モンデル村 2
むーん
それからは、朝起きてレッドやハウグストさん、フィーナさんと朝ごはんを食べて、レッドとハウグストさんが畑仕事や猟に出かけていくのを見送り、日中は、家事の終わったフィーナさんと楽しく話しながら過ごす。
フィーナさんとは、本当の親子みたいに仲良くなった。
夕方になると、疲れて帰ってきた2人を出迎えて、1日にあったことを4人で話して楽しくご飯を食べる。
ご飯を食べた後は、みんなでまったりと過ごす。
夜も遅くなってくると、私はベッドで、私と一緒に寝たいフィーナさんはベッドの側に布団を敷いて、家主のレッドは少し離れた場所に布団を敷いて眠る。
ハウグストさんは体が大きくて寝言などがうるさいという理由で自分の家で1人で寝ている。
そんな日々を3日過ごしているとだんだん体も動くようになっていき、レッドの家で過ごして5日目になると、なんとか立って歩けるようになり、フィーナさんの家事を手伝う。
王城で侍女に変装して家事を経験していてよかった。人生何が役立つかわからないものだわ。
3人にお世話になり、7日目になるとすっかり歩けるようになり明日からは、フィーナさんと村の中心まで歩いて行ってみることになった。
7日目の今日は、フィーナさんと一緒に夕食を作った。
「アリシアちゃん筋いいわね!いいお嫁さんになるわよ!」と今はフィーナさんに教わりながらスープ用の野菜を切っている。
「ありがとうございます。でも、フィーナさんに比べればまだまだです」
「ふふふ。そんな事ないわよ。アリシアちゃんならきっとすぐに私のように作れるようになるわ!」
野菜を切り終わったら、今度は、昨日レッドが取ってきてくれた鳥から取った出汁に、ニンジン、じゃがいも、そら豆を入れて煮込んでいく。味見をしてじゃがいもがハラハラしてきたら、塩を振り、フィーナさん直伝のスープの完成。
王城のコックに料理を教わったときは、ちょっとした小火騒ぎを起こしてしまったけど、落ち着いてやれば私でも料理ができるとわかり嬉しかった。
それに、誰かに手料理を作るのは初めてだから、どんな反応をするかドキドキしている。
先にフィーナさんに味見してもらおう。
「フィーナさん出来ました。味を見てもらいたいです」
「フィーナお母さんに任せなさい!」とお皿にスープを持って味見をするフィーナさん。
「うん!上出来よ!ちゃんと美味しく作れているわ!本当にいいお嫁さんになれるわよ」とフィーナさんからお墨付きをもらった。
私は、ちゃんと出来ていたことが嬉しくて、「やったー!」とつい、両手を上げて喜んでしまった。
「ふふふ。アリシアちゃんは本当に可愛いわね!そんな素直に喜ぶ姿もどんどん見せてほしいわ!」とフィーナさんがニッコリ笑う。
私は、恥ずかしくなって顔を赤く染める。
そんなやりとりをしているとフィーナさんの作る干し肉をピリ辛風に炒めたものとパンが焼き上がり、夕食が完成した。
夕食が完成すると、しばらくして2人が帰ってきた。
2人はいつものように息ぴったりに声を揃えて、「「ただいま」」と言って家の中に入ってくる。
「お疲れ様でした」と声をかけた私の姿を見て2人は、
「お!夕飯はアメリアが作ったのか!」
「そうなんだ!どんな料理か楽しみだな!」と喜ぶ2人。
「そんな大したものは作ってないわ。私が作ったのはフィーナさんに教わった野菜スープだけだから」
「それでも、いい匂いがするから楽しみだよ!」とレッドは言い、ハウグストについて水浴びに行く。
私が作ったことを知った2人はどんな料理か心配するんじゃないかと思ったが杞憂だった。
水浴びから戻ってきたレッドとハウグストさんを交えて4人で夕食を取る。
2人は、私が作った野菜スープを、
「うん!じゃがいもはほろほろで、にんじんと豆は柔らかくなりすぎずに、ちょうど良い食感が残っていて、スープの元となった鳥の出汁と塩味がいい塩梅で美味しいよ!」
「レッドの言う通りだぜ!こりゃめちゃくちゃうまい!」と褒めてくれる。
2人が満足してくれた姿を見て「良かったぁ」と笑顔を浮かべるとレッドが私の顔を見て顔を赤らめる。どうしたのだろう?
その後も、2人は明日の朝の分の野菜スープも全部食べてしまった。
自分が作った料理で、人に美味しいと言ってもらうのがここまで嬉しいなんて、王城のコックが私が美味しそうに食べる姿は見ていて気持ちがいいと言っていたが、このことだったのかとコックの気持ちが少し理解できたような気がした。
次の日、私とフィーナさんは2人を見送り、洗濯物を持って村の井戸がある中心へと向かった。
つづく……
をーん