向こうは待ってくれないから。
俺は思い返す。
念写で見てしまった法王バイルの非道の数々……。
薄暗い部屋で、母親が自分の子を差し出す。
1才くらいの小さな子供たちがバイルの姿に怯え「まま」「おかあさん」と泣き叫ぶ声。
なのに、母親は笑顔でそれを見てて。
バイルはそんな子供たちの頭を掴み、プシュケーを奪い尽くして殺していく……!
誰にも庇われず、果実か何かのように命を摘まれる子供たち……!
胸が締め付けられる。
吐き気がする。
怒りが抑えきれない……
「絶対に地獄に送ってやる……! 自分のしたことを思い知れ……!」
俺の呟いた声が、低く震えてた。
「御幸君?」
市子の声で我に返る。
彼女が心配そうに俺を見ていた。
手帳を広げ、ペンを握ったまま。
「あ、ごめん。声に出てたか」
無理やり笑ってみせる。
あんな光景、知ってるのは俺だけで十分だろ。
「私が聖母体質っていう厄介体質で、それでナラッカが欲しがってるんだよね?」
その言葉に、俺の頭が一気に動き出した。
そうだ。市子がナラッカにとって特別な理由がある。
将軍ベルゼブが大胆な手段で市子を確保しようとした理由。
法王バイルがわざわざ出てきた理由。
どれも異常事態だろ。
その理由って……?
「市子、お前……何か気づいてるのか?」
俺が聞くと、市子は頬を指先で掻きながら苦笑いした。
「うーん、私の存在がよっぽど大きいのかな、って」
だってそうでしょ?
御幸君が倒したベルゼブって幹部。
私さえ確保できたらあとはどうでもいいって感じじゃん。
その言葉で
俺は色々見えないものが見えた気がした。
……確かに。
あいつ、正体がバレることに何も躊躇してなくて。
俺に「逃げたければ逃げて良い」とまで言った。
確かに変だ。
そこで近衛戦士の2人が口を開く
「それはまあ、どうでも良いんでしょう」
ガルザム。
「天魔王シャイタンの召喚を成し遂げられれば、後はもう正体を隠す必要ありませんから」
ゼルノス。
……どういうことだ?
この2人、何を知ってるんだ……?
俺が目で促すとガルザムが
「天魔王シャイタンは……」
話してくれた。
ナラッカたちが何をしようとしているのかを
曰く……
魔界を創造したのは天魔王シャイタンらしい。
そしてシャイタンはそのためにその力を使い果たし、今は胎児レベルまで弱体化しているそうだ。
それは1万年経った今でも回復には至っておらず……
この状態で呼び出せば、シャイタンは天下無敵の帝王存在どころか、虫以下の無力な最弱存在らしい。
なので……
呼び出したときに、全盛期の力を取り戻せるだけのエネルギーが要る。
そのために……
「事前に膨大な量のプシュケーを用意する必要があるんです」
ガルザムに代わり、ゼルノスが厳しい目でそう締めくくった。
……そういうことか。
だから市子が手に入ったと判断したから、宝くじに当たった人間みたく、色々耐えるのを止めたってことなんだな……?
そこは納得した。
しかし……
それだと、また別の疑問が出て来るよな……?
天魔王シャイタンの真実。
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