第29話 ゼイモンの恐怖
「ああそうかい。だったら平行線だな」
ゼイモンはイラついた声で
「まぁ、僕は諦めないけどね! 1万年前みたいに、プシュケーしか美味いものが無いからと、大して腹が減ってないのに食べ散らかしていたら、また地獄の断食だからね!」
そう言い放ち、踏み込んで来た。
そして怒涛の連撃。
無駄のないラッシュだった。
俺の身体の急所を狙い、鉤突きや裏拳、正拳、前蹴り、廻し蹴り。
休みなく襲ってくる。
防戦一方だ。
俺はスロウの目で技の空隙を何とか見つけ、反撃の突きや蹴りを入れようとするけど
その度、ゼイモンは姿を消して
「知っているかい? プシュケーって、特級の日本酒に似た味がするんだよ。やめられない、美味い味なんだ!」
俺の背後に出現しているんだ。
余裕たっぷりの様子で
俺がそれを予想して、振り向きざまに裏拳や蹴りを入れても、届かない。
向こうもそれを予想しているのか、出現位置を散らしている……!
「人の命の味が、酒と同じだって言うのか!?」
俺の言葉に、ゼイモンは頷き
「ああ、その通りだ」
そして
「知っているかい!? 日本酒は、ずっと味のレベルが上昇し続けているんだ! 進化し続けた味なんだよ!」
興奮気味に蘊蓄を語る。
そして、だから、と続けて
「1万年前は、プシュケー以上に美味いものは無かったんだ!」
大きく腕を広げ、まるで舞台の俳優か何かのように芝居がかったポーズで語る。
1万年前と、今は違うんだと。
「今は違うけどさ! 美味いだけなら、匹敵するものは沢山あるからね!」
その声は喜びに満ちていた。
「ブルーマウンテンのコーヒーや、たい焼きとかね!」
こいつ、それが好きなのか……!
化け物のくせに、人の食べ物の味を賞賛する。
その様子に、俺は困惑があった……
「ホント人間は素晴らしいよ! 腹を満たすためだけに人命を奪うのは僕だって嫌だ!」
こいつが共存を訴えるのは、そこもあるのかもしれない。
だけど
「だったら人を殺すな!」
俺としてはそれ以外、無かった。
人を殺さないと、まともに生きていけない怪物を認めるわけにはいかなかった。
ゼイモンは、俺のその言葉がイラついたのか
「だからそれは無理だって言ってんだろぉ!?」
そう言い、その手のひらをこちらに向けて
その瞬間だ。タケルさんが
『危ない! 避けろッ!』
鋭い警告を発し、それに俺が言われるままに、軸ずらしをするようにサイドステップすると
ヤツは紫色のエネルギー波を放って来た……!
タケルさんの警告にただならぬものを感じたせいで、ギリ回避に成功できた……!
輝く紫のエネルギー波が、俺のすぐそばを駆け抜けていく。
躱した後、俺は
「……ビームまで撃つのかよ!」
呻くようにそう言う。
「使うと少し腹が減るから、あまりやりたくないがね」
戦慄する俺に、少し溜飲が下がったのか。
穏やかにゼイモンは語る。
今のは「魔光波」だ、と。
「ちなみに本気で撃ってないよ。ちょっと脅かしたかっただけだから」
……本気でなくて……
俺を直撃せずに、代わりに魔光波が命中した壁を見る。
……綺麗に、拳大の丸い穴が開いていた。
本気でなくて、これかよ……!
「……何とか僕の考え、認めて貰えないかなぁ?」
戦慄する俺の様子に気を良くしたのか。
ゼイモンはやたら穏やかに、優しく。
再度そんな提案をしてきた……!
BLEACHの虚閃、ネーミングセンスいいよねぇ。
とても真似できんわ。
でも、この手のお話は、破壊光線の基本技をそのまま破壊光線と言ってはいけないのがお約束だから……
読んでいただき感謝です。
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