現実世界へ
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ミロクは、カラスになっていた。今朝まで住んでいた
洞窟へ向かって飛んでいた。そして、洞窟の上空に着き
高い木の上にとまった。洞窟の周りを見渡す。誰もいない
のを確認して、バラのアーチの元に、降りようと
そう思った時、物音と気配を感じて、もう一度木の上に
戻った。じっくりと、様子を伺っていると、洞窟から
アバンを見つけたという村人が出てきた。
何をしていたんだろう? そう思い、村人がいなくなった
のをしっかり確認して、ミロクは警戒しながら、
カラスのまま洞窟に入って行く。いつもの広場につくと、
なんか変な感じがする。ミロクは慌ててひきかえした。
外に出る。しかし、何も起こらない。だけど、
なぜだかあれ以上、奥にいくのはやめた方がいいと、
ミロクの本能がそういっていた。ミロクは周りを見渡し、
誰もいないのを確認すると、カラスから人に変身し、
バラのアーチを取り外し、鞄に入れる。辺りを見渡し
誰もいないのを確認すると、カラスに変化して、
ミヤとアバンのいる洞窟へ戻った。
しっかり結界をはりミロクは、ふたりの元へ急いだ。
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「おかえり」
とふたりがミロクに言った。
「ただいま。何も起こらなかったか?」
と聞くミロクに僕は聞く。
「何かあったの?」
「あの洞窟に行った時、アバンを見たっていう村人が、
洞窟から出てきたんだ。その後、入ってみたんだけど、
何か変な感じがしたから、慌ててでてきたんだ。あれ以上
は、あそこにいない方がいい感じがした」
というミロクに、僕は
「なんだろう、何か罠でも仕掛けられたのかな?」
「そうかもしれない。だとしたらもうあそこには戻らない
方がいいと思う」
とミロクが言った。
数時間後。ミロクは、洞窟内の別の場所にバラのアーチ
をセットしていた。僕はその様子を横で見ている。
作業をする時、ミロクは人になって作業する。人の方が
作業をしやすいらしい。バラのアーチのセットが終わる
と、ミロクは、
「ちょっとアバンに、おばあちゃんのとこに、行くこと
伝えてくる」
と言い、アバンの所へ行こうとしたので、
「あっ、待って僕も行く」
と言い、ミロクと一緒にアバンの所へいった。
アバンは、大きな体を、上手にまとめて丸くなり
眠っていた。眠っているアバンをミロクが起こした。
アバンは半分ボォーっとした顔をしてこちらを見ている。
「アバン。僕、自分の世界に帰ってくるね。でも、
また来るからね」
と、僕が言うと、事情を把握したアバンは、
「うん。待ってるよ。今度はみんなで、空を飛びに行こう
ね」
「うん。楽しみにしてるよ」
と僕が言うとミロクが
「じゃあ、ちょっと行ってくるね」
と言うと、アバンはうなずいた。そしてミロクと僕は
バラのアーチのある場所へ向かった。すると、
「あっ、ごめん。アバンに言い忘れたことがあった。
先にいってて」
といいミロクはアバンの元に戻った。僕は先にバラの
アーチの場所へ行き、ミロクがくるのを待っていた。
しばらくすると、お待たせといい、ミロクが戻って
きた。じゃあ、いこうとミロクが言い、バラのアーチへ
入っていく。来た時より少しバラのアーチが大きくなって
いる。バラのアーチに入るとまた、チクチクと棘が
あたる。これ、どうにかならないかなと思いながら
我慢して僕はミロクの後に続いた。
すると先に出たミロクが僕の方を覗きこんで見ている。
僕は急いでミロクの所へ行く。
バラのアーチから抜け出るとそこは森の中だった。
振り返るとバラのアーチは無くなっていた。僕は最初に
のどを触った。のど仏がない。そして、手足を見ると、
見慣れたいつもの、10歳の僕の手足だった。腕に傷も
服に穴もあいていなかった。
「ミロク!!」
とミロクを呼んだ声も、10歳の僕の声だった。
戻れたんだと僕はホッとした。呼ばれたミロクは
振り向き、
「ニャーーーー」
と鳴いた。あっ、そっか。こっちに戻ったらミロクは
喋れないんだ。と妙に納得して、僕はミロクの後を必死に
ついていく。辺りが少し薄暗くなってきていた。ヤバイ、
おばあちゃんが心配しちゃう。お昼に帰れていないことに
なっている。きっと心配している。僕は慌ててミロクの
後を追った。
森を抜けるとそこには、おばあちゃんの家があった。
畑には、おばあちゃんはいなかった。家に入り、
「ただいま!」
と僕が言うと、おばあちゃんは慌てて部屋から
飛びでてきた。
「おかえり、弥哉。どこに行ってたの? お昼も食べに
帰らないで。おばあちゃん、心配したんだからね」
といい僕を抱きしめた。
「ごめんなさい。森の中で探検してたら楽しくなって、
気になった虫がいて、夢中になって探してたらこんな時間
になっちゃったんだ」
と僕は、苦しい言い訳をした。そして
「今度は、お弁当とお茶持っていくよ」
と言ったら、おばあちゃんが
「仕方ないね。作ってあげるよ。でも、ちゃんと今日
ぐらいには帰ってくるんだよ」
「うん。わかった」
と僕は言った。よかった、何とか切り抜けれた。
とホッとした。
現実世界に戻ると、やはりミロクは、喋らなかった。
僕の体も、小学四年生の僕に戻っていた。確かにミロクが
言っていたように、その日の夕方に帰ってきた。でも、
この間ミロクを見たのは昼間だった。あの日は、異世界に
行ってなかったのかな? まぁ、いいか。今日はゆっくり
寝よう。そう思い、ふかふかの布団で僕は眠りについた。
明くる日。朝ごはんを食べていると、おばあちゃんが
「はい。お弁当と飲み物ね」
と言い、僕に渡してくれた。僕はお礼を言い、
リュックに入れ、出かける準備をした。僕らは家を出る
と、おばあちゃんは畑に。ミロクはしばらくおばあちゃん
の周りをチョロチョロして、森へ向かって歩き出した。
その後を追って僕は、畑から離れると、おばあちゃんが
「気をつけるのよ。夕方には帰ってきなさいよ」
「うん。わかった。いってきます!!」
と僕は答え、森へ向かうミロクの後を追った。
そして、僕はミロクの後を、離されないようについて
いく。森の奥深くに入ってきた。まだ、スタスタとミロク
は進む。すると、あのバラのアーチが現れた。ミロクに
続き覚悟を決め、僕も入った。覚悟を決めても、バラの棘
は相変わらず痛い。でも今日はリュックを、背負っている
から背中は痛くない。けど、リュックはボロボロだろうと
思った。
やっとの思いで通り抜けると、洞窟内のバラのアーチを
設置した場所に出てきた。ちゃんと、異世界にこれた
ようだ。そして僕は案の定、姿が変わっている。僕は、
リュックをおろす。リュックは棘で、ボロボロになって
いると思っていたがキズひとつなかった。リュックから
持ってきた鏡を取り出した。長方形の折りたためる
ものだ。それで、僕は自分を見た。そこには、10歳の僕の
面影は残っているものの、高校生くらいに成長した僕って
感じだった。でも、なぜか服装は、この異世界のような
格好になっている。これはミロクの、魔法なんだろうかと
思った。リュックは僕が持ってきたそのままだった。
これは異世界には、ないものなので見つからないように
しないとなと思った。ひと通り、自分の姿を観察し、
驚いたり、納得したりしていたら、アバンのいる場所の方
から、ミロクの声がした。
「おーーい!! ミヤ、早くきてくれ」
僕は慌てて、アバンとミロクのいる場所へいった。