僕の中のオレ!?
アバンは、自分さえいなければ、そう思いながら
怪我をした体で、ドラゴンの国を飛び出した。
そして当てもなくさまよっていた。怪我をしていた為、
どこかで休もうと、この洞窟にたどり着いた。
そこで三毛猫のミロクと出会った。
最初は信じれなかった。ミロクもいつか、あのドラゴン
たちのようになるかもしれないと。でもミロクは薬を
作って飲ませてくれたり、ヒーリングをして怪我を癒して
くれたり、献身的にアバンを看病してくれた。そして、
アバンは元気になった。
ミロクに帰るところは?と聞かれ、ないと言うと、
ボクも同じだとミロクは言い、一緒にここで暮らそうと
言ってくれたので、ここで暮らしているのだという。
そして今、この状況になってしまった事でミロクは、
自分を責めている。自分が結界をはり忘れたばかりに
こんなことになって、ごめんと謝るのだという。
どうか、ミロクを助けてやって欲しいと、
アバンは僕に言った。
「アバン、君は悪くなんかないよ。君は凄いドラゴン
なんだよ。素晴らしいよ。自分を責めるのはやめなよ」
「でも、ぼくがいるからミロクに迷惑が。
ぼくがいなければ。」
「ミロクが悲しむよ。ミロクはアバンとずっと一緒に
いたいと思ってるはずだよ。それにミロクはアバンを
大切に思ってるのに、そのアバンが自分のこと大切に
しないのって、おかしいじゃないか。じゃあ、
逆だったらどうする?」
「ぼくはミロクの為にできることをしたい。
ミロクを助けたい」
「でしょう。じゃあ、ミロクが自分のせいだと、
思っているのを知ってどう思う?」
「ミロクのせいなんかじゃないよ。ミロクがいてくれる
からぼくは、毎日幸せなんだ。」
「ミロクも同じだと思うよ。アバンのせいじゃない。
アバンがいてくれるから、ミロクは毎日幸せなんだと
思うよ」
というと、アバンの心がフワァーと軽くなる感じがした。
「それに辛い経験ではあったけど、そのことがなければ、
アバンはずっと、ドラゴンの国にいたでしょ。」
「うん」
「でも、その経験があったから、この洞窟に来てミロクと
友達になれた。ミロクと出会ったんだよ」
「そっか、悪いことばかりじゃないんだね」
「そうだよ。それはアバンが、平和でいたい、穏やかで
いたいっていう、アバンらしさを失わなかったからだと
思わない? だって、みんなに染まっていたら今頃、
アバンは傲慢なドラゴンになってたかも。それでいい?」
「それは嫌だ。ぼくは本来のぼくのままがいい」
「ほら、アバンにもちゃんとドラゴンの性格、
あるじゃない《強気》強い気持ちが」
「本当だ」
と、アバンは笑った。
僕は不思議だった。ドラゴン相手に、スラスラと言葉が
でてくる。僕の思考を超えている。確かに僕は同級生より
考え方がませていると言われたことがある。でも基本的に
同級生たちと変わらない。だけど、言ってる僕もなるほど
と思うようなことをスラスラ言っているし、異世界に
きて、姿も変わってるのに、なんならもう、すんなり
受け入れている自分が、いることに驚いた。
なんなんだよ、何が起こってるんだ!! すると、
『言ったろう。オレが力を貸すって』
と声がした。もう一人の僕だというふざけた声が
そういった。お前、本当は誰だよ!! というと、
『だ・か・ら、もう一人もお前だよ』
と返してきた。
『まぁ、信じなくてもいいけどね』
というと、スゥーと僕の意識から消えていく感じが
した。
しばらくすると、ミロクが帰ってきた。
「結界した?」
「しつこい!! したわ!!」
とミロクが僕に怒鳴り気味に言った。僕とミロクは顔を
見合わせ笑った。そして改めて、僕はミロクに聞いた。
「どうだった?」
「まだ、勇者にも魔法使いにも依頼していないみたいだ。
でも、村を訪ねてくる人達に勇者や魔法使いかと
尋ねたり、いい人を知らないかと聞いていた」
だとすると、この森にドラゴンがいることは、
あっという間にに広まってしまうだろう。下手をしたら
村人が頼まなくても、ドラゴンの価値を知る者がドラゴン
の捕獲にやってくるだろう。村が退治して欲しいくらい
だから、村を通さず、自分達ですれば、分け前は、
全部自分たちの物になる。これは急いだ方が
いいかもしれない。
僕はミロクとアバンに僕の計画を説明した。
「やってみよう」
と、僕が言うと
「本当に大丈夫か?」
とミロクが言った。
「やってダメならまた考えるさ」
という僕に
「そんなのんきな」
とミロクは言った。アバンは僕たちの話をじっと聞いて
いた。
そして、明日、決行することにした。もう作戦は
打ち合わせ済みだ。そうなるとお腹がすいた。そう思って
いると、ミロクが袋から食べ物を取り出した。
「すまん、こんなものしかこっちにはないんだ」
といい、かたそうなパンとチーズのようなものと
何かの果物を差し出した。しかし、それは僕の分
しかない。
「ミロクやアバンのは?」
「ボクらは、基本食べなくても大丈夫なんだ。それに一度
食事を取れば、しばらく食べなくても大丈夫」
「省エネだね」
「まぁな」
とミロクが言った。アバンは何? って顔をしてポカンと
した。その後ミロクがアバンに、省エネの説明をして
いた。僕はパンとチーズのようなものを半分づつ食べ、
残りを明日、食べる事にした。果物は水分が
とても多く、水代わりなんだなぁと思った。
そして、僕たちは明日に備えてそのまま就寝した。