第503話 宴会、呼ばれた人々。
宴会となったトウテにデイブ達とザップ、それとソリードを呼ぶミチト。
デイブ達は既に到着を知っていて、ザップとソリードは到着の報告を今か今かと待っていてくれた。
ザップとソリードは心から無事を喜んでくれた。
勿論デイブ達も喜んでくれたがそれ以上に「起きて早速良くやったわ!」と先程の広域伝心術を聞いていたティナが言った。
そして起きなかった理由を聞かれ、イブとライブの為に寝ていた話をすると「それも良くやったわ!見事よ!」と喜んでから成長をしたイブとライブを見て「まぁまぁ!実の娘より可愛い孫なんてどうしようかしら!」と喜び、その勢いで皆を唖然とさせていた。
「み…ミチト君、凄い方ですがどなたですか?」
困惑気味のアプラクサスに意地の悪いミチトとローサが左右に立つと「ああ、カスケードがバロッテスに命じて放った毒呪術の被害にあったロキさんのパートナーのマテさんのご両親で、俺の奥さんになってくれるリナさんのご両親ですよ」「ええ、カスケードのせいで大変だったのよアプラクサス」と言い、それを聞いた瞬間、涙目になるアプラクサス。
「み…みみみ…ミチト君?」
「アプラクサスさんはキチンと麦の代金で済ませたじゃないですか。余計な事は言いませんよ」
この言葉にアプラクサスが安堵のため息をつく。
デイブ達がリナと話している間にミチトはソリードの所に行く。
ソリードはトウテの人々と談笑をしていたがミチトが来ると話を中座してミチトの方に向かう。
ソリードは安堵の表情で「無事で何よりよ」と声をかける。
ミチトも照れ臭そうに「ありがとうございます。やっぱり最後は手甲でした。師匠の教えのおかげです」と言って手甲を見せるとソリードは「ふふ。ウチの人は喜んでるわ」と言った。
そこに来たシックが「ミチト君、こちらのご婦人は?」と聞いてくる。
ソリードが会釈をしたタイミングで「あ、ソリードさん、こちらはシックさん。貴族の偉い人です」と声をかけてシックには「シックさん、こちらのソリードさんが俺の師匠の奥さんで俺の第二の母です」と紹介をする。
シックが「初めまして、シック・リミールです」と挨拶をした所で「そしてシックさんは俺と一緒にソリードさんにクラシ君の事をお願いする人です」と続ける。
何も知らないソリードは「ミチト君?何の話?」と聞くとミチトは天に向かた人差し指をクルクル回しながら「あ、ソリードさんにお願いがあるんですよ」と言っている間にシックは真面目な顔で「ミチト君、ならクラシを呼ぶべきだね」と言ってクラシを呼ぶ。
すぐに皆と談笑をしていたクラシ・ヤミアールはシンジュを連れてやってくる。
「えっと、話がかなり飛んで居るんですが、ソリードさんに心を鍛えて貰いたい子が居て、その子がこの子…クラシ君です。クラシ君、この人はソリードさん。説明は後からするから挨拶をして」
クラシは直立で姿勢を正すと「はい。…お…俺、私はクラシ・ヤミアールです」と挨拶をした。貴族であるクラシの挨拶は貴族の感じがない平民のような挨拶でシックが頭を抱えてしまう。
しかしそれを気にしないソリードは笑顔で「はじめまして、ソリード・マートです」と挨拶を返してからミチトを見て「ミチト君?この子…ミチト君に似てるわね?」と言った。
「お、わかってもらえて助かります。この子も家で虐げられたり蔑まれたりしていて、それで自信は足りないんですが術使いとしてはかなり有能です。
この横の女の子はシンジュ。俺とイブ達みたいな関係でクラシ君が保護した術人間です。
クラシ君はまだ彼女を守れるだけの力や覚悟がありません。ソリードさんの所で少し心を鍛えて欲しいんです」
この言葉に何も知らないクラシも「え?ミチトさん?」と言ってミチトを見る。
「クラシ君、俺も昔は心も弱かったけど師匠とソリードさんのお陰で覚悟を持って生きれるようになったんだ。だから君もソリードさんから心を鍛えて貰って立派なシンジュのマスターになるんだよ。シンジュは道具ではないよね?でも今の君では早晩シンジュを悲しませることになる。君はそれでいいの?」
この言葉にクラシが真剣な顔でシンジュの顔を見て「…シンジュ」と呟くと、ライブが褒めた白い肌で柔らかそうな頬が特徴的なシンジュはキョトンとした顔で「マスター?」と声をかける。
やはりどこかまだスレイブの感じの残るシンジュを見てクラシはこの先を意識しているのだろう、一瞬の間の後で「ミチトさん、俺…シンジュの事をちゃんと幸せにしてあげたいです」と言った。
「うん。だからソリードさんにお願いしてるから君からもお願いするんだよ」
クラシは「はい」と返事をしてソリードを見て「ソリードさん。俺、頑張ります。心を強くしてミチトさんみたいに覚悟を持てる人になりたいです!」と言う。
ソリードも優しい笑顔で頷いた後で少し困った顔になって「ミチト君、フォルは居ないのよ?いいの?」と聞く。
「師匠が居なくてもソリードさんなら十分強いじゃないですか。それに心は師匠も俺もソリードさんが鍛えてくれたんですよ」
この答えが嬉しかったソリードが照れるように「もう…」と言った後でクラシを見る。
「クラシ君だったわね。私は一緒に暮らすだけ。シンジュさんとウチにいらっしゃい」
「ありがとうございます!」
クラシは受け入れて貰えるだけで嬉しそうに感謝を告げる。
危ういのに力があるからこそどうしても今行く必要がある。
「ご婦人…ソリードさん。すみませんがクラシ君をよろしくお願いします。生活費等の話はキチンと私が彼の両親にします。それにもし両親がゴネたら私が出します」
シックの真面目な面持ちにクラシが驚きの顔で「リミール様…」と言う。シックはクラシを見て安心させようと笑顔で頷く。
「ふふふ、まあいただけるのならいただきますね。クラシ君はキチンと育てますからご安心ください」
ここでミチトがふと思い出し「あ、そうだ。ソリードさん。シックさんが俺の事を調べていた貴族の1人で農家のおばさんにも問題無いって言っておいてください」と言うとソリードが驚いた顔で「あら、ミチト君を調べていたのはシックさんだったんですか?じゃあクラシ君の行く所もご理解いただけているんですね」と言うとバツの悪いシックが「え!?えぇ、まぁ…。あはは…」と焦ってしまう。
「ミチトさん、ソリードさんが強いって言うのは?」
「ソリードさんは怖いよ、間違ったことしたら鉄拳制裁だからね。まあ、簡単に言えばオーバーフロー前の…ここ最近の俺を不意打ちで殴り吹き飛ばせるだけの実力者だよ」
この言葉でクラシが一瞬ソリードを見てしまうとソリードは左手を頬にあてて「ふふふ」と照れて笑っている。
クラシはソリードを二度見した後でミチトを見て「え!?ミチトさんってオーバーフローの魔物を8000体も倒して、その後にキャスパー派の刺客を100から殴り殺したって…?そのミチトさんを殴り飛ばす?」と聞いてしまう。
シックはミチトが冗談を言っても嘘はつかない性格なのを知っているので早々に受け入れて「頼もしいご婦人だね」と言っている。
ソリードと言えばミチトの戦果を聞いて驚くどころか「あら、ミチト君はやはり強くなったわね。フォルも喜んでるわよ」とミチトを褒める。
以前なら謙遜をしていたミチトだったが今は素直に「はい」と言って照れていた。




