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僕の作戦

 明くる日、僕が目を覚ますと、もうミロクもアバンも


起きていた。するとミロクが



「これでいいか?」



 と僕に変身した姿を見せる。その姿は勇者そのものだと


感激した。腰にすごく大きな剣をさしている。



「いいよ。バッチリだよ」



 というと、指をパチンと鳴らす。すると今度はいつもの


ミロクに戻った。ミロクは用事をすませると、また勇者の


姿になった。



「じゃあ、頼むよ」



と僕が、ミロクに言うと



「行ってくる」



 と言い、ミロクは、洞窟を後にした。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 村に着いたミロクは、村にある唯一の食堂へ行く。


すると村人に声をかけられた。



「あんた、もしかして勇者じゃないか?」



「ああ、ギルドには登録してないがな」



「ちょっと、うちの村長と会って欲しいんだ」



 と言われる。食事を済まして、お代を支払おうとしたら



「いいよ。ここは、オレが出す」



 とその村人がお代を支払ってくれた。


 そのまま、ミロクは村長の元へ連れていかれた。


案の定、ドラゴン退治を依頼される。名前を聞かれ、


ヘラクレスだと、とっさに答えた。ヘラクレスとは以前、


人間の本を読んだ時の、主人公の名前を拝借した。


ミロクは少し渋ってみる。本当にいるのか? と


言ってみたり、何か被害にあったのか? と聞いてみたり


したが、どうしても助けて欲しいという。



「わかった、じゃあそこまで案内してくれ」



 と言うと、集まってきていた村人たちが、数人ついて


いくという。しかし、別の村人の1人が、やっぱり、


みんなで行こうと言い出した。


女、子供と年寄りは村に残り、戦えるかはわからないが


男たちが、それぞれ武器を持ち、一緒に行くことに


なった。みんなでゾロゾロと森の中に入っていく。以前


洞窟でドラゴンを見つけたという男を、先頭にして森の


奥へと入っていった。ミロクからしたらいつもの道のりを


進んでいくだけだ。こんなにたくさんで来られたら、


住処を変えた方がいいかもしれないなと、ミロクは、


思い始めていた。


 すると、先頭を歩いていた村人が



「あった、あったぞ。この洞窟だ」



 と言った。そして村人の1人が言った。



「お願いします。あの中にいるらしいんです」



「わかった。行ってくる」



 とミロクは言い、後ろを振り返り、右手を挙げた。


すると



「ウォーーーー!!」



 と村人たちが叫んだ。


 ミロクは、堂々とした態度で洞窟の中に入っていった。


いつもの通路を通り、アバンといつも一緒にいる場所に


着いた。が、アバンもミヤもそこにはいない。奥にある


アバンの寝床に行き、その横にあるミロクの寝床にも


行くが誰もいなかった。ミロクは生活感が残ってない事


を、確認して洞窟を出た。すると、



「随分、早いな。もう退治してくれたのか?」



「やっぱり、勇者って凄いんだなぁ」



 などと、村人が口々に言っている。その言葉に反応する


ことなく、ミロクは言った。



「ドラゴンなんていないぞ!! どこにいるんだ?」



「えっーーーー!!」



 と村人たちが、びっくりする。村人たちは、全員で洞窟


の中へ入っていく。奥の奥まで、村人たちが、くまなく


探したが何もいなかった。その内、



「おい、本当にここにいたのか?」



 と、村人の1人が言うと、ドラゴンを見た村人が、



「いたさ。オレはこの目で見たんだ。間違えない!!」



 すると、別の村人が、


「もしかしたら、お前が見たときには居たかもしれない


けど、ここに住みついてる訳じゃないかもな」



「そうか、ここに一時的に休んでただけかもしれないな」



 と別の村人が言った。そして、他の村人たちも、


なんとなくそれで、納得しはじめた。すると、



「ヘラクレスさん、すまんかったな。ワシらの勘違い


だったのかもしれない」



 と、リーダーぽい年配の村人が、ミロクに言った。



「いえ、構いませんよ。これで、皆さんが納得されたの


なら、良かったです」



 とミロクは言った。そして村人たちは、帰り始める。


でも、ここでドラゴンを見た村人は、不服そうな感じ


だった。ある程度まで、森を抜けると村に続く道の途中に


わかれ道がある。



「こっちの道はどこに行くんだ?」



 と、ミロクは近くにいる村人に聞いた。すると、



「隣村に行くよ、歩いて行くには結構、距離あるぞ」



「そうか、ありがとう。でも、オレは先を急ぐからここ


でお別れだ」



 と、ミロクは言い、そこで、村人たちと別れた。


何人かの村人に引き止められるが、ミロクは気にせず


隣村へ続く道を選んだ。


 そして、村人たちが見えなくなったのを、確認して


ミロクは森へと道をそれた。道の方から見えないように


木の死角に隠れて変化した。ミロクは小鳥になった。


いつもの洞窟とは違う方向に飛んで行く。すぐに後悔


する。カラスにすれば良かったと。かなり、距離が


あることに気がついた。


 それから、かなり飛んだがまだ、目的地までは時間が


かかりそうだ。ミロクは死角がある高い木のしっかりと


した枝に止まってクルッと前転をした。


そして、カラスに変化しまた、飛び始めた。


こっちの方がやっぱり楽チンだわとミロクは、思った。




 しばらく飛び続けると、別の洞窟を見つけた。


あれだ!!


 ミロクは、洞窟の入り口に降りたった。そして、カラス


のまま洞窟の中へ入って行く。すると行き止まりになる


が、左右に道が分かれて続いている。迷うことなく左に


曲がり、進んでいくと広い場所に出た。その場所の真ん中


まで進んでいくと何かにぶつかって、ミロクは地面に


落ちて転んだ。その拍子にミロクは、カラスから三毛猫の


ミロクに戻ってしまった。



「痛い!!」



 とミロクが言うと、



「大丈夫か?!」



「大丈夫?」



 と、ミヤとアバンの声がした。



「良かった、ふたりとも無事だったんだ」



 とミロクはいい、立ちあがると、二足歩行で右前足を


前に出してゆっくりと歩いて行く。すると、右前足に何か


あたりそれ以上、前に進めなくなった。そして、ミロクが


フッと息を吹くと、そこにはアバンとミヤが現れた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「うまくいった?」



 と僕が聞くと



「たぶん。でも、アバンを見かけた村人はまだ、


不信感をいだいてそうな感じだった」



と言い、そして



「あっ、結界!!!!」



 というと、ミロクは洞窟の入り口へ戻っていった。


 しばらくすると、ミロクが帰ってきた。僕は、



「誰もいなかった?」



「あぁ、周りを見て、確認してから結界をはったから、


大丈夫だと思う」



「しばらくは、あの洞窟には帰らない方がいいと思う」



 と、僕が言うと、ミロクが



「やっぱりそうだよな。あんだけの人数の人に知られたら


住処、変えた方がいいかなって思ったんだ」



「でもここだと村まで行くの大変じゃない?」



 とアバンが言う。するとミロクが、



「ボクは大丈夫だよ。大抵のものに変身できるし、少し


村から離れた所の方がいいかもな」



 と言うミロクに僕は、



「じゃあ、なんで早くそうしなかったの?」



「こんな事になるとは、思ってみなかったし、村から


近いし便利だったから……」



 と、ミロクはふくれズラで言った。


僕が本気で言っていないと、わかっているのか、


すぐにミロクは笑顔になる。



「あっ! でもそうしたら、僕の世界に戻る、つるバラの


アーチは?」



「あぁ、あれはボクが作ったんだ。色々、魔法の研究を


してて。だから、あれは移動させればいい。それにあれは


ボク以外には、基本見えないから」



 とミロクはあっさりと答えた。ミロクの能力には


驚かされる。僕は気になることを聞いた。



「じゃあ、どの世界でも移動できるの?」



「いや、あの世界だけなんだ。色々、何度も試してみた


けど、成功するのはあの世界だけなんだ。後はどこにも


繋がらなかった。それにどんなに作り直しても向こうに


戻ると来た日の夕方になる。向こうには道具が無いから


作り直すのはこっちでしかできないけどね」



 とミロクは言い、続けて



「じゃあ、ボクこれからあの装置を取りに行ってくるよ」



 と言い、バラのアーチを取りにいってしまった。




 僕たちが、どうしてここにいたのか。それは、昨日の


作戦会議の時、前の洞窟から近くにアバンが隠れられる


洞窟がないかと、ふたりに尋ねるとミロクが以前、アバン


と姿を消してこの辺りを探索している時にここを見つけた


と言った。で、ミロクに今朝、出かける前に見えなくなる


魔法をかけてもらって先にここに来ていた。そして、


ミロクが作戦を決行し、ここで落ちあい魔法を解除して


もらった。

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