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運命の神様はきっと意地が悪い

(当たり前だ)


あの女子高生と会える事を、少し期待していた自分に、心の中で突っ込みを入れる。


まず昨日と同じ時間の電車に乗り換えはしたが車両が違う。

それに、向こうも昨日の今日だ、違う車両、違う時間に変えているかもしれないし、逆に昨日だけがいつもと違う時間だったのかもしれない。

また、痴漢に遭った事を家族に言ったのなら車での送迎になったかもしれない。


そもそもだ、見つけたところでどうする?

俺の事を知らない女子に話しかけられるか?

もし仲良くなったところでどうする?

高校も、住んでいる地域も、性別も違うのに何をどうすれば良いんだ?


今まで恋愛経験がないのはもちろん、家族以外の異性と接点が薄い俺にとって、同年代の女子と仲良くなる事は未知の領域である。


そんな、見つけられなかった残念さと、その子との出会いを諦められるという安心の狭間で葛藤する中、運命の神様が手助けをしてくれた。



視線を移した先、俺の近くで人混みの間から伸びてる手を。


(お前はおるんかい!)


つい心の中で突っ込んでしまう。


昨日捕まらなかったから味をしめて、性懲りも無く獲物を探しているのか。

幸いにも今回はまだ被害に遭っている人はいないようで、魔の手は宙を彷徨っているだけだ。



(握って睨みつけてやろう!)


そもそも、昨日の痴漢がなかったらこんなモヤモヤした気分にならなかったんだ!


鬱憤を晴らす先を見つけ、更に、昨日は凶行を止めてやったという自負から、気が大きくなっている俺はすぐに行動に移した。

昨日より魔の手との距離が近い為、身動みじろぎ数回で掴める距離に達し、相手が勘付いて手を引っ込めぬよう、すぐさま握った。



ただ、怒りに任せていたからか、重要なミスを犯した。


その手が昨日の手と違うのに気付かなかったのだ。



ー にぎっ ー


(ん?)


握った手は思いのほか小さく、華奢だけど柔らかい。


「きゃっ」


相手は不意に手を握られた事に驚き、小さな悲鳴を上げる。


「あれ?」


手の感触に違和感を持つ前に、小さく可愛い悲鳴が聞こえ、俺の思考は更に疑問符に埋め尽くされた。

そして、悲鳴に気付いた周囲が状況確認の為に身動ぎし、俺の目前に隙間ができる。


そこにいたのは、俺が手を握っている相手はーー



俺が予想していたような男性ではなく、同年代の、肩くらいまである髪の毛がゆるりふわりとした、とても可愛い女子高生であった。


「「あっ・・・」」


お互い驚き、近距離で見つめ合いーー


「きゃぅ・・・」


顔が真っ赤になった女子から力が抜け、床にへたりこんでいく。


「えっ・・・えっ?」


俺はその様子を、ざわつく周囲と共に、度重なる驚きからショートした頭で眺めていた。

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