第129話 コレクション
メイコ食堂本社ビルの最上階「社長の間」
そこで、俺たちとメギドの戦いは続いていた。
度重なる魔光波により、この最上階はほぼ吹き飛んでいた。
俺たちは夜空の下で戦っている。
メギドの漆黒の6枚の翼が夜空を切り裂き、紫の光の大鎌──メギドサイズが俺たちを襲う。
俺のメギドセイバーはメギドのオーラの鎧を貫けない。
メギドブラスト=魔光波の密度が違い過ぎるんだ。
その高密度の魔光波で出来たメギドのオーラの鎧は、こちらの攻撃を全て遮断して来る。
メギドの魔光波の密度は、俺たちの力を圧倒的に上回ってる……!
「ぐああっ!」
そのとき。
とうとう、こちらが崩れ始めた。
ゼイモンの左腕が、肘から切断されたんだ。
切断されたゼイモンの左腕は、青黒い血を撒き散らして吹き飛び、畳の上に転がると同時に塵になって消滅した。
「フフ……そろそろ終わりそうですね」
メギドは嗤う。
「何のこれしき……!」
ゼイモンは戦意を失ってはいない。
だけど……劣勢だ……!
メギドは勝利が近いと判断したのか
涼しい顔で微笑み
「……ふふ、そろそろ疲れてきたでしょう? 無駄な抵抗は止めて、楽になりなさいな」
その傲慢な声に、何も打つ手が無い自分。
悔しい。
悔しいが……
本当に打つ手が無い。
何か……何かメギドの弱点を突く方法は……!
必死で考え。
そのときだった。
ふと頭に浮かんだ。
大切なものを……
シャイタンとの戦いで。
あの2人……ガルザムとゼルノスがやったこと……
そういえばメイコ食堂本社の内部構造を念写で見たとき……
22階に妙な部屋があった。
それは……
箸袋コレクション保管庫。
メギドの趣味だ。
所狭しと、額に入れられた箸袋が飾られている部屋……!
アイツ、尋常じゃ無くそれに執着してたよな……?
会社を興した理由もそれだって楽しそうに語っていたよな……?
俺はニヤリと笑い、叫んだ。
「おい、メギド!」
メギドの目が俺に向く。
俺は
「お前の箸袋コレクション、22階の保管庫にあるよな? ……この真下の部屋だっけ?」
メギドの顔が一瞬で真っ青になった。
「な……!? あそこにはもう2度と入手できない限定品が……! ちょ、ちょっと、何!?」
今まで何も動じなかったメギドが、コレクションについて言及されると明らかに狼狽えていた。
……部下が戦死しても、その所業を糾弾されても動じなかったのに。
そんなにコレクションが大事かよ……!
俺は
「シャイタン! メギドのくだらない箸袋コレクションを、ここから魔光波で焼いてやれ!」
俺の言葉に
シャイタンが即座に反応する。
唇の端を吊り上げて、こう返して来る。
「承知じゃ!」
シャイタンの両手の間に紫の光の球が出現し、みるみる膨張していく。
すさまじい魔光波のエネルギーチャージ……!
青褪めた顔でメギドが叫ぶ。
「やめろおおおお!」
メギドはその膨張していく魔光波の球体からコレクションを守るため、足元にオーラのバリアを拡大していく。
その様子に合わせ
「死ねメギド!」
そこに飛んで来た、ゼイモンからの加速を交えたフルチャージ魔光波。
それはメギドの胸に命中したが
「……無駄ですよ! 22階を守ったくらいで私のオーラの鎧の強度が落ちたりはしないんです!」
無傷。
それをイラついた声でそう切って捨てるメギド。
でも俺は
「ゼイモン! 諦めるな! 撃ち続けろ!」
そんな俺の言葉にゼイモンが
「承知だ瀬名さん!」
残った右手から連続で、フルチャージ魔光波を連打する。
それは全てメギドのオーラの鎧に弾かれる。
「無駄だって言ってるでしょうがぁぁぁっ!」
メギドの叫び声が響く。
そして……
「喰らえええええ!」
とうとうシャイタンの特大魔光波が打ち出される。
……これは恐ろしい威力だろう。
それは理解できる。
けれどもきっと、これでもメギドには通じないだろう。
メギドの表情が焦ってはいないから。
……だから……
これは本命じゃ無いんだよ!
旦那のガンプラ捨てたった問題。
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