第18話 お前らが何を考えているか知らんけど
さあ、どうやって接触するかだけど。
……まあ無難に
俺は店主に言ってフライドポテトを作って貰い、それを手土産に問題の男のテーブルに行き
「なぁ、ちょっといいか?」
ポテトを差し出しつつ、向かいの席に座る。
市子も俺の隣に。
男はなんだこいつらという目で俺たちを見たけど
ポテトを差し出したせいか、拒絶はされない。
俺は努めて優しい声で
「……何か嫌なことあったのか?」
そう、諭すように言う。
俺としては、こいつが種田に言われて依頼人に嫌がらせをしている張本人だと当たりをつけてるけど。
確証が無いからな。
だから
「動物を殺すことでそういうことを解消するのは良くないぞ。それではアンタの人生は好転しない」
こうして……
俺たちが勘違いしているというテイで接触したんだ。
説教しに来た、って感じで。
……コイツの格好からすると、プロのそういう犯罪者ではないように思える。
ひょっとしたらコイツ、種田に50万円を渡されて、言われたことを実行しただけかもしれない。
「……はぁ?」
目の前の男は、何言ってんだ? という顔をする。
だけど俺は
「まだ警察には言ってないけど、お前の使った果物ナイフはすでに見つけてある。だからやめろ。これ以上は……」
果物ナイフ。
犯人しか知りえない情報だ。
これを言えばコイツは俺が全部知ってることを確信するはずだ。
俺のプランとしては
俺は頼まれただけなんだ!
とコイツが弁解し、種田との関係をゲロしてくれる。
それだったんだけど
目の前の男の顔が強張って
突如店を飛び出していったんだ。
「あ、お客さん! お代!」
店主が叫ぶ。
食い逃げだ。
俺はすでにポテトの代金は、特別に作って貰ったときに払っておいたので、そのまま男を追って店を飛び出した。
何で逃げたんだ……?
別にまだ、種田に責任を押し付けて罪を軽減する方法だってあったはずなのに。
逃げる意味が分からない。
「御幸君」
市子も俺についてくる。
市子もわりと体力派ではあったから、俺の走りに食らいつくことはできるんだよな。
まぁ、かなりしんどそうだけど。
「無理しなくていいぞ」
俺の言葉に
「ううん、こうなったら最後まで見たいよ。ここまで首を突っ込んだら」
……市子にしてみれば、探偵ドラマのクライマックスを目前にして視聴を切るような真似はしたくないってことか。
ま、いいさ。
俺たちは男を路地裏に追い詰めた。
そこは結構広さはあるけど、袋小路。
「もう逃げられないぞ」
俺はそう言い放つ。
隣で市子がハァハァ言って膝に手をついていた。
「なぁ、話をしよう。俺はまだ……」
警察には言ってないから。
それをもう1回言おうとしたんだ。
だけど
「……面倒くさいな。もう、やっちゃっていいよな?」
男は心底嫌そうに顔を歪め
次の瞬間
バリッ、と。
衣服と皮膚を突き破るようにして、その姿を変えた。
えっ?
……それは。
両腕が竜の首で。
本来の首も腕と同じくらい長い。
残りの部分は爬虫類っぽく、臀部に太い尻尾が生えている……
怪物……いや、ナラッカ……!
『こいつ、ナラッカだったのか。……こいつはバーレム。3つの首から吹雪のブレスを吐く』
タケルさんの解説。
「えっ……?」
市子の顔が真っ青になっていた。
ただの猫殺し犯を追いかけていただけだったのに。
化け物に遭遇するなんて考えて無かったんだろうな。
当たり前だけど。
「ヒャーッハハハ! 俺様の姿を見たからには、逃さん! もうお前たちのプシュケーは俺様のモノだぁ!」
中央の人面が高笑いする。
……そういうことだったのか。
種田はナラッカに、依頼人への様々な嫌がらせを依頼していた。
そんな可能性、全く考えて無かったよ。
俺は
「そうはいかねぇよ……」
ナラッカ・バーレムを睨み据えながら、胸ポケットからデジカメを取り出して
「お前らが何を考えているか知らんけど、ブッ倒してやる」
そしてそれを高く掲げて
「……玲瓏!」
玲瓏を宣言し、俺は聖戦士への変身を行う。
玲瓏……聖戦士が、聖戦士の鎧を召喚し、着装する現象を指す言葉……!
そして俺は聖戦士の鎧を瞬着し、コンマ1秒以下で変身を完了させたんだ。
聖戦士の使命を果たす。
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