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第124話 人魔同盟

「……我が不肖の姉メギドは、人間界の人間の数を観察し、十分に増えたと判断したときに我々に帰還の合図を送る役でこちらに残したナラッカだった。だが……それが裏切ったのだ」


 その言葉に、俺の胸にシャイタンへの同情と、メギドへの怒りが沸き上がった。

 メギドはシャイタンの双子の姉だ。


 そしてシャイタンはナラッカの帝王で、自分に従う臣民を導く責任がある。

 その姉が……


 あろうことかナラッカを裏切った。

 おまけにそれは、個人の強固な信念や、譲れない正義のためじゃ無かった。

 全部自分のためで……自分だけが幸せに暮らすためだった。


 それがどれだけ苦しいか。

 帝王としてもだけど……双子の妹として、絶対に許すわけにはいかないんだろう。


 メギドのやったことは……

 人間の立場でも、ナラッカの立場でも最低の振る舞いだ。


 シャイタンが大きく羽ばたき、ゆっくりと地上に降りて来る。

 その瞳には、怒りと悲しみが混じっていた。

 ゼイモンが地面に跪いたまま、静かに呟いた。


「陛下……僕も、メギドの所業を許せません」


 俺はシャイタンに手を差し出した。


「シャイタン、一緒にメギドを倒そう。俺たちなら、アイツの企みをぶっ潰せるはずだ!」


 シャイタンの視線が、俺の手に向けられる。

 その瞳に、ゆっくりと決意が宿り始めた。


 そのときゼイモンが進言した。


「陛下、上奏致します」


 跪いて臣下の姿勢を崩さずに


「……人間との同盟……僕も依存ありません。ご決断を」


 その言葉に、シャイタンの心が決まったようだった。

 シャイタンが俺の手を握った。


 俺はシャイタンの綺麗な手を握り返す。


 ……よし


「……決まりだな。俺、シャイタン、ゼイモン──この3人で、メギドを倒す!」


 ゼイモンが俺に視線を向け、頭を下げる。


「シャーロイル、共闘することになるとは思わなかったが、よろしく頼む」


 シャーロイルか……。

 思えばこの名前をでっち上げたのはコイツのせいだったっけ。


 なんか妙な運命を感じた。


 まあ、まずはだ。


 メギドはメイコ食堂の本社ビルにいるはずで。

 そこに市子が今預かられている。


 俺は念写の力を使い、市子の状況を確認した。

 意識を集中すると、映像が浮かぶ。


 市子は本社ビルの一室にいる。

 そこでテレビを見ていた。

 ニュース番組だ。


 ……メギドに人質にされてる様子は無いな。


 ホッとしたが……

 

 俺はシャイタンとゼイモンを見る。


 ……このまんまでは行けないよな。

 ナラッカの姿のまま、聖戦士の姿のまま。


 メイコ食堂本社には行けないだろ。


 誤魔化さないと。


 ……覚悟を決めるときか。


(タケルさん。彼ら2人に俺は正体を晒す)


 一応、事前に断る。

 タケルさんからの返事は無かった。


 ……答えたくないのかもしれないな。


 感情的には否定したくて。

 理性では認めるしかないから。


 俺はその気持ちを想像しつつ


 玲瓏を解いて、元の姿に戻った。


 着装していた鎧が依り代だったデジカメに戻り、普段の俺──瀬名御幸の姿に戻る。


 ノーネクタイの白シャツと、茶色のストライプスーツ。

 そして茶色のシルクハット。 


 この姿にゼイモンが驚く。


「君がシャーロイルだったのか」


 えっと。

 ゼイモンは、リアルの俺を知っていたのか……?

 困惑と動揺があった。


 俺の知り合いが、実はナラッカだった……?


 ゼイモンは


「お見せしよう……僕の人間体を」


 ゼイモンが小さく笑い声を立て、ナラッカの姿……黒い忍者風の姿から。


 紺のスーツ姿で清潔感あって、頼りがいのありそうながっしりした紳士の姿になる。


 ……黒岡弁護士だ。


「えっ!? 黒岡さん!? アンタナラッカだったのか!?」


 俺は思わず怒鳴っていた。

 あのクールで正義感溢れる立派な弁護士先生が、ナラッカだったなんて! 

 ゼイモンは静かに答えた。


「申し訳ない瀬名さん。だが、僕も君のことは嫌いではなかったよ。価値ある善良な人間だと思っていた」


 ……一応謝ってはくれるけどさ……


 複雑な気持ちだった。

 尊敬してた奴がナラッカだった……


 でも今は仲間で……


 俺は深呼吸して、ゼイモンに手を差し出した。


「……今は共闘するしかない。よろしくお願いしますよ黒岡先生」


 ゼイモンがその手を握り返す。


「よろしく、瀬名さん」


 ……協力しなきゃな。

主人公がライバルキャラの正体を知る。


読んでいただき感謝です。

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(反響を実感できるのは書き手の喜びです)

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