第26話 ノーブルクラス
魔針盤の指し示す方向に従って、走る。
魔針盤の有効範囲は半径200メートルくらいで、魔針盤の指し示す方向は、ナラッカの居る方角では無く、ナラッカに到達するための最短ルートなんだ。
なので、人気のない道に入り込んでしばらく走ると、針の位置がグルンと変わり、ひときわ大きく震える。
その際に方向を変えて、可能な限り走り続ける俺。
相手はどんな奴か分からないけど、これまで戦った2体のナラッカは特に危なげなく倒せた。
だから今度も大丈夫だろう。
そう、思ってはいたが
ナラッカには上位の存在が居ると聞いてる。
タケルさんが命を落とす原因になった将軍ベルゼブというヤツがおそらくそれだ。
他にも居るらしいけど……俺はまだ、その辺を確認していない。
「玲瓏ッ!」
……人目が無いと判断し、俺は走りながら玲瓏を行い、変身した。
変身すれば身体能力が上がるし、ナラッカから正体を隠すこともできる。
……そうしないと、もし仕留めそこなった場合、一方的に俺の正体だけがナラッカにバレるっていう見過ごせないデメリットがあるからな。
やっとかないとマズいわ。
『ナラッカの前で玲瓏するのは聖戦士の習わしなんだが……』
(そういう危ない習わしは止めといた方が良いと思うぞ)
苦言を呈して来るタケルさんを、俺は一刀両断した。
俺は無理矢理聖戦士にさせられたんだから、そんな習わし知らんよ。
……そして。
何度目かの角を曲がったとき。
出くわした。
そこには怪人が1体。
そしてその足元に……
赤い服を着た中年女性が倒れていた。
カッと目を見開いて。
それはあの、喫茶店で出会った……クソ迷惑なオバサンだった。
その怪人……ナラッカ。
全体的なフォルムは、忍者に似ていたと思う。
だけど、黒装束でそうなってるわけじゃなくて……
全身を覆う黒い羽毛で、黒装束を形成し。
その頭部に黄金色に輝く、羊の捩じれた角を生やし。
口の部分が、鳥の嘴に似た黄金のマスク。
そう見える形になってて。
……異様なオーラを放っていた。
こいつ……違う……!
「ナラッカ……!」
気圧されないように気を張りながら、俺は強襲を掛けた。
瞬間的な判断だ。
余裕なんて持てない相手だ……!
悠長に名乗ってられるか!
だがナラッカは一瞬早く俺の攻撃に気づき、青い稲光を頭部から発し。
次の瞬間、消え去った。
……はっ?
当然のことながら、俺の目には目に留まらぬ速さなんて無いハズ。
常識的に考えて。
俺にはスロウモーションの目があるだろ……!?
だけど
「……いきなり攻撃か。聖戦士のくせに作法がなってないな」
声が背後からしたんだ。
弾かれたように振り返る。
俺から少し離れた位置に、黒衣の忍者風のナラッカは腕を組んで立っていた。
俺の後ろを取ったというのに、その姿に戦闘の意志が感じられなかった。
そしてそいつは
「僕は別に君らと敵対する気は無いんだがな。話し合って欲しいんだけど」
そんなことを言い出して
「僕の名はゼイモン。天魔王陛下から闇闘士の称号を賜っている、ノーブルクラスのナラッカさ」
そう、名乗って来たんだ。
ノーブルクラスだって……?
ゼイモンの名前はだいぶ悩みました。
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