第16話 市子から
「えっ」
えええ~!!
……案の定。
市子は顎が外れんばかりに驚いて
「ええっと、どういう手品? トリックが全く分かんない!」
しげしげと俺を見つめた。
俺は
「トリックじゃない。偶然、成り行きで俺はスーパーヒーローに変身できるようになった。超能力だってあるんだぞ」
身振り手振りを交え、これが真実であると主張。
「超能力って何?」
当然の質問だよな。
それについては……
「バカ力と、カメラの能力」
「カメラ~? カメラって……」
ビームを撃つ能力とか、炎の能力とかじゃないの?
……そんな、ヒーローが持ちがちなベタな能力を上げて来る。
まぁ、俺も最初はそう思ったさ。
カメラでどう戦うんだ、ってさ。
だから
「カメラを馬鹿にすんなよ? この状態の俺は、相手が何かを行動を開始するときに決断する際、脳から出る電気信号の余波が見えるし、気合を入れるとモノの動きがスローに見えて……」
そこで俺は閃く。
「市子、何か本持ってない?」
……一番手っ取り早いのはこれだよね。
市子は言われるままに、自分の鞄から小説の文庫本を取り出して渡して来た。
ええと……超越魔人シャンデリア?
えらく渋いの読んでんな……
20年くらい前の特撮作品だろ?
そのノベライズか……
まぁ、今はそれはどうでもいい。
俺はその文庫本の1頁目から50頁目くらいまで暗記するつもりで読んで、返した。
そして……
「俺は涼宮明、探偵だ。ハードボイルドに憧れて……」
1頁目からの文章を、暗唱して見せた。
俺が暗唱した内容が、小説の文章と完全一致しているので、市子が目を丸くする。
……彼女は幼馴染だし、俺が所謂天才でないことは知ってるので。
「……分かった。信じるよ。御幸君はスーパーヒーローの力を手に入れたんだね……」
20頁目くらいまで暗唱を続けると、俺の言葉を彼女は信じてくれた。
文庫本を閉じて、そして
「で、何で私に明かしたの? 何か意味があるんだよね? 本来、バラさない方がいいチカラなのはすぐわかるし」
彼女が次に訊いたのは、そっちだった。
どこで手に入れたのかと言われるかと思ったけど、そうじゃなかった。
そっちを訊かれたら、夜中にトラックが事故る現場に遭遇して、そこでトラックから飛散した光の粒を浴びたら何故かチカラが手に入ってた、って作り話を返そうと思ってたんだけど
「どうしてこうなったのかは訊かないの?」
だから思わずそう訊くと
「そっちは今本題じゃ無いでしょ? まぁ、1回病院で精密検査はするべきだとは思うけど」
どうせ情報が少なすぎるのは分かってるし、そんなの今聞いても無駄じゃ無いの?
そういうことは後で聞くから
……だと。
さいですか……。
「なるほど。他の能力ね……。最初から全部決まってるわけじゃ無いのか」
「頭に浮かんだのはざっくりと『カメラ由来の能力』なんだ」
ナラッカを除いた形で、俺が抱えている情報を話し。
市子に伝える。
彼女はコーヒーを机に置いて思案して
「だったら……」
いくつか候補をあげてくれた。
「心霊写真」
「念写」
おお……
オカルト方面は発想が無かった。
やってみないと分からないけど、やる価値はあるな……
「ありがとう。助かった」
そして俺は彼女に礼を言い。
玲瓏を解除して、変身を解いたんだ。
新能力。
次回、試してみる。
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