第130話 メギドを滅する者
迫る魔光波の巨球、22階のコレクションを守ろうとするメギド。
……俺はそれを待っていた!
「今だ!」
俺は飛び出す。
輝く右手を引っ提げて。
メギドは心底不愉快そうに
「……無駄なんですよ! 他のメンツの魔光波の連撃と、22階のガード、それが合わされば貴方のメギドセイバーが通じるとでも? 甘いです!」
羽虫の無駄な抵抗と、俺のこの行動を断じるか。
……そう思うなら、思えば良いさ。
そっちの方が……
ありがたい!
俺は意識を集中する。
俺の右手に集中させたメギドブラストのエネルギーと……
シャイタンの発射した魔光波のエネルギー……
そしてゼイモンの発射したエネルギーにも……!
3つの力をまとめ上げ、練り上げるイメージ……!
……俺はシャイタンと戦ったとき。
俺はシャイタンの魔光波を捻じ曲げた。
だから俺は……
他人の撃った魔光波も操れるんだ!
俺の制御下にある、膨大なエネルギー……
それを吸収。
練り上げ纏め上げ、俺は光の剣を創り出した……!
「……え?」
メギドの目が見開かれる。
これはさすがに……
予想してるわけねぇよなぁ!!?
これが……
お前を殺すために創り出した光の剣……!
……メギドスレイヤーだ!
「ウオオオオオオオオオ!!」
俺は両手で紫光の長剣を大上段に構え
そして――
「これで終わりだッ!」
その剣──メギドスレイヤーが、すさまじい輝きを放つ。
メギドは驚愕し、戸惑い
『ミユキ! 斬り捨てろ!』
ああ!
俺はタケルさんの言葉に頷いて
振り下ろす
その振り下ろした光の剣を
メギドは咄嗟にメギドサイズの柄の部分で受け止めようとするが……
甲高い魔光波結晶が砕ける音と共に
メギドスレイヤーの刃はメギドのオーラの鎧を砕きつつ、その身体を袈裟掛けに斬り捨てる。
メギドの目が見開かれ
「がああああああああ!!」
獣のような悲鳴……叫びをその口腔から迸らせた。
ガクリ、と膝を折り
メギドの顔に、初めて恐怖が浮かんだ。
「そ、そんな……!」
俺は振り下ろしたメギドスレイヤーを片手に。
「……何か言い残すことは? 神様よ……?」
驚くほど冷たい声でそう告げる。
俺の言葉を受け
メギドは……
「私は聖戦士の力の源泉……私を倒せば聖戦士の鎧は消滅します……」
青褪めた顔で、ぶるぶる震えながら。
縋る目で俺を見上げ……
そう、最後の抵抗……命乞いを口にした。
私を倒せばお前の力は失われるぞ!?
それでも良いのか!?
そう言いたいらしい。
そして……それはおそらく嘘じゃない。
……聖戦士の鎧がメギドの力由来なら、メギドが消滅したらそりゃ、無くならない方が変だ。
俺の脳裏に、聖戦士の鎧由来の拡大された能力の数々が浮かび上がる。
とても便利な能力の数々……
それを手放すのは……
「そりゃあ、嫌だな」
俺のそんな言葉に
「で、でしょう……? 考え直して……」
メギドの顔が追い詰められたネズミのような表情になる。
シャイタンなら絶対に浮かべないであろう、卑しい顔だ。
それを見つつ俺は
「でも、そうだとしても……」
メギドにとって、最も聞きたくないであろう言葉を口にする。
「お前に踊らされて無意味な殺し合いを続けるよりマシだよな」
メギドが目を剥いた。
信じられないものを見る目だった。
「聖戦士の鎧は要らないんですか!? 特別な個人であることに未練は無いんですか!?」
その叫びに
俺はこう返す。
「あるに決まってる! でも、そんなもん他人を裏切ってまで欲しがるもんじゃ無いな!」
『ミユキ……』
タケルさんの言葉。
タケルさんが思っていること。
正直、想像できてるか自信ないけど
彼の
『気にするな。やれ!』
その言葉に。
……分かった!
さよならだ。
メギドの顔が歪む。
追い詰められ、絶望した獣の顔に。
「や……止め……!」
俺は無言でメギドスレイヤーを真横に振り抜いた。
光の剣がメギドの首を切断……斬首した。
「アアアアーッ!」
同時にメギドの悲鳴が夜空に響き。
その身体が。
頭が。
漆黒の翼が。
光の粒子に分解し。
空気に溶けて。
メギドは……この世から完全に消滅した。
……1万年もの間、自分の利益のためだけに。
人間だけでなく、同胞まで。
あらゆるものを騙して来た化け物の最期だった。
戦いは、終わった。
俺は大きく息を吐き、メギドスレイヤーを解除した。
同時に玲瓏を解除する……
……いや、勝手に解けた。
聖戦士の鎧だったデジカメが、元に戻ったんだ。
デジカメが、足元の畳に落下する。
そして
『ミユキ……』
ただの男になった俺に
タケルさんが言ったんだ。
『お別れだ』
当然消えるわけですよ。
彼も。
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