ルーナとレッド
ー国王生誕祭当日ー
「姫様!美しいです!よくお似合いですよ!」
私、ルーナ・アルメリアは純白のドレスに身を包み式が始まるのを待っていた。
「これなら宰相様もお喜びになられますね!」
「……」
一方、式典の方は筒がなく宰相が、国王の代役を務めていた。
「この国には新しい王が必要だ!民のことを理解した現在の国王様を支えてきた私のようなものが必要である。国王様よりも許しは得ている。私がルーナ様と結ばれ、国王になった暁には、国民がもっと豊かな生活を送れるような国にすることを約束する」
その演説を書いた民達は、「「「おおー!宰相様!万歳!」」」
喜ぶ民衆。
民衆が静かになると、「では、結婚式を始める」
宰相の言葉と同時に、純白のドレスに身を包んだルーナが現れる。
「美しい」、「宰相にぴったりだ」、「王妃様に瓜二つだ」などとルーナの姿を見た民衆は騒ぐ。
ただ、当の本人の目に光はない。
だが、そんなルーナの元に赤髪の少年が現れる。
その少年は、ルーナの手を引いて、自身の胸にルーナを抱く。
ルーナは、突然のことに驚く様子もなく。ただ、無表情で抱かれている。その目に、光はない。しかし
「ルーナ」
その聞き覚えのある声にピクリと反応する。
(優しくて、聞いていると安心感に包まれる声……)
ルーナは顔を上げる。
そこには、もう会えるはずのない愛しい人がいた。
「よかった!無事でよかった!」
「ルーナも無事でよかった。……あれ?ちょっと痩せた?ダメだよ。どんなことがあってもご飯だけは食べなくちゃ」
「ふふふ。またお母さんみたいなこと言ってるわよ」
「だって、ルーナが心配だから」
「わかってるわよ」
私は愛しさのあまりにレッドの頬にキスをする。
レッドは一瞬何があったか分からなかったようだが、キスをされたことを理解すると耳まで真っ赤になる。
「ふふふ♪」
ああ、やっぱり、この人だ。私はこの人の側にずっといたい!
レッドは真っ赤に顔を染めながら、私の行動に言葉で答えれくれる。
「ルーナ。僕はもう君を離さない!どんなことがあっても絶対に一生守り抜く!だから、一緒に帰ろう?」
私は、嬉しさのあまり涙を流しながら、
「うん!うん!私もレッドのそばを一生離れない!」
「ははは。よかった。じゃあ、これからもよろしくね」
(やっと君をこの手に抱きしめることができた!長かった……)
僕は、この幸せを噛み締めるように世界一幸せな涙を流した。
「うん!!うん!」
ルーナも僕の言葉に嬉しそうに泣きながら頷く。
だが、そんな2人の時間を壊す者が現れる。
「そんなこと私が認めるわけがないだろう!その女は一生私の脇で私の偉大さを見せつけるための宝石として、過ごしていれば良いのだ!衛兵!そのガキを捕まえて処刑しろ!」
宰相のアルダは叫ぶ。
「……」
しかし、アルダの命に従う衛兵は存在しない。
なぜなら、レジスタンスが王都の闇ギルドを潰して、人質を解放したから人質を取られていた兵士たちは宰相に従わなくても良くなった。
逆に、アルダを捕らえるために兵士たちは、レジスタンスに、協力してくれた。
「お前の命令に従う兵士は存在しない!人質は全て解放し、闇ギルドも壊滅した!お前は終わりだ!」
ルーナの護衛隊長のアンナが叫ぶ
「馬鹿な!だが、私に手を出せば、私の家が黙っていないぞ!良いのか?忘れるなよ?私の家がこの国の商売の全権を握っていると言うことを!」
アルダの発言は、確かに事実だ。が、それは、過去の話である。
「お前が宰相のアルダか?」
ベスターがいつになく高そうな紳士服と髪をオールバックに纏めて現れる。
「いかにも!わしが宰相のアルダじゃ!お前は何者だ?」
「これは失礼。自己紹介が遅れたり俺はベスター。カネロと言う町で商人をしているものだ」
「ふざけるな!いっかいの商人不在が!わしは、お前のような人間が話しかけて良い存在ではないぞ!平伏すが良い!」
宰相アルダは、ベスターに向かって指を刺し、命令する。
「おーおー。怖いねぇ。けど、お前の家はもう潰れて存在しないぞ?」
ベスターの発言に
「は?何を言っておるのだ?頭がおかしいのか?」
「俺は確かに商人と言ったが、都市国家連合って国で理事もしている。ここまで言えばわかるか?」
ベスターさんのその言葉に、宰相アルダはうなだらるようにその場に倒れ込む。
なぜ、他国の商人協会に都市国家連合が大きな顔ができるかと言うと、各国の商人協会はそもそも都市国家連合が主となって作り、販売販路などを提供している。そのため、各国の商人協会は連合に取引してもらえないと、立ち行かなくなる。
そのため、各国の商人協会に対して、連合国家で理事を務めるものは大きな発言権を持っている。流石に商人協会の会長を辞任させるには証拠が必要になるが、証拠さえ集めれば、連合の長の判断がなくても辞任させることくらいできる。
アルダも馬鹿ではない。
ベスターの正体を聞けば、どんな事かわかる。
連合の理事が動くことは滅多にない。動くとしたら、それはよっぽどの案件となるからだ。
「いやぁ。前から少しずつ証拠を揃えて、いつかは摘発しないといけないと思っていたんだけどな。タイミングよく証拠が揃ってくれてよかったよ。お前の家はやりすぎたな。会長の座を維持するために邪魔になる人物を消したりなど余罪は山のようにある。これで、お前の後ろ盾は無くなったぞ?」
実家という、最大の後ろ盾がなくなり呆然とするが、自分にはまだ人質がいることを思い出す。
宰相アルダは、公衆の面前だということを忘れ、
「だが、こちらには国王という人質がいるぞ!」
と、主張する。
その宰相の発言に、
「国王様が人質に!」「何を考えてるんだ!」「私たちの王様を返して!」
民衆に慕われている王を宰相が人質にしていることを知り、民衆は怒りを露わにする。
「ということは、この結婚自体仕組まれたものじゃ!」
「このあくまー」
そんな民衆の怒りは、今にも城に雪崩れ込みそうなほどだった。
もはや、鎮められるものは1人しかいなかった。
「皆のもの!わしは無事じゃ!こうして助けられた!」
国王ただ1人だけ。
人質になった国王が無事な姿で現れたことに民衆と宰相は驚く。
だが、国王が無事だと知ると民衆は、「「「国王様ぁぁぁ!!」」」と歓喜する。
「さて!皆のもの!宰相アルダ・サイは謀反を起こし、皆の国であるアルメリア王国を自分のものにしようとした!そして、それ以外にも兵士たちの家族を人質に取るなど数々の罪が明るみとなった!よって、死刑とする!それに宰相に加担した2名の大臣達も職を奪い、強制労働ののちに国外追放とする!それ以外の関わったもの達も後で沙汰を下す!覚悟するように!」
国王からの沙汰は下った。
こうして、宰相が起こした謀反は終わりを迎えた。
だが、1人だけ終わっていないものがいた。
「ギャハハハハ!最後は無様だな!豚野郎!」
闇ギルドの頭の「影」である。
「さぁーて!殺しに来てやったぜ!ガキ!お前が死ねばその姫さんはどんな絶望した表情を見せてくれるのかなぁ!なぁ!楽しみだなぁ!」
狂っている!誰もが彼を見たらそう思う。
だが、当の本人であるレッドは、
「あれを倒したら、全てが終わるね」
あっけらかんとして笑う。
「レッド……」
ルーナは一度、レッドが倒されている場面を見ているので不安そうに見つめる。
しかし、レッドは、
「大丈夫だよ。すぐに終わるから」
なんでもないよと言うように平然としている。
「ギャハハハハ!死ねヤァぁぁぁ!」
「影」は、目にも止まらぬ速さでレッドに接近して、剣で切り掛かる。
だが、レッドはルーナを右手に抱き抱えたまま動かない。
すぐそこまで迫った刃を見て、ルーナは目を閉じてしまう。
しかし、時間が経っても何もないことに疑問を思い、目を開けると
「もう終わったよ」
と、レッドは、笑いながらルーナに告げる。
よくわからないが、レッドの笑顔を見ているといつも自然と笑顔になってしまう。
「ふふふ…お疲れ様」
「ルーナ。よく見たら、目の下にクマが出来てる!ちゃんと寝ているの?」
「もう!またお母さんみたいなこと言ってる!」
「ハハハ。本当だね」
「ふふふ」
おわり
しゅーりょーうー
おつかれー