第81話 聖母体質
「ふざけるなッ!」
恐怖はあった。
タケルさんから何度もベルゼブの強さについては聞かされていたから。
ベルゼブは汚い手でタケルさんを殺した。
……だけど
それは別に、そうしないと勝てないから、じゃないんだ。
ベルゼブは人間を見下している。
だから、人が獣相手に罠を張るように、楽に勝ちたいからそうしただけなんだ。
……別にハンターはさ、獲物を狩るのに「卑怯だから」なんてことは考えないよな?
それと一緒なんだよ。
まともに戦ってもベルゼブは強い。
交戦経験があるタケルさんも、喰らえば即死があり得るという攻撃を躱しながら、必殺のメギドブラストを決める機会を伺い続けていたという。
そんな相手に俺はどうすれば……?
でも、気持ちで負けるわけにはいかないから、俺は己を奮い立たせてそう叫んだ。
そんな俺の声にベルゼブは嗤った。
「……まるで悲鳴ではないか。無理をするな」
余裕。
絶対に勝てるという確信がある存在の態度……!
俺は隙を伺うために訊ねる。
「何故その女性を狙う……?」
するとベルゼブは
「星の導きで、先天的に良質のプシュケーを持つ人間を生む女、という存在があるのだよ」
吾輩たちはそれを聖母体質、という名で呼ぶのだが。
ベルゼブは語った。
聖母体質……
それは人間の女性だけにある特殊体質。
その女性が子供を産んだ場合、1人で数人分のプシュケーと同等のエネルギーが摂取できる子供が生まれる。
その体質であるかどうかは、その女性の名前と誕生日の日付によって決まるらしい。
遺伝では無いそうだ。
でも、だからこそ気づいたんだろう。
キズナネットの会員登録には、本名の登録と生年月日の登録が要るんだよ。
何でも、お金が動くサービスの会員登録だから、偽名はまずい。
そういう理由だった。
でも、本当のところは……
こうして、聖母体質の女を探す目的だったのかもしれないな。
しかし……
そこまで聞いて俺は血の気が引いた。
まさか……
「お前ら、その女性を出産マシーンにする気か!?」
俺の言葉に平然とベルゼブは
「その通り。当然であるな」
そう返し、さらにこう続けた。
「……この女の場合はさらに特殊。……数倍どころではない。数千倍だ」
……マジか。
それを聞き、俺は絶望的な気分になる。
こいつらにとっては市子が簡単に諦められないエネルギーアイテムだってことだろ。
だから……
『……将軍ベルゼブは、市子を諦めたりはしない。市子を守るには、ベルゼブを倒すしかない……!』
そんなことは分かってるよ!
どうすれば……どうすればいいんだ……!
「うおおおおおおお!」
雄叫びを上げ、怯えをかき消す。
そしてサイドステップを繰り返し、ベルゼブの死角に回り込もうとする。
だけど
『ミユキ!』
タケルさんの警告が来た。
死角から攻めたつもりだったのに。
こっちを見もしないのに、ベルゼブの頭部から決断の青い稲光が弾け。
同時にベルゼブの裏拳が、ノールックで飛んできたんだ。
全く予想してなかったから
喰らい、ぶっ飛ばされる俺。
壁に叩きつけられ、壁にクレーターが刻まれた。
『ベルゼブは蠅の複眼で世界を見ている。……奴に死角は無い』
……マジかよ。
最悪じゃないか……!
ついでにいうと動体視力もすごい。
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