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アバンの異変

 すると、そこには、ミロクしかいなかった。



「アバンは?」



「たぶん、消えてる」



「じゃあ、この間のように解除魔法でといてやれば?」



「それが、気配はするんだけど場所が特定できない。


それにこれは魔法と言っても薬を飲んで消えてるから、


解除薬を飲ませないといけないんだ」



「それはどこにあるの?」



「ここにある」



 とミロクは言い、手に持っている小さな茶色の小瓶を


見せてきた。



「場所が特定できないってどういう事?」



「魔法の時は、ボクがかけて消えるだろ。そして、


消えはするけど見えないだけで、存在そのものは消えて


ないから、ボクの手を当て息を吹きかければ解除できる


んだ」



「うん。そうだね。この間はそうだった」



「でも、今回はボクが急遽、即席で作った飲み薬だった


んだ。村人の行動が気になって、心配で何かあった時の


ために、アバンに渡しておいた。でも、なるべくなら


使わないようにと、注意もしておいた。副作用の心配も


あったから。どんな作用が、出てくるかわからなかった


から。それに今回は、見えなくなるだけでなく存在も


消える。だから、誰かが入ってきてもアバンに、気づかず


出ていってくれればいいなと思って作ったんだ」



 というミロクの、表情がどんどん暗くなっていく。



「アバン!! アバン、聞こえる? ここにいて、聞こえる


なら返事して!!」



 と僕は叫んだ。すると



「それはさっき、ボクもやった。でも声がしない」



 とミロクが泣き出しそうな顔になった。すると何かが、


僕の肩の辺りにいる気配を感じる。そして耳元で何かを


囁くような、小さな声がしている気がした。


でも僕に聞こえない。



「ミロク!!!! しっかりして、アバンはたぶん今、僕の


右肩の辺りにいる感じがする。ミロクは猫だから耳が


いいんでしょ。気持ちを落ち着かせて、よく聞いて


あげて!!」



 とミロクに言うと、突然ミロクは、毛づくろいを


はじめた。猫は、落ち着く為にも毛づくろいをすると


聞いたことがある。それを見て、やっぱりミロクは


猫なんだなぁと 改めて思った。ミロクは落ち着くと、



「アバン、もう一度、ボクに話しかけて!!」



 と言う。すると、僕の右肩の辺りの気配が消える。


僕はミロクをジッと見ていた。



「あっ」



何かに気づいたようだった。するとミロクが



「ちょっと待ってて」



 と言い、ここからでていく。しばらくすると、草の束の


ようなものを持ってきた。それに火をつけ、その火を


消すと煙がでてきた。そしてその煙でここの空間を


いっぱいにした。その煙は目にしみることもなく、とても


いい香りで、僕はその様子を見守った。


すると、ふわぁ〜と何かが浮かび上がった。




 そうアバンの姿が浮かび上がってきた。でもそれは人間


の手のひらサイズのアバンだった。でもハッキリと見えて


いる訳ではなく、なんとなくぼんやりと煙の形がアバンに


なっている。ミロクは持っている解除薬をアバンに飲む


ように言った。すると、アバンは口を開ける格好をして


いるように見えた。その口、めがけてミロクは解除薬を、


流し込んだ。するとアバンの姿がハッキリと現れるが、


その姿は、やはり手のひらサイズのアバンだった。


あの大きなドラゴンの姿からすると、なんて可愛いんだと


僕は、思ってしまった。



「アバン、ごめんよ。こんな姿にさせてしまって」



 とミロクがアバンに謝る。すると



「大丈夫だよ。とても身軽で楽チンなんだ」



 と、アバンが辺りを楽しそうに飛んで見せる。僕は



「これってずっとこのままなの?それとも元に戻れる


の?」



 と言うと、ミロクが睨みつけて



「わからないよ、初めてのことなんだから」



 と言った。するとアバンが



「様子を見ればいいじゃん。ぼく、これ気に入ってる


んだ」



 と、アバンが軽く答えた。


 僕らより当のアバン方が気にしていない。むしろ、


楽しんでいる感じがした。そして、アバンにどうして薬を


飲んだのか聞いた。僕らが、僕の世界に戻った後、


数時間して、大きな爆発音があった後、地響きと共に


大きな揺れが起きたのだという。そしてアバンはその事態


で結界が解かれていたらと思い、薬を飲んだのだという。


そして、自分の体が消えると共に軽く小さくなっていくの


を感じた。まだ、飛べる前のこどもの頃の大きさだとも


感じたという。だけど、今の自分は飛べる。


すごく嬉しかったという。アバンは小さいことに、憧れて


いたのだ。大きな体は目立つし、身を隠すのもまま


ならない。ドラゴン中にも個体差はあるが、アバンの種は


大きい部類に入るらしい。小さいドラゴンを見かけるたび


に自分もあんな風にだったら良かったのにと思っていたと


いう。だから、嬉しくて洞窟の中を飛び回ったらしい。


で、外に出ようとしたが、結界は、はられたままで、出る


ことはできなかったという。その後は、大きな音も揺れも


地響きもなく、飛び回っていたので、疲れて寝てしまった


のだと。目が覚めると目の前にミロクがいた。


声を出そうとしたけど、うまくでなくて、ずっと話しかけ


続けると少しだけ声が出たのだという。それで僕の問いに


答えようと僕の肩の辺りにきて、耳元で話しかけたのだと


いう。その話を聞くと、姿が消えるかわりに、声と大きさ


に副作用が出ているようだった。でも、解除薬を飲むと


声は戻った。大きさだけが元に戻らない。僕たちは、


アバンの提案通り、しばらくアバンの様子を、見る事に


した。もし、1日経っても元に戻らなければ、ミロクが


アバンの体に負担のかからない、副作用のないもので、


元に戻れるの方法がないか探すと言った。僕が、さっきの


草の束は何と聞くと、さっき、アバンが以前ミロクから、


消えたものを浮かび上がらせる、草があると話していた


ことを思い出しミロクに伝えた。そして、以前とって


おいたものを持ってきたのだという。それにしても気に


なるのは、爆破音と地響き。ミロクと僕は、


ハッと気がつく。



「もしかして、あの村人が向こうの洞窟に爆弾を仕掛けて


たのかな?」



 と、僕が言うと、ミロクが



「ボクもそう思った。これから、洞窟をみた後、


村に行ってくる」



 と言い、ミロクは洞窟を飛び出して行った。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 ミロクは、外に出るともう一度結界をはりなおした。


そしてカラスに変化して、まずは、あの洞窟へ急いだ。


だんだん近づくにつれ、焦げ臭いニオイが強くなって


いく。これは、やはり爆発か火事かと、その場に着いて


驚いた。洞窟は大きく様変わりしている。焦げ臭いニオイ


と共に火薬のニオイもする。岩肌はかなり大きくえぐられ


ていて、ミロクたちが過ごしていた場所は跡形もなく破壊


されていた。こんな事をする程、彼らはドラゴンを恐れて


いるのだと、ミロクは目の当たりにした気がした。


物陰に隠れ旅人の格好の人に変身すると、その足でミロク


は村へ急いだ。


村に着くと、村は意外にも、いつも通りの感じがした。


いつもの食堂へいくと、注文を取りにきてくれた女の子に


ミロクは話をしかけた。



「ここにくる途中、とても焦げ臭くて、そっちの方に


行ったら洞窟が見る影もなくなっていたよ。以前、ここに


来たことがあったからびっくりしてさ。何かあったの?」



 と聞いてみた。すると



「そうなんですよ。昨日、大きな爆発音がしてその後


地響きと地震まであって、驚きましたよ。お客さん達の


話だと、ドラゴンを見たって言う人が、もうドラゴンが


来ないようにって、罠として爆弾を仕掛けたらしいん


です。でも、森にいる動物がその罠にかかって爆発した


らしくって。でもそれが思っていた以上の破壊力があった


みたいで、勝手にそんな事をして!! と怒ってる人も


いれば、なかには、よくやったって褒める人もいたり


して……」



 と、言った。やっぱりと、ミロクは思った。



「ありがとう、理由がわかってスッキリしたよ」



 と言うと、注文した食事をして、支払いを済ませて店を


後にした。そして、ミロクはふたりの待つ洞窟へ急いだ。


 カラスに変化して洞窟へ向かっていると、森に住む動物


たちがザワザワしている。小鳥たちは群れをなし移動を


している。どうしたんだろうと思ったが、早く帰って


知らせなければと、そんなに気にもとめず洞窟へ戻った。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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