この気持ちはなんだろう
「もりおか・・・けんた、くん・・・えへへ」
誰にも聞こえないように、でも、口に出したくて、今日知ったばかりの彼の名前を、ゆっくり呟くように声に出す
それだけで笑みが自然と溢れ、少しだけほっぺたが熱を持つ
「ね・・・えちゃ・・・」
ふぃ〜・・・これは・・・あっついねぇ・・・えへへ
「ねえ・・・め・・・ちゃん?」
でも、嫌な熱さじゃないの
むしろ、とろけるような甘く幸せな熱ーー
「めえちゃんってば!」
「ひゃいっ」
幸せの余韻に浸ってると、突然直ぐ側で名前を呼ばれ、びっくりした私は思わず素っ頓狂な声で返事する
「やぁっと気付いた。何回も呼んでたんだよ?どうしたのさ、今日はいつにも増してぽや〜っとして」
そこには高校に入ってすぐに出来た友達、朝倉あさひちゃんがいた
勝ち気な目の形と活発そうなポニーテールで、あさひちゃんは気が強く怖そうな印象を持たれやすいけど全然そんな事はなく、今も人懐っこい笑顔を浮かべて動物の尻尾のようにポニーテールを楽しく揺らしている、とってもフレンドリーでチャーミングな女の子なのです
「むう、いつもはぽや〜となんかしてないもん。むしろ、べんでき女子だもん」
ただ、私の事を天然だとかのんびり屋さんだとよくからかってくるので、私はできる女だとその都度しっかり訂正しないといけない
「べんでき・・・便でき?まあ快便なのは良い事だけど、友達の便通事情を教えられるのはちょっと・・・」
「も、も〜!違うよぉ!勉強できる女子って事だもん!」
でも、こうやって揚げ足を取られる事もしばしば・・・
ううう、恥ずかしい
「はいはいめえちゃん、どうどう。あ~、なるほど『しごでき』の応用?斬新なアレンジで気付かなかったよ」
あさひちゃんは私を落ち着かせるように頭を撫でて、フォローになってないフォローをしてくる
悔しいから言わないけどそれがなかなか落ち着くの
「まあまあ、そんなにむくれないで。それで、『いつもはしてない』って事は、『今は』ぽや〜っとしてる自覚があるって事だよね?それって今日遅刻してきた事と関係あるの?」
あさひちゃんはなかなか鋭い
「えへへ、実はねーー」
特段秘密にするような事でもなく、むしろ、誰かに聞いてもらいたかった私は、今朝の出来事を少し照れながらあさひちゃんに報告した
その結果、放課後に彼、森丘健太君がいる牧陽高校に突撃するとも知れず




