襲撃
ヒューン
その日は、新しく苗を植えると言うことで、私とフィーナさんは、家事を手早く終わらせて、レッドとハウグストさんのいる畑の手伝いに向かう。
レッド達のいる畑は、レッドの家を出て一度村へ下る。次に、村まで行ったら、村の横を通り過ぎて森へ入っていく道を進む。
森の中の道を登って5分くらい歩けば、村長達の使う畑に通じる道とレッド達のいる畑に行く道に分かれる。
その分岐点から左にレッド達のいる畑へは、歩くこと20分程、村長達のいる畑へは、15分くらいでいくことができる。
家から分岐点まで大体30分くらい。上り坂はそこまで急ではないが、レッド達は重い農具を担いでこんな道を行き来しているのかと思うと、改めて農業の過酷さを実感する。
「凄いですね!フィーナさん達は、いつもこの坂道を登って畑に行っているんですね!」
「ふふふ……慣れよ慣れ!それにね!村の近くに畑を作ってしまうと餌に困った野菜動物達が村にまできてしまうから、村から離して作るしかなかったらしいからね」
「なるほど」
フィーナさんと話しながら歩くこと15分、もう少しでレッド達のいる畑に着くと言うところで、私たちが向かう先の左の森側から、「ガサガサガサ」と音がした。
フィーナさんは、そちらを見ながら「また、猪かしら?困ったわね…畑に実ってきた作物が食べられてしまうわ」
猪か…実物は見たことがないな。お肉だけは食べたことがあったな。独特の臭みがあったけど、コックがうまく調理してくれたから、美味しかった記憶があるわ。実物がどう言う姿をしているか見たことがないから、ちょっとワクワクするわ
「アリシアちゃん、猪は音に敏感だから、私と一緒に木の枝をバキバキっと大きな音をたてて折ってくれる?そうすれば逃げていくと思うから」
猪が見られないのは少し残念だったが、作物が食べられてしまうのは困るので、「こんな感じですか?」とフィーナさんに聞きながら、枝を拾って「バキバキ!」と折る。
「ええ。そんな感じでいいわ。これで逃げていくと思うわ」
暫くして、ガサガサと音がした。
「うん!もう大丈夫ね!猪は逃げたみたい」
「そう見たいですね」
だが、音は遠ざかっていくどころか、わたしたちに近づいてくる。
「あれ?音が近づいてきていませんか?」
「あら?確かに。変ね。猪は警戒心が強いから逃げるはずなんだけど……」
私とフィーナさんがおかしいなと話し合っていると、ガサガサと音がだんだん私たちに近づくと共に人の声?が微かに聞こえた気がした。
「?」
音はさらに近づいてきて「……発見」と言う声が聞こえた瞬間に、森の中から、黒装束の人物達が2人出てきた。
私は、その黒装束に見覚えがあった……
「白い髪にブルーサファイアのような特徴的な瞳……間違いないな……ルーナ王女だ」
「よっしゃ!王女発見だな!楽な任務だぜ!こんな小娘を捕まえるだけで大金がもらえるんだからな!」
あの夜、私たちが出くわした宰相の放った追手……
あの時は、慌てていたよくわからなかったが、話し声から黒装束達は男のようだ。声が聞こえなければわからないな。
顔はマスクに覆われていて、体もマントなどを装備している。
完全に油断していた…どうする?フィーナさんを巻き込むわけにいかない
「アリシアちゃん、あの人たち、あなたのことを王女とか言ってるけどどう言うこと?任務とか言ってるけど?」
フィーナさんが、混乱していると、その隙をついて黒装束の男達が襲いかかってくる…….
つづく……
どーん