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俺、器用貧乏なんですよ。  作者: さんまぐ
思い出作りその後ライブ編。(第537話~第540話)

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538/556

第538話 思い出作りその後ライブ編・再びのイイヒート。

今回はケーキセットを待つ間にライブが「今日は私のお願いを聞いて貰うからね」と言った。


「え?お願い?リナさんから止められてたよね?」

リナの名前を出して牽制するミチトに不満げなライブは「むぅ…」と言ってミチトをジト目で見た後で「でもマスターは言うことを聞くの。ザップを送ったのは私だよ」と言った。


そう、ミチトはクラシを送りに王都まで行きそのまま流れで麦の事を済ませたりしている間に正午をゆうに越えてしまい学校のあるザップをライブがロキと一緒に送り届けていた。

学校長はロキと寄付金を見て感謝の限りを伝えていた。


それを知ったミチトはライブ達に謝ったがやはり感謝と謝罪は足りていないわけで「う…、それは…確かに」と言ってしまう。

ライブは重ねるように「イブにも感謝してよね。私の転移術は二号が無いからチャージ待ちの間にイブが遠視術でトウテを見守ってくれたんだよ」と言う。


イブの名前が出てきてテーブルに突っ伏す形でミチトが「…マジかぁ…」と言うと驚いたライブが「え?イブは困るの?」と聞く。


「困ると言うかライブもだけど…」

そう言ってミチトの脳内には一緒に眠る日のイブとライブが居て、ミチトの部屋に入ってからずっと「私は準備OKだよ!」「いつでも良いよ!」「わぁ、今日…マスターと私…」と勝手に妄想してキャーキャーと盛り上がって抱きついて来るライブと甘い吐息を吐きながら「ミチトさん…ミチトさん…」と言って身体を密着させてくるイブがいる。

あのイブ…アイリスを見ていると何か間違いが起きかねないか心配になる。

イブとしては家族優先と言っているがあの状況で、仮にミチトが迫ればイブはイブではなくアイリスとしてミチトを拒むわけもなく受け入れる、一言で言えばミチトにかかっている状況になる。


思い出して渋い表情になったミチトを見て「どうしたの?」と聞くライブに「いや、やめておくよ」とミチトは言う。


相変わらずわからない事があると悶々とモヤモヤするライブが一瞬で不機嫌な顔になって「言ってよ」と聞いてくる。


傍目には浮気を問い詰める妻と誤魔化す浮気者の夫に見えかねない。

ヒソヒソ言われる前に諦めたミチトが「イブも2人きりの時には抱きついてくるからライブみたいに何を言い出すかって心配になっただけだよ」と言った。

ミチトが答えた事で気をよくしたライブが「え?イブも?」と言った後でふと何かに気付いた表情で「マスター、それってイブ?アイリスじゃないの?」と聞く。


「え?なんでそう思うの?」

「イブは「イブは家族優先だからマスターはマスターです!」って言ってたもん」


「イブも脇が甘い。と言うかわざと見せてる気がするな」

「まあ言われるかもね。だからマスターは私のお願いも聞いてよね」


「ええぇぇぇ?何するの?」

「まだ考え中だよ」


会話の後で運ばれてきたフルーツケーキとフルーツティーはミチトには前と味の違いを感じなかったがライブは成長した為か「あれ?前より美味しく感じる。中のフルーツがすごく良い匂い」と言っていた。


食後は国営公園を歩く。

「マスター、今度は困った子を助けに行かないでよね?またイイヒートが出てきたらお願い増やすからね」

「それは無いよきっと」


そんな事を言っても、まるであの日をなぞる様に帽子が風に飛ばされて池に落ちてしまいそうになり、その帽子を追いかける子供は落水の危険がある。


見かねたミチトが走って帽子と子供を保護すると案の定と言うかイイヒートが現れる。

イイヒートを見たライブは嫌そうに「…うわ、出たよ」と言ってしまう。

言われる自覚のあるイイヒートは申し訳なさそうな顔をしつつライブを見て「ライブさん…凄く綺麗…じゃなかった。少し待ってください」と言ってミチトが戻ってくるのを待つ。

そのイイヒートは長髪からかなり短い髪型になっていて背筋もしっかりとしていて姿勢がいい。


ミチトが戻ってきてイイヒートを見て「出た…」と呟く。



「折角のお時間をお邪魔してすみません!」

ミチトに気付いたイイヒートはキチンと姿勢を正して第一声で謝ると「兄さん達から今日はライブさんとスティエットさんが国営公園にいらっしゃると聞いて、ご迷惑を覚悟でお待ちしておりました」と言った。


イイヒートの言い方で話を聞く気になったミチトは「どうかしたの?」と聞く。

「はい!スティエットさんにサルバンへ連れて行って貰えたお礼が言いたくて来ました!後は第三騎士団に入団が決まったご報告とご挨拶です。

あの日、サルバン嬢とスティエットさんの剣技を見て目が覚めました!頑張ります!お邪魔しました!」

文字通り生まれ変わったイイヒートを見て嬉しい気持ちになったミチトとそれがわかって自分も嬉しくなるライブ。


「良かったよ。サルバンでは大変だったと思うけど耐えられたならイイヒート君なら大丈夫。頑張ってね。

後さ…俺からお願いなんだけど、今回保護した術人間の子達がもうすぐ王都に着いて第三騎士団に入団するから仲良くしてあげてね」

ミチトからお願いをされたイイヒートは嬉しそうに「はい!頑張ります!」と言うとダラダラ話す事もなく「失礼しました!」と言う。


そう言って帰ろうとしたイイヒートが足を止めてライブに「ライブさん、大人になられたと兄さん達から聞きました。凄く美しいです!もしよろしければ今度お食事にご招待させてください!」と言う。

その顔は前に会った時の軽薄な顔ではなく真っ赤で紳士的な顔に感じた。


ライブは一瞬息を吐いてヤレヤレと言う顔から笑顔になると「イイーヨ達も居てグループでいいならね」と言って微笑むとイイヒートは本当に嬉しそうに「ありがとうございます!」と言って足早に去って行った。


イイヒートの後ろ姿を見送りながらライブが「…マスター、スカロとパテラって何するの?人ってああも変われるんだね」と言う。

ミチトも嬉しそうに「本当、これでクラシ君の兄弟も変われると良いけどね」とサルバンに送り込んだクラシの兄弟の事を考えていた。


「でもマスター、一回は一回だからね?お願い追加だよ」

「え?マジで?」


「マジだよー」と言ってまた腕に抱き着くライブ。ミチトはライブを連れて公園を後にした。

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