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アバンの力

 アバンは火を吹いたドラゴンに水をかける。そして、


そのドラゴンの火を消した。また、ドラゴンは火を吹く。


するとまた、アバンが水をかける。アバンは、火が村や


森に飛び火しないように防いでいる。平和を好むアバンの


やり方だった。


 相手を傷つけるのはしたくないのだろう。でも、それは


その場しのぎだと言われたらそれまでだ。と思った。


それでも、アバンは火を消すために水をかける。



「よく見ろ!! あのドラゴンは火を吹くドラゴンを止めて


いるぞ」



 と、僕は言った。すると村人たちは、


ザワザワしだした。確かに二匹の様子を見ていると一匹が


もう一匹を止めているようにも見える。


 すると、火を吹くドラゴンがアバンめがけて火を吹き


はじめた。アバンは水と風を操り上手くかわしている。


そしてアバンが、もう一匹のドラゴンに向かって



「やめろ!! 落ち着け、こんな事をして何になるんだ」



 と、言っているのが聞こえた。僕は慌てて村人たちを


見たが、何も聞こえてないようで、二匹のドラゴンの様子


をみているだけだった。アバンの声は僕とミロクにしか


聞こえていないらしい。アバンは何度も、もう一匹の


ドラゴンに話しかけるが聞く耳を持たないようだ。


その内、アバンが上手く受けきれず、村に飛び火が


ふりかかった。慌ててアバンが村に水を降らせる。


しかしその火を消しきれず、村の一部に火がついた。


アバンは、その村の一部についた火に水をかけて火を


消した。すると村人たちがアバンに応戦をするように、


弓矢を飛ばしたり、槍を投げたりしたが、飛んでいる


ドラゴンには当たらない。そのうえ、羽をバタつかせて


弓矢や槍を落としてしまう。アバンが火の粉の処理に気を


取られている間に、火を吹くドラゴンが、僕たちのいる方


へ火を吹いた。 気がついたアバンが慌てて水をかけるも間


に合わず、何人かが負傷を負ってしまう。そして僕も軽い


ヤケドを負ってしまった。その僕を見てミロクが、


駆け寄ってくる。そして



「じっとしてて」



 と言い、ヤケドした箇所に手を当てるとヤケドは


みるみる、なくなり痛みもしなくなった。



「ありがとう」



 と言うと、ミロクは村人たちの所にも行き、鞄の中から


回復薬を取り出し、彼らに渡していた。


 すると、僕の頭上にとても強く大きな光を感じ、上を


見るとそこには、夜をも昼にしてしまうほどの強い光を


アバンが放っていた。その光は金色だったが次第に


ピンクゴールドに変化していく。


 すると、ドラゴンの火の粉で、焦げていた森が


元の緑鮮やかな森に戻る。そして、村の焼け焦げも消え


元通りの家に戻った。


しかも、建てたばかりの新築の様になっている。


 そしてその光を浴びたドラゴンの目は正気に戻り、


とても穏やかで、おとなしくなっている。アバンは



「君の住処に戻るんだ」



 と言うと、おとなしくその言葉に従い飛び去って


しまった。この光は避難先の方まで包み込んでいた。


もちろん僕らも浴びている。とても優しい穏やかな気分に


なる。村人たちからも、恐れや怒りが消えたらしくアバン


に向かって手を合わせる者もいた。そして、アバンの光が


消え、僕たちの側にアバンが降りてきた。


 するとさっきまでアバンに手を合わせていた村人たちが


後退りする。まあ仕方ないか。ドラゴンがこんなに近くに


居たら普通はビビるよね。それに、僕が感じたアバンの


優しさを村人たちは、固定観念で感じられないんだなぁと


思った。それにしてもアバンにあんな能力があったなんて


凄いや。ミロクも驚いていた。でも、これからどうした


もんかなぁ。この状況をどうしたらいいのやら。すると、


急にアバンがまた、上空へと舞い上がった。村人たちは


一瞬たじろぐが、上空で浮いているアバンが何もしない


ので、少し安心していた。側にいたミロクが、村人たち


が、怖がっているのを感じたアバンは上空へ上がったので


はないかと言った。僕はそれを聞き、上空にいるアバンを


見上げた。すると、



「ぼくはここにいるよ。村の人たちを怖がらせたい訳


じゃないから」



 と、アバンの声がした。


僕は、アバンを見てうなずいた。


アバンは村人たちの心を感じとっていたのだ。

 

すると、村人の1人が



「助けてくれたかどうかなんてわからない。結果的に


そうなっただけで違うかもしれない。やっぱり退治した方


がいいのでは……」



 と言った。すると別の村人が



「何、いってるんだ。村に火がつきそうになったのを


消してくれたじゃないか。どうしてドラゴンがあんなこと


する必要があるんだ。きっと助けてくれたんだ」



 と言う。口々に自分たちの思いをぶつけていた。すると



「じゃあ多数決をとってみれば?」



 と、村人の1人が口にした。賛成した村人たちは多数決


をとってみた。すると、賛成と反対は半々になって


しまった。村人たちは、決めかねているようだった。


すると、村人の1人がこう言った。



「半々ということはどちらに転んでもおかしくない。


じゃあ最初の計画通り退治しよう。今、退治せずに後で


後悔するよりいいじゃないか!!」



 と言う。すると



「そうだ」



「そうしよう」



「それがいい」



 と口々に言う、一方で



「助けてくれたのに、それはひどくないか?」



 と言う声もでていた。そして



「そうだよ」



「そうだ。俺たちの都合だけで、そんなことしていい


のか?」



 と言う村人もいた。本当に真っ二つに割れてしまった。


僕は、退治しようと言う村人たちに質問した。



「退治しようと言う人たちは、どうしてそう思うのです


か? それに、どうやってあなた達はこのドラゴンを退治


するのですか?」



「それは……」



と村人の1人は言い、言葉に詰まる。そして続けた。



「……でも、今は、優しいドラゴンかもしれない。


でもいつなんどき、さっきのようなドラゴンに豹変して


しまうかわからない。だったら、今、退治した方がいい」



 と言う。矛盾している。退治する方法もないのに。でも


確かに村人からしたらアバンが何もしないという確証も


ない。僕は続けて聞いてみた。



「じゃあ、どうすればこのドラゴンがそんなことをする


ドラゴンじゃないと信じれますか?」



「俺たちと、意思の疎通ができないのにそんなの


無理だろう」



 と、村人の1人が言った。他の村人たちも同意して


いる。


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