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第122話 隠されていた真実

 ガルザムとゼルノスだったものが、ナラッカに変身した。


 青いナラッカ……ガルザムだったものがガルザムと同じ声で言った。


「もう誤魔化し切れないようですね」


 同じく赤いナラッカ……ゼルノスだったものが続ける。


「死んでください、瀬名さん」


 その変わらず優しい声に、恐怖する。


 ……なんだこれ?


 アイツら、いつからナラッカだったんだ? 

 どこかで成り代わられたのか? 


 混乱しつつ俺は叫んだ。


「お前らいつガルザムとゼルノスを殺した!?」


 俺の叫びに

 ゼルノスが、まるで子供をあやすみたいな声で


「別にそんなことはないですよ。最初からそうです」


 そう、返答する。


 ……は!? 


 最初から!? 

 俺の頭が真っ白になった。


 一緒に戦ってきたガルザムとゼルノスが、ずっとナラッカだったなんて!?


 俺は、こいつらが嫌いだった。

 人の心が無い、ドライ過ぎると思っていた。


 だけど、共にナラッカの野望を阻む聖戦士の仲間だと思っていたんだ。

 嫌いでも、仲間意識は持っていたんだ……!


 俺は今までこいつらと過ごした時間を思い返す。


 1カ月と少しの、それなりの時間を……!


 食事を一緒にしたこと。

 修行の手伝いをして貰ったこと。

 一緒に決起の儀式として、酒の杯を呷ったこと。


 それが、隙になった。

 

 その瞬間、青いナラッカの蛇の尻尾がビュンッと伸びてきた。

 俺の腹に直撃し、激痛が全身を突き抜ける。

 ……鎧を着装しているのに。


 これはガルザムの蛇腹剣の特性……!


「ぐああっ!」


 あまりの痛みに、念動力の制御が乱れる。


 俺の体が墜落し、議事堂の敷地内に叩きつけられた。

 地面が凹み、その衝撃と痛みで行動不能になった。


 そこでさらに、赤いナラッカが両手を広げた。

 その広げた両手の上に、魔光波の球体が無数に発生する。


 ……あれはゼルノスの散弾メギドブラストの特性か……!


 ……まずい、終わった。


 そう思った瞬間だった。


 バンッ! 


 赤いナラッカが吹き飛んだ。

 同時にすでに発生し、発射準備を整えつつあった魔光波が消滅する。


 ……黒い影が一瞬で割り込み、すさまじい連打を叩き込んだんだ。


 ゼイモンだ! 


 あれはアイツの加速技、サウザントブロウ! 


「キャアアアア!」


 赤いナラッカはゼルノスの声で悲鳴をあげた。


 ゼイモンはさらに加速し、吹っ飛んだ赤いナラッカを追跡。

 瞬時に追い突き地面に叩きつけられた赤いナラッカの頭を力いっぱい踏みつけ、右手から魔光波を胴体にぶち込んだ。

 チャージタイムが見えなかった……!


 チャージタイムを加速でぶっ飛ばしたのか……!


 その魔光波で胴体に大きな風穴が開き、赤いナラッカは


「メ……メギド様ァァァァ!」


 そんな叫びを上げ、爆散した。

 光の粒子が空に舞い、消える。

 青いナラッカが叫んだ。


「クッ、ゼルノス!」


 青いナラッカが翼を広げ、逃げようとする。

 だが、その瞬間、何か凄まじい力で地面に押し潰される。


 ……シャイタンの念動力だ!


 青いナラッカの体が地面に押しつけられ、動けなくなる。


 そこにシャイタンの両手から放たれた大出力、常識外れの魔光波が、青いナラッカを飲み込んだ。


 アアアアアアーッ!


 青いナラッカはそんな悲鳴を遺し、爆散の様子すら掻き消されてこの世から消滅する。


 俺は呆然としていた。


 あの2人……ガルザムとゼルノスの正体はナラッカだった……?

 

 そして死に際に「メギド様」って叫んだ……?


 俺は這うように立ち上がり、頭を整理した。


 ゼイモンの言葉──「人間に神として扱われるとナラッカは飢えが消える」。

 ガルザムとゼルノスが、あんなに必死で否定した理由。

 それは何故だ……?


 そういや、言ったよな?

 メギド様は……「自分は空腹に耐えている」って。


 大いに矛盾する。

 ゼイモンの言葉とは。


 だってメギド様……いや、メギドは。


 神、なんだろ……?

 聖戦士の世界に関わる人間にとって……!

 じゃあ、空腹になってたらおかしいよな?


 だったらゼイモンの言ってることは嘘なのか?


 嘘だったら何故あのときシャイタンは動揺したんだ?

 何か腹が減らないな、って思ってたのでは?


 ……なんか、繋がってきた。

 もしかして、メギドは……


 自分を人間に神として崇めさせて、自分と自分に忠誠を誓う身近な一部のナラッカだけを飢えから解放するシステムを作っていたのか? 

 そのために、聖戦士って存在を作ったのか? 


 もしかしたら、ナラッカをこっちの世界に召喚する方法も……?


 俺はシャイタンを見上げ、呟いた。


「……お前も、知らなかったんだろ? 神様扱いされると、腹が減らなくなるってさ……?」


 シャイタンの表情が強張る。


 その瞳に、動揺と困惑が混じる。

 そこでゼイモンが一歩進み出て、シャイタンに跪き。


 自分の主君に上奏した。


「陛下、僕の仮説はおそらく本当です。どうか、信じてください」


 俺は合わせて自分の右手に発動させていたメギドセイバーを終了させた。

 戦意の無さを彼女に示すために。


 そして言った。


「シャイタン! これが本当なら、俺たちは戦わなくていい! 一緒にメギドを倒そう!」


 ……おおよそ、歴史上の聖戦士が誰一人言わなかったことを。

ここで第11章は終了です。

次回から最終章です。


読んでいただき感謝です。

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