第45話 誰が話した!?
「俺だって、自分がアホだったのは分かってる」
酔いが回って来て。
田堰氏は自分語りを始めた。
彼は昔のタイプの人間で。
大手の会社の工場長まで出世した。
出来ない人間に罵倒混じりの指導をしながら。
だけど……
工場長になってしばらくして。
突如、自分にハラスメントをされたという通報が相次いで。
引きずり降ろされたらしい。
……どうも、彼の周囲の人間は前々から憎々しく思っていたけど、自分の出世に響くとまずいから黙っていた。
だけど、これ以上彼が出世することを許せなかった。
……こういう構図のようだ。
……ハラスメント気質の人間が上になると、被害が拡大するからな。
もう我慢できない、ってもんだったのか。
で、工場長から名ばかり課長に降格され。
ショックと屈辱で震えていたら……
会社の女性社員が、自分に「ざまあみろ」と言った気がして。
発狂して怒鳴りつけてしまったらしい。
それを理由に、人事が動き。
精神病を疑われて……
最終的に解雇だ。
退職金は出たらしいけど……
納得できなかった彼は、家でも酒浸りになり。
再就職活動も投げ出していたら……
妻子が去って行った。
……気の毒だけど、当たり前だ。
夫婦の家庭での役割を放棄したら、それは離婚理由になる。
で、彼はさらに狂って、女性政治家の垂井明日花を憎悪するようになった。
女の身で、事実上男の世界である政治の世界に切り込んでる姿が、自分を退職に追い込んだ女子社員と重なったのが原因らしい。
で……テロを起こした。
そんな自分の転落人生。
原因は全て自分にある。
それに、黒岡さんに弁護して貰って説教されて直視し。
悔い改めたそうだ。
(……だったら、何で今頃)
黒岡さんに言いがかりを掛けに行ったんだよ?
そう思ったけど。
それは……
「別れた妻と娘が……自殺したんだ」
コトン、と日本酒の入ったマグカップをちゃぶ台に置き。
彼はポツリと言った。
……彼は、泣いていた……
「遺書に『元夫が恥ずべき犯罪者なせいで、将来が閉ざされました。恨みます』って……」
……さすがに何も言えなかった。
自分の過去の犯罪のせいで、妻子が自殺した。
その責任から逃れたいがために、黒岡さんに噛みついたのか。
……本質は八つ当たりだから正当化はできないけれど
その流れは理解できた。
同情って意味じゃ無いが……
哀れだ。
そして話している間に。
田堰はガクンと崩れ落ちて。
……寝た。
ナラッカには毒が効かないので。
この時点で、彼がナラッカである線は限りなくゼロになった。
『……彼がナラッカである可能性は考えなくていいな』
脳内でタケルさんが俺と同じことを言った。
……しかし。
(別居していたのに、どうして遺書が見れたんだ?)
酷いな。
絶対誰かが見せたんだろ?
別居してたわけだし。
そんな遺書、見せんなよ。
何で別れた夫宛てに書かれているのかで察しろや。
……酷過ぎる。
そのせいでこの人は傷ついて、また自暴自棄になったんじゃないか。
自暴自棄になった方が悪いって、それは何か違うだろ。
そこにイラついた俺は
「玲瓏」
……玲瓏し聖戦士の鎧を召喚し、変身した。
この人がどういう経緯でそんな酷い遺書の内容を知ってしまったのか知りたかったんだ。
まさかそれを訊くために起こすわけにもいかないしな。
それに辛いことを話させるのも酷だし。
で、そいつのことが分かったら、何か一言言ってやるつもりだったんだけど……
(この人、何でそんな酷い遺書の内容を知ったんだ?)
そう念じて念写したら。
……えっ?
「……どうしたの?」
俺が即座に玲瓏を解除し、変身を解いたので。
隣で見ていた市子が俺にそんなことを言った。
俺は
「……今、念写したんだけど」
話す。
「うん」
頷き、市子は聞いてくれた。
俺の方も戸惑ってる。
まさかあんなものが見えるなんて……
俺が見たもの。
それは……
「……この人、あの記者に遺書の内容を教えられたらしい。……さっき、外で会ったアイツ」
「えっ?」
……ちょっと待てよ。
それってさ……!
何が問題なのかは次回。
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