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おばあちゃん家の三毛猫

楽しんで頂けたら嬉しいです。


 セミの鳴き声がする。


周りには緑しかない。


道というよりけもの道のような細い道を歩いていた。




 僕は、春木 弥哉(はるき みや)。小学四年生。10歳。


夏休みのひと夏をおばあちゃん家で過ごすことになった。


 夏休みの宿題ももってきた。早く済ませて、虫捕りや川


で釣りをして1人で気ままに楽しむつもりだ。




 僕は、決して1人が好きな訳ではない。学校では友達も


たくさんいるし、好奇心旺盛で誰とでも仲良くなる方だと


思っている。


 自分では意識したことは無いけど、通知表に正義感が


強いと書かれている。確かに曲がった事や間違った事は


嫌いだ。


 それに、剣道もしているし、学級委員長もやっている。


けど、1人で過ごすのも好きなのだ。



「おい、もう少しだからな、大丈夫か?」



 と父が言った。



「うん。大丈夫だよ。兄ちゃん達も来ればよかったのにね」



「まぁな。お兄ちゃんは部活で来れないし、弥玖(みく)


はまだ小さいからお前とふたりじゃなぁ」



「母さんも来ればいいじゃん!!」



「母さんいないと、父さん困るじゃん」



 と言う。何だ? 僕より父さんの方が子供かもよ


と思った。


 まぁ、普段から仲のいい両親で、父は子供の前でも平気


でそんな事を言う。




 バスを降りてからもう30分は歩いている。父は少し


へばっていて、



「もう少しだ。頑張れ」



 と父自身に言っているのだろうと思った。




 それから10分歩いて、細い道から広い場所にでると


古いがしっかりとした造りの古民家があらわれた。


 やっとおばあちゃん家に着いた。




 ここは父の実家でもある。


 父はこの田舎が嫌で中学受験をして寮のある中高一貫の


学校に入った。そして、大学で都会に出て就職して今に


至る。




 おじいちゃんは、10年前に僕が生まれたのを見届けて、


天国へ旅立ったのだと僕は聞いた。そして同時期にこの家


に新たな家族が加わった。




 名前はミロク。三毛猫のオスである。父が言うには


とても貴重で珍しいのだと言う。


三毛猫はほとんどがメス。


オスは本当に貴重なのだと、父が興奮気味に言っていた。



「ニャーー」



 と鳴きながら、ミロクが家から出てきた。


 その後ろから、おばあちゃんがついてくる。



「幹生、弥哉、よく来たね。さあ、早く入って。


疲れたろう」



 と、おばあちゃんは嬉しそうに僕達を家に招き入れた。


 父は持ってきた土産をおばあちゃんに渡すと、仏壇の


おじいちゃんに手をあわす。僕も手をあわせおじいちゃん


に挨拶をした。


 夕食はおばあちゃんが、僕と父の好物を食べ切れない


ほど、出してくれた。それを僕と父はお腹がはちきれる


ほど食べた。




 明くる朝、父はおばあちゃんに僕の事を頼み、夏休みの


終わりに、また迎えに来ると言って、朝一のバスで帰って


いった。


 僕は朝食を食べた後、居間で夏休みの宿題を始めた。


なんなら今日中に全部終わらせるつもりでやり始めた。


 しばらく宿題をしていると、集中力が切れた。


気がつくと宿題は半分くらい終わっていた。


 すると、台所からおばあちゃんが僕を呼ぶ声がした。



「弥哉、お昼食べよう」



  テーブルの上の宿題をそのままに、僕は台所へいった。


台所へいくと、おばあちゃんは、



「これ持っていきな」



 と、おぼんにナポリタンとサラダと麦茶がのっていた。


美味しそう!!赤いウインナーはタコの形になっている。


僕はそれを居間に運んだ。テーブルの上の宿題を端に


寄せるとおぼんの上のものをテーブルに置いてまた、


台所へいった。すると、



「後は、大丈夫。おばあちゃんが持っていくから、


もう食べな」



「うん」



 と言い、持ってきたおぼんを置いて、居間に戻った。



「いただきます」



 と言い、食事を始める。食べ進めていると、


おばあちゃんがきた。おばあちゃんも食べ始める。



「美味しいかい?」



「うん、美味しいよ」



 とおばあちゃんから聞かれ僕は答えた。


食事をしている間、僕の学校の事や、剣道の話、


弥玖やお兄ちゃんの事、父と母の話をしながら


食事をした。食べ終わると、



「昼から何をするんだい」



「うーーん、宿題の残りをすませたいけど……」



「まぁ、無理せず、弥哉がしたいことをしたらいいよ」



 といってくれた。食べ終わった食器を片付けテーブルを


拭くおばあちゃんに、



「ごちそうさまでした」



「おそまつさまでした」



 と言い、おばあちゃんは台所へいった。




 僕は、居間の窓を開けて縁側に座る。


足をブラブラさせながらボォーと外を眺める。


お腹も一杯になり、少し眠くなってきている。


このまま宿題をしても途中で寝てしまいそうだ。


 何も考えず外を眺めていると、庭の向こうに


おばあちゃんが育てている畑が見える。トマトや


キュウリ、ナスなど沢山育てている。おばあちゃん家で


食べる野菜は、ほとんど自給自足だ。




 その畑の向こうは森が広がっている。


その森からひょっこり、三毛猫のミロクが現れた。


 あれ、ミロクどこに行ってたんだろう?


と思っていると、軽い足取りでこっちにやってくる。


ミロクもご飯を食べに帰ってきたのかな? そう思いながら


ボォーと眺めていると、急にミロクは戻ってきた道を


引き返し全速力で走って森へ消えていった。




 一変に僕は頭が覚醒した。どこに消えたかわからない


ミロクの行動に好奇心がフツフツと湧いてくる。


 明日、ミロクをつけて行ってみようと僕は決め、残りの


宿題を片付けることにした。




 明日が楽しみでワクワクしている。


心持ち宿題の進み具合も早く感じた。


おかげで僕は夕食の前に宿題は全部片づいた。


ミロクは夕食前に帰ってきていた。




 ミロクの1日は、朝早くから始まる。


4時頃には起きておばあちゃんを起こす。おばあちゃんと


共に畑に出て、朝の収穫を行うと一緒に家に帰ってくる。


 おばあちゃんが朝ごはんの準備をしている間居間で


ゴロゴロしている。


 僕を起こして朝ごはんを食べるので、早く準備を


終わらせたおばあちゃんは家の掃除をする。


僕が寝ているので、掃除機は使わずホウキとチリトリで


掃除する。そのホウキにミロクは飛びついたり、


おばあちゃんの後をついて行ったりしている。


 興味がなくなると掃除をしていない部屋でゴロンと


横になりくつろいだり、寝ていたりする。


 7時になると僕を起こしにおばあちゃんがくる。


着替えて顔を洗い、居間にいくともう朝ごはんが


テーブルに並べられている。その横でミロクはもう早々に


キャットフードを食べていた。食べ終わると食べ始めた


僕の横を通り、水を飲みにいき、トイレにいって


帰ってきた。戻ってきたミロクは、毛づくろいを


はじめる。終わればそのままその場で寝はじめた。僕と


おばあちゃんも朝ごはんを食べ終わると、片付けをして


畑に出かける準備をする。


 そしておばあちゃんは、ミロクに声をかける。



「ミロク行くよ」



 と言うとミロクは立ち上がり、おばあちゃんと一緒に


家を出る。今日は僕も一緒に出かける。おばあちゃんと


僕とミロクは家を出て畑に向かった。それからしばらくは


おばあちゃんの近くでミロクは虫を追いかけたり、畑の


周りをチョロチョロしていたが、しばらくすると森に


向かって歩きはじめた。僕がミロクを追いかけていくのを


見たおばあちゃんは、



「あまり、遠くに行かないのよ、弥哉」



「うん、わかった」



 と言い、僕はミロクを見失わないように追いかけた。


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