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第118話 あのとき何があったのか

 国会議事堂の敷地で、俺たちは天魔王と対峙していた。


 純白の髪を風に揺らし、六枚の翼を羽ばたかせ空中に存在している。


 その赤い瞳は、まるで俺の心臓を握り潰すような威圧感で俺を射抜いていた。


「……聖戦士ども。これほど我が臣民を殺めた以上、許さぬ」


 シャイタンの声には本気の怒りが込められている。

 激しい殺意が溢れていた。


 そして


「死ぬがいい」


 シャイタンの声が、冷たく響く。

 凄まじい威圧感を伴うその言葉。

 俺は自分を鼓舞し、地を踏みしめて耐えようとして……


 だけど


「……と言いたいところだが」


 ……突然、変わった。

 怒りに震えていたのに、急にトーンが変わったんだ。


「ここから引き返し、2度と我が前に現れぬと誓うなら、見逃して遣わすぞ。……どうする?」


 ……見逃すだって?


 鎧の中で俺は思わず眉をひそめた。


 ……何だそれ?


 シャイタンの声には、怒りと矛盾が混じってる。

 まるで、俺を殺したいのに、殺したくないみたいな。


「……何故だ? 前もわざと俺を逃がしたよな?」


 あの会議室の戦い。

 シャイタンは俺をボコボコにした後、最後のトドメを刺さなかった。

 明らかに刺せたのに、だ。


 あのとき、なんか違和感あったんだよな……。


 俺の言葉にシャイタンが一瞬、目を細める。

 そして、静かに口を開いた。


「我にも、我が不肖の姉のメギドと同じく未来予知の力があるのだ……。ただし、姉ほどの正確性はないがな」


 シャイタンは言う。


 自分の行為が後に致命打に繋がるとき、たまにそれが分かる、と。


 俺は息を呑んだ。

 未来予知……だって?

 

「あのとき、我がこの世界に帰還した日。お前を討ち取ろうとした瞬間、我は知ったのだ。その行為は破滅に繋がる、と……何故そうなるかは分からぬ。だが……お前を殺すことは、我を破滅させるらしい」


 シャイタンの声は、どこか苦しげだ。

 まるで、自分でもその予知を信じたくないみたいに。


「だから、我はお前を殺せぬ。故に……生きて、我から離れるなら……それでいい」


 俺はシャイタンの目を見つめた。

 あの赤い瞳に、嘘はなさそうだった。

 でも、頭の中でいろんな考えがぐるぐる回る。


 俺が死ぬことで、シャイタンに降り掛かる何らかの破滅的災厄? 


 ……何だそれ?

 

 市子のことか? それとも、もっとでかい何かか? 

 だけど、すぐに結論は出た。


「お前がこの国にいると、この国はこの世の地獄になる」


 SNSで見た魔女狩りの投稿。

 人間が人間を密告して、ナラッカに差し出す日常。

 そして、バイルがシャイタンを呼ぶためにどれだけの子供を犠牲にしたか。

 あの会議室での絶望が、頭をよぎる。


「シャイタン……お前が何を予知しようが、俺の結論は変わらない」


 俺はメギドセイバーの手刀を突きつけて、シャイタンに宣言する。


「折角だけど、断るよ。悪いな」


 シャイタンの瞳が、一瞬揺れた。

 そして、ゆっくりと翼を広げ、こちらに右手を向ける。


「……そうか……ならば我も容赦せぬ!」


 次の瞬間、すさまじい力が俺を押し潰そうとした。

 シャイタンの念動力だ。

 空気が重くなり、地面がひび割れる。

 ガルザムとゼルノスが「ぐっ!」と呻いて膝をつく。


 だが──


「……何!?」


 シャイタンの声に驚愕が混じる。

 俺は平然と立っていた。

 念動力の圧力が、俺の周りで霧散してる。


「……1カ月も経てば、人間は大きく変わるんだ、天魔王!」


 俺は裏庭での修行を思い出す。

 木を引き抜き、念動力を極限まで高めたあの瞬間……


 シャイタンの力だって、俺にはもう通じない!

 

「人間を舐めるな!」


 俺はメギドセイバーの手刀を袈裟の軌道で振り。

 その紫に輝く右手を真っ直ぐに突きつけて。

 シャイタンに宣戦布告のように言葉を叩きつけた。


 戦いが、今、始まった!

次回、決戦開始!


読んでいただき感謝です。

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