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俺、器用貧乏なんですよ。  作者: さんまぐ
ラージポットまでの道程。(第1話~第16話)
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第3話 利用される男。

2日目は途中から小雨が降ってきた。

「傷は痛むか?」

小隊長がミチトに質問をする。


「いえ、平気です。ありがとうございます」

「お前さんのチームには治癒魔術師が居ただろう?治して貰わなかったのか?」

大体怪我をしたまま移送をされるのは全滅したチームの生き残りなんかでミチトの居たR to Rであれば全員無傷なので怪我をしたミチトを回復させるのが当然のことだ。


「2人居ましたよ。1人は次の依頼の為に自ら温存、もう1人はサブリーダーに言われたのか俺に近寄ろうともしませんでしたよ」

「なんだそれ?本当に無茶苦茶なチームだな」


「ええ、俺も同感です」

ミチトは色々と思い出しているのだろう。

複雑な顔で笑う、


「まあ、そこら辺はまた昼飯の時にでもウチのが聞くと思うから答えられる範囲で答えてくれよ」

「ええ。昨日は話を聞いてくれてありがとうございました。おかげで少し気が楽になりました」


ここで小隊長が真顔になる。

「それで、昨日の続きを聞いていいか?」

「はい。俺は構いませんが…、いいんですか?」


「ここまで知っちまうとな…」

「すみません」


「なんで謝んだよ?」

「巻き込んでしまった気がして…」


小隊長はおおらかに笑うと「気にすんなって」と言う。


「王都の国営図書館に賊が押し入った事件は覚えてますか?」

「3ヶ月前のだろ?でもあれは依頼を受けた複数のチームの活躍で…、居たのか?」

ここまでくるとまさかと言う気持ちで小隊長はミチトに聞く。


「はい。俺は他のチームと関わらせて貰っていないので何チーム居たとか何も知りませんがその場にいました。

中に入った時、優先的に中を目指して賊の頭目を倒すように言われて居たので最速で中央を目指しました。

そうしたら最秘匿の中央室が開いてました」

「ちょ…待てよ…、そんな情報…」


「これだけでも公になればアウトです。

きっと各チームは多額の口止め料をもらった筈です。

あ、俺には口止め料なんて来てませんから」

「…お前さん…。とりあえず続けてくれよ」


「それで中央室には神話の原書や予言書、過去の出来事を後世に語り継ぐ為の本なんかも置かれていました。

多分賊も手には取ったのですが読めなかったので価値が解らなかったんでしょう。

あの本、タイトルからして古代神聖語や古代語で書かれてるんですよ」

「お前さん…まさか読めるのか?あれはモノ好きが学ぶ学問だぞ?」


「読めますよ」

「何でだよ?」


「器用貧乏なんですよ俺」

また泣きそうな顔で笑う。


「またそれかよ。それで?」

小隊長が口を開いた所でちょうど雨宿りを出来る場所があったから昼食にしようと言う話になる。

昼食は簡単に済ましている間に糸目の兵士は馬に水と草を与えていた。


「続きを午後聞いても良いか?」

「ええ、でもここでやめるのも大事ですよ?」


ミチトは昼食時に無精髭の兵士から過去の事とかR to Rの過去の脱法行為について聞かれるかと身構えたが「もう1人が馬の世話をしてるからまた夜話してくれよ」と言われた後で簡単に旅路は順調だと説明された。

ミチトはダカンから西には行ったことがなかったので「土地勘が無かったので助かりました」と感謝を告げた。


2時間の休憩の後、馬車は動き出す。

若い2人は牢の無い方に乗れば良いと言ってくれたが小隊長は先ほどの続きをしたいからかミチトと牢になっている方に乗り込んだ。


「続きを話してくれ。国営図書館では何があった?」

「中央室を奪い返すと様々な本がばら撒かれて居ました。その中に過去の出来事を記した本は投げ捨てられていました。

たまたま開いているページがダンジョンについて書かれていたんですよ。

1000年も前に同じ状況になったんです。

今も冒険者がこぞって入っていたり貴族の依頼で宝を求めて入るダンジョンは1000年前の名残です」

ミチトはそう言って微笑む。


「読んだんだな?」

「ご想像にお任せします。答えても聞いても良い事はない。今なら妄言に付き合ったで済みますよ?まあ司書官には「とても大切な本だと思うのですが読めないもので価値がわかりません」と言って渡しました」


「何でだよ?読めるなら重宝されてスカウトされたかも知れないんだぞ?」

すごく驚いた顔で小隊長はミチトを見る。

レアな学問の古代神聖語や古代語。それを読めるミチトはダンジョン攻略はもとより、図書館でも重宝がられる。

今ここでこうしていい人間ではない。


「え?そうなんですか?サブリーダーからは「知られたら牢獄行きの処刑台コースだから黙っておけ、有益な情報ならチームで共有するぞ」って言われていました」


…ここで小隊長は1つの結論に至った。


「お前さん、もしかしなくてもカモられ…いい風に利用されていたな…?」

「あー…やっぱりですか?」

自覚はあったようでミチトは困り顔で笑う。


「その情報はチームで共有はしたのか?」

「適当にボカしましたよ。「ダンジョンで滅んだ国の記録でした。当時は魔術も製鉄技術も甘くて苦戦したみたいです」って言っておきました。だからボーナス配給は無かったんでしょう」


小隊長は本当の事を言ってもあの連中ならボーナスにんてものは寄越さないと思ったが言わなかった。

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