第51話 人気ヨウチューバー
「夜勤ってなぁ……まぁ、深夜手当付くんだけどさ」
俺は車を持っていない。
別に無くても生活できるから。
普段は電車とバスしか使ってない。
車の運転は嫌いなんだ……
……ただ、今回はレンタルした。
無いと困る状況になったら困るからだけど。
俺は依頼人の家の近くで、車を駐車して……
依頼人からの連絡を待つ。
……欠伸。
ねむ……
終わったら寝よ。
ハンドルを握りながら。
そんなことを考える。
……これは探偵の仕事で。
その依頼は「息子が深夜に出ていくことを止めない。悪い友達と付き合っているのかもしれない。調べてくれ」というもの。
必然的に夜間の仕事になるから、手数料で深夜手当を要求した。
それでも依頼人はやってくれという。
……だったらやるしかないよな。
あーあ。
夜勤やだなー。
でも、俺しかやれる奴いないもんなー。
市子はもう帰宅してて寝てるはず。
明日は事務所、市子だけで回すのか……
俺がいないから、事務所は本格始動はできないから……
明日の仕事は雑用だけで終わりそうだな。
……ちょっとだけ、市子が羨ましくなる。
社会人としてマズいな……これは。
そんなことを思っていたら、メールが来た。
スマホを見ると「息子が出掛けたようです」と。
……おっけ。
普段あまり運転しないから、運転することに不安になりつつ、ゆっくりついていく。
こんな深夜にどこに行くのかね?
ゆっくり車で尾行し、そして……
(おっ)
依頼人の息子が数人と落ち合い、ワゴンに乗った。
どこかに行くようだ。
どこに行くのだろう……?
ワゴンを追う。
運転の様子に後ろ暗さを感じないから、おそらく犯罪系では無いと思うんだけど……
するとだ……
ワゴンは廃墟だとか、トンネルだとかを回った。
で、トンネルと廃墟の1つで気づいた。
(ああ、ここ心霊スポットじゃん)
廃墟は廃病院で、入り込むと深夜に家に電話が掛かって来るっていう噂のところで。
トンネルは侵入前にクラクションを3回鳴らすと誰かが乗り込んでくるという噂の場所。
その、トンネルで3回クラクションを鳴らしたところで気づいたんだよね。
ああ、そういやそんな噂あったな、って。
で、明け方まで車で走り回り。
空が白みはじめたあたりで解散。
その現場を一応、カメラで撮影した。
このツアーの主催者を押さえておきたい。
……その後、その主催者……
筋肉質の朗らかな顔つきの巨漢……
心霊関係で調査したら、判明した。
ブルル宮道を名乗ってる、動画サイトで生放送をやってる、所謂ヨウチューバーだ。
ジャンルは当然心霊系。
都市伝説を中心に、地域の怖い話で生放送を盛り上げる人気者。
『ハーイ! 木曜夜9時になりましたぁ! ブルルちゃんねるにようこそー!』
……調査の一環だ。
俺は事務所のパソコンで今、その生放送の過去ログ……アーカイブって言うんだっけ?
それを見ている。
サイズの小さな緑のシャツを身に着けたガタイの良い男が、底抜けに明るい表情でホワイトボードの前で話をはじめていた。
聞きながら、思う。
……なんだか、思わず聞き入ってしまう話し方だな……
個人事業で深夜手当ってどうなるのかね?
その辺、ちょっと分からないんだけど……
自分としては、自分が社長でもそういう設定するのは公平だと思うんだけど……
読んでいただき感謝です。
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