第83話 突然に現れたもうひとり
俺は動けなくなった。
それは、全力で放ったメギドブラストによる疲労だけでは無かったと思う。
これまで完全に決まれば必ずナラッカを討伐できた必殺技が通用しない相手に出会ってしまったんだ。
頼みの綱が、完全に切断されてしまった……!
「ふん。心折れたようであるな。……1分やる。逃げたいなら逃げるがいいぞ」
吾輩としても、これ以上戦闘が続き、超レアモノの聖母体質の女が傷つく展開は避けたい。
そう、馬鹿にしたような様子もなく、情けをくれてやる、そんな感じで
俺にそんなことを言って来たんだ。
俺は……
それで火がついた。
「ウオオオオオオオ!!」
勝算も何もない。
メギドブラストが通じない以上、もう打撃格闘だけしかないけど。
突っ込み、蹴りや突きを打ち込むが。
ベルゼブは特に回避しなかった。
……己のタフネスさに絶対の自信があるのか!
そしてそれが、自惚れでは無いなんて。
詰んでんじゃねえかよ……!
「……1分経ったぞ」
その言葉が来た瞬間、蹴り足が飛んできた。
俺にはスロウの目があるから、それを回避する行動は取れたが……
そこから、ラリアット気味に腕を叩きつける攻撃を打ち込まれ。
俺は回避できず、文字通り吹き飛んだ。
壁に叩きつけられ
壁を砕き貫き
建材に塗れて、廊下に投げ出される。
鎧を着装してなければ、確実に死ぬダメージ……
強い……強すぎる……!
そのとき
俺の鎧の着装が解除され、鎧は依り代にしていたデジカメに戻ってしまった。
ダメージを受けすぎた……
『……まずい。ミユキ、逃げるんだ』
タケルさんの言葉。
そんなこと……
出来る訳ねえだろ!
市子は小学校から知ってる幼馴染なんだ。
見捨てる選択肢はそもそも無い!
切れる人間じゃ無いんだ!
『でも、もうお前に勝ち目は……!』
「うるさい黙れ亡霊!」
必死の思いで立ち上がる。
そこに、ベルゼブがのそりと壁の穴から現れて来る。
通りにくい部分を自分で砕きつつ。
「……ほほう。聖戦士の正体は藍沢市子の同行者であるか。……まさかまさか。であるな」
俺の正体がバレた。
だけど……
今はそれどころじゃない。
この化け物から市子を奪い返し、逃げる方法を考えないと……
「まぁ、これから殺す相手の正体が今更分かったところで大した意味はないな」
こきり、こきりと。
腕を回し。
「さあ、殺してやろうぞ……」
もはや戦闘モードでは無いベルゼブ。
鎧を着装していない聖戦士など、相手じゃないってか……?
悔しいが、それはそうだな……
クソがッ……!
化け物がッ……!
ベルゼブはゆっくりと近づいてくる。
まるで警戒していない様子で。
俺は覚悟を決めた。
……死ぬ覚悟を。
だが、可能な限り前に進んで……
市子を……
そう思い、俺がベルゼブを睨み据え、飛び出すために身構えたとき。
ザッと。
俺の目の前に、別の誰かが現れた。
まるで俺を守るように……
それは……
女の子だった。
黒い女性用スーツに身を包んだ。
衣装から考えるに、成人してるのか……?
背がいいとこ中学生くらいしかなくて、成人してるように思えないけど。
髪は黒髪でツインテール。
それに眼鏡を掛けていて……
肩越しに見える顔つきは、かなり可愛い系で整っている気がする。
で……こんなときに何だけど……
胸がまぁ……身長の割に大きかった。
何なんだ、アンタ……?
俺がそう、問おうとしたとき。
彼女は胸にぶら下げていたペンダントを掴み。
こう宣言した。
「玲瓏ーッ!」
同時にその場が輝きに包まれ。
その場に鎧の戦士が現れる。
……俺の鎧と似たデザインで。
色は青。
これは……聖戦士の鎧?
驚愕で動けなくなる俺。
そんな俺を庇う位置で立ち、彼女は言った。
強い声で。
「将軍ベルゼブ! メギド様の命により参上! お前に彼を殺させはしない!」
玲瓏で聖戦士の鎧を着装した彼女は、青い炎を手に発生させ。
そこから鞭のような刃を持つ武器……
所謂蛇腹剣を創造した。
それを振りかざし、叫ぶ。
彼女のその名を
「この聖戦士ガルザムが相手だ!」
とうとう、主人公以外の聖戦士が。
(死んだ奴じゃない。生きてる奴)
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