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序7

いったいなんだったんだ。

 俺、東雲春眞の心はそればかり考えていた。

 確かに、あの山で出会ったときも途中からこのような恐慌状態だった。顔面蒼白で震えているような。だがあの時は突然わけのわからないことに巻き込まれ火が掠めていた。そうなってもおかしくない状況だった。

 しかし、今はどうだ。ただジャックに見られただけである。

「すまないジャック。助かった」

「どういたしまして。ところで彼女は誰だ?」

「彼女は天宮秋奈。明日から俺のクラスに転入してくる子だ」

 そう聞くとちらりと机を一瞥し、再度口を開く。

「それがどうして魔術契約を結ぶことになったんだ」

「さっき見回りで星見公園の方を回っていたら襲われてね、彼女もその場にいたんだ。それで彼女を守るために護衛契約を結んだんだ」


 そこまで聞いたジャックは心底驚いたのか、目が大きく見開かれる


「なんだと。町に作った結界や警報は破られてはいないぞ」

「知ってる。結界付近で戦闘になったからな。不意打ちで服を燃やされてしまってね。逃げ回っていたところ彼女に出会ったんだ」

 肩をすくめて反省アピールをしておく。

 じゃないと職務怠慢で減給だ。ただでさえ懐寒いのにこれ以上は勘弁してほしい。

「悪魔め…どこから入り込んだんだ?」

「いや、悪魔や妖怪の類じゃない。あれは魔術士だ」

 そこで再度驚きで目が見開かれる。こいつ驚いてばかりだな。めったに見れないから非常に面白い。

「ということは『門』の見張りの目をかいくぐって来たってのか。見張りは何をしていたんだ……」

「どうだろうな。かなり高度な隠蔽や秘匿の魔術を使っていたと思う。戦闘中にもかかわらず居所がわからなかった。魔術士本人が町の中に入り込んでいるかどうかすら怪しい」

 いや、本当にあの時どこから攻撃してたんだ。森のほうから火が飛んできていたが生命の気配はなかった。恐ろしいほど高度な隠蔽の魔術をかけたドローン砲台だと思うんだが……

「となると何かの魔道具か。それなら可能性はあるな。それはそうと不意打ちを喰らっただと?たるんでいる。減給だ」

「……」

 ちくしょうめ!


「ひとまず横にできる場所へ運ぼうか。学園にいれてくれ」

 こっちが減給に心の涙を流してる間に、ジャックは静かに秋奈に近づき体を抱き上げ出口の方へ歩いて行く。

「わかったよ。付いて来てくれ」


 俺たちは再び外へ出てそのまま林をつっきり、裏の職員玄関から学園の中へと入る。

「なぁ春眞、校舎が増えていないか?」

「あぁ、ジャックが離れてる間に共学化してな、こっちは生徒の教室があるA棟に名前がかわったんだ。左へ進むと渡り廊下があって実技科目の教室が並ぶB棟へとつながっている」

 そんな他愛もない雑談をしながら俺はジャックを先導し一階の保健室Aへと鍵を使い中へと入る。


「おや、こんな朝早くに来客とはめずらしい」

 そこには膝裏まである長すぎる黒髪が特徴的な白衣を着た小太りのおばあさん、雪平保険医がいた。

「いやこっちのセリフですよ。なんでこんな時間からいるんですか」

「寒すぎて帰るのが嫌になったのよ」

「ずぼらなんですね」

「そんなことはいいのよ。その子は?」

「明日から転入してくる生徒です。ジャックを見たら気絶したんですよ」

「どんな風に?」

「急に叫びだしたと思ったら怖がるように離れてそのまま」

 そこまで言うと雪平は顎に手を当てて考えこんだ後デスクの引き出しから白い石を取り出す。

「そう。その様子ならトラウマを刺激されたかもね。彼女のパーソナルデータはある?」

「今取ってくる」

 すぐさま保健室を飛び出し隣の職員室へと入る。自分のデスクから生徒が入学する際に健康状態や学校の成績、家族構成等が書かれた紙が入れられているファイルを持って再度保健室へと入る。

 中に入るとジャックが

 シーツを整え、雪平先生がアロマの準備をしていた。

「とってきました」

「見せて」

 そう言いながら雪平さんは手からファイルを奪い秋奈の紙を見つけて目を通していく。そのうちこわばった顔つきになり、睨みながらこちらにファイルを手渡す。

「さてはあなたまだ目を通していなかったわね。全部書かれているわ」

「すいません。何分忙しかったもので」

「精神障害の欄にチェックが入っているわ。そして備考欄に十ニ歳の時に誘拐と強姦。十四歳の時には『神川炎上』で家族を死亡って書かれているわ」


 なんだって?

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